短編2
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 研究の仕事をしている奴と、同窓会で顔を合わせた。

 私がオカルト本の出版関係の仕事をしているのを知ると、奴は言った。

「生物の研究をしているので、霊ってものが本当にあれば面白いと思いますよ。 でも、人間はともかく、ほ乳類、鳥類、は虫類、魚類と、下等な生物を考えていったとき、どこまで霊が宿れますかね。 細菌やウイルスなんか、あっという間に数百万個に増えるので、宿る霊も忙しくて大変ですよ。 私は、生物の中でも寄生虫が専門ですけど、これでも霊が宿るには小さ過ぎるでしょう。」

 こんな物言いをされたが、普段あまりしゃべる機会がないからだろうと思い、雑誌に載せられるような話がないか、誘ってみた。

 

「寄生虫は駆除できることもありますが、駆除できないのも多いんです。 特に、熱帯地方のものは、人間に対してタチの悪いものが多い。 熱帯地方では、植物の葉や茎には卵が付いているし、朝露をよく見ると幼生がうごめいています。

 憑りつかれてしまうと、体の中でどんどん増え、最後にはあふれ出てきて、死に至ります。 体中の穴という穴から、大量の成虫が出てきます。 目玉を押し出して、その奥から出てくるなんてこともありますよ。」

 振った方も悪いが、使えない。 しかも、この場に向かない。

 私は、話を聞き流しながら、気になることがあったので、彼の魂を霊視した。

 実は、オカルトに関わるようになったのは、この能力のおかげだ。

 彼は霊を否定したが、私には彼の霊が見える。

 彼は自覚できないようだが、彼の霊体の中に、小さな幽体が沢山うごめいている。

 凝視して、その正体がわかった。 蟲(むし)だ。

 寄生虫の霊なのか、霊魂に寄生する蟲なのか、わからないが、彼の霊体を食い荒らしながら、どんどん増えているようだ。

 私は、話を適当に切り上げ、彼と別れた。

 専門家である彼自身、駆除できない寄生虫も多い、と言った。 おそらく、彼の霊体に憑りついた蟲も、手に負えないたぐいのものだろう。

 蟲が彼の霊体からあふれ出し、他の人に憑りつこうとするのも時間の問題だ。

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