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短編2
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やろかみず

 江戸時代の話となると、「都市」伝説ではない。

 その頃は、月夜でなければ夜は真っ暗。 闇の中に百鬼夜行の幻想を見聞きすることができた。 また昼間ですら、狐やら狸やらが怪異を引き起こすことがあったのだ。

 さて、そんな江戸の頃、町人たちが堀で釣り糸を垂れたところ、非常によく釣れた。

 しかし、気を良くして帰ろうとすると、堀の中から「置いてけエ、置いてけエ」という恐ろしい声が・・・

 有名な怪談 「置いてけ堀」 だが、 釣った魚を持って帰ろうとすると危なくとも、置いて逃げれば魚を失うだけで、大したことはない。

 では、このような声が聞こえる怪異はすべて大したことがないか、と言えば、そうでもない。 あまり有名ではないが、「やろか水」 という話がある。

 現在のA県がまだO藩であったときの話である。

 そこを流れるK川は、昔から氾濫を繰り返し、流域の住民の命を奪ってきた。

 そのときも、大雨でK川の水かさが増し、今にも水が溢れそうになった。

 すると、どんよりした空の下、吹きすさぶ風に乗って不気味な声が聞こえてきた。

「やろかア、やろかア、水やろかア・・・」

 その声は、止むことなく、だんだん強くなり、村人の頭に響くまでになった。

「やろかア、やろかア、水やろかア・・・」

ついに耐えかねた村人が、堤防に駆け上り、叫んだ。

「来るなら来てみろ!」

 すると、足元から堤防が崩れ、水が一気に流れ出た。

 水が引いた時には、村は跡形も無かったという。

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 読んでいただいて、ありがとうございます。
 私は、昔わぢゅうと呼ばれたところに住んでいたことがあり、堤防に積みあげた土のう、溢水なんてのを見知っていますので、「やろか水」 には肌で感じる怖さがあります。
 ところで、現在K川には大堰があります。 その施設を見学した際、係の人がおっしゃっていました。
「堰なので、上流から流れてきたものがよく引っかかります。 川で溺れた人は、大抵・・・」

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すぐ様には、いつも『都市伝説』の方で楽しませていただいておりました。
とても興味深いお話しをありがとうございます。

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