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一人暮らしというのに昔から憧れていた。
周りからグチグチ言われない生活が夢だったのだ。
「大学生だからバイトとかして少し仕事の経験をしてみたい」
なんて嘘をついてやっと一人暮らしができるようになった。
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しかし俺は「部屋探し」を甘く見てた。
中々見つからないもので、親にアドバイスを頼んだが
「一人暮らしをするのはお前なんだから自分が好んだ部屋にしなさい」
なんて言われる始末。
気に入った部屋ならいくらでもあったさ。
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問題は家賃。
家賃代は父さんが払うというが、無理はさせたくない。
そう困っていたとき、完璧な部屋があった。
リビングは広い、部屋が二つあり、トイレとシャワーは別。
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「これにしよう!」
家賃があまりに安くて怪しいが、何かオカシイならすぐ文句を言えばいい。
移動したてで、まだ生活してない場合はタダで直してくれる場合があるらしい。
どうせオカシイのは水圧とかそんぐらいだろう。
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ついに引っ越し、荷物を整理した。
部屋には何の異常もなかった。親にもちゃんと連絡したし、
最高。この一言に尽きる。
もう今日はこの整理で疲れた。寝よう...
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.......
......ピ..ピ......
........ピピ............
.....ピピピ!..................ん?
もう少しで寝れそうだったというのに。
電話のようだ。
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親から?なんだ一体....
「その部屋から出るな!
お前が引っ越したところは遠いから急いでも最低一日は掛かる!
それとその部屋で寝るんじゃないぞ!もし寝てしまって夢を見た場合、
その夢の中で決して声を出すんじゃないぞ!いいか?!」
ガチャン....
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何だ?急に不安になる。
ドッキリかなんかか?
いや、それにしてはかなり真剣に話していた。
でも大した事じゃないと自分に言い聞かせ電気をつけた
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なんだこれ....
眠かったから気づかなかった。
窓の外が暗すぎる。夜の暗さではない。
完全な闇。窓を開けると闇が入ってきそうだ。
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時計も動いていない..どうなってんだ...
これじゃいつまで待てばいいかも分からない。
携帯もいつの間にか圏外。
完全に外の世界とこの部屋の世界は切断された。
父さんは部屋から出るなと言ったが、出ようにも出れない。
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.............................
.............................
何時間立ったんだろう。
時間の感覚がつかめない。瞼も重くなってきた。
クソ!寝ちゃいけないと知っているのに!
知っているのに....!
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.............................ん?
どこだここ........!!
部屋か?俺の部屋だ...
でもこんな散らかした覚えはないぞ....
そう思いながら後ろをみると
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「おはようおはようおはようおはようおはようおはようおはようおはようおはようおはようおはようおはようおはようおはようおはようおはようおはよう」
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こいつが何者なのか。どんな理由でこの部屋にいるのか。
考える暇はなかった。
声は出ず、
一目散に部屋から転げるように飛び出した。
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外まで追いかけては来なかった。
なんだあれは!怪物じゃあないか!
思い出せ!俺は何をしてたんだ……?
そして気づいた。これは夢の中。
あんな化け物が出るなんて夢だ。夢だ!
あのまま眠くて寝てしまったのか……
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父さんが言ってた「寝るな」とはそういう事か。
色々思い出した。そしてまず思い出したことが、
声を出してはいけない。さっきので出さなかったのが幸い。
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しかしもう確信に変わった。やはりあの部屋はオカシイ。
そりゃそうだ。あんなにいい部屋があんな安い家賃で誰も住んでないんだからな。
でも今は夢の中。外にだって何があるか....
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そう思いながらポケットに手を入れた。
ん?紙が入ってるぞ。開いてみると
「本当に危険なら”いちたひ”と叫びなさい。」
と書かれていた。
声を出しちゃいけないというのに叫ばなきゃいけないのか?
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....罠だ
これはこの部屋の呪い。罠だ。
言ってはいけない。この呪いの思い通りになるか!
だがこれからどうすれば...
夢と分かっても起きる術はない。
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とりあえず家に戻ろう。正直気が引けるが、
呪いのあるあの部屋で何かをしなきゃいけないと思った。
行くあてもない。
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アパートに着いた。
しかしどうやって上に上がろうか。
あんな怪物がでたこのアパートで無事に何とかなるわけない
エレベーターなんて論外だ。何か入ってきたら溜まったもんじゃない。
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階段を使うか。
そう思って階段を上り始めたが、すぐにやめた。
理由は単純。
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「ゆびゆびゆびうまゆびうま」
と意味の分からないことをいう怪物がいたからだ。
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結局エレベーターか。
仕方ない。エレベーターを使うしかない。
寝てしまった自分が悪いのだ。そう思いながら足を運ぶ。
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..........
やっぱり乗るべきではなかった。
閉めるボタンを押していないのに、勝手に閉まって、
開くボタンはきかない。やってしまった。
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数字が書かれたボタンは無くなっており
二つしかなかった。
「下」
「上」
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俺の部屋は上にある。
もう何もできない俺はエレベーターに書かれてるボタンを押す他ない。
「上」を押した。
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チーンと音がする。
着いたようだ。
と扉が開いた瞬間、
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「どんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじどんなあじ」
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その怪物はまた現れ、変な事を何回も言い返す。
そしてもう終わったと絶望し、目を閉じた。
見たくない。ここまでかと思った
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しかし悪夢は続く。
奴は俺の瞼を引きちぎった。
痛すぎて声が出そうになる。奴はそのちぎった瞼を食べていた。
痛すぎる。死んでしまいそうだ。
そう思ったとき、紙に書かれた事を思い出したのだ。
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「本当に危険なら”いちたひ”と叫びなさい。」
もう罠でもいい。開放してくれ。この痛みから!
「いちたひ!!!!!」
俺は叫んだ。
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気づいたら部屋にいた。
「開放されたのか..?」
全部あの紙のおかげだ。
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でもおかしいじゃないか。外はまだ暗い。
開放されたのなら何故まだ....
そう思いながら紙の事を思い出した。
そしてやってしまったと心底思った。やはり罠。
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いちたひ
一 タ ヒ
死
こんな単純な言葉遊びにきづけないなんて。
それに何より、声を出してしまったのだ。
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窓の隙間から暗闇が入ってくる。
ルールを守れなかったから
のまれて死ぬのかな。
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もうどうでもいいや。
外に出ようと玄関に向かった。
もう疲れた。父さんごめんね。守れなかったよ。
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扉を開けた。
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「どんなあじ」
作者どどめいろ
みなさん。部屋選びは気を付けましょうね。