music:2
sound:24
参ったなー、が一番最初の感情であった。
白昼堂々、ゴミの不法投棄やらを行なった。
そのゴミは部屋に置いておくには大きすぎるし、簡単に捨てる訳にいかなかった。
そんな代物なら、夜中に捨てるべきではないかと目の前の貴方は言うかもしれないが、こんな寒い時分に夜中に作業しろと言う方が地獄であった。
また、そのゴミは、車のタイヤの様に、はたまた電子レンジの様に外に放っぽり出しておく訳にもいかない代物で、やはりシャベルの様なもので穴を開け、其処に投棄する他術がない様にも思えた。
私が住んでいる処は、誰もが認める田舎町といったところで、白昼に粗大ゴミを捨てにいったところで誰に咎められるでもなかった。
また、人が寂れた土地では自然と不法投棄も多かった。
私は、そのゴミが出来た時、どこに捨てるべきなのか悩んだ。
よもや、自分の家の近くになど置いておきたくはないし、人目につかない場所に捨てるべきだろうと悩んだ。
その上、穴を掘らなければならないため、なるべく穴が掘りやすい土地でなければと考えた。
ドラマなどで、夜中に山の土を掘って死体を埋めるシーンがあるが、私はあんなのはフィクションであると思っている。
山の土は、得てして硬い。
人一人埋める穴を掘るとすると、大変長い時間を費やさねばなるまいし、木々に日光を遮られているため、1日で土が乾くわけがない。
ましてや、人を殺した後に穴を掘るとなると、夏場であれば死体が腐ってしまうだろう。
(だが、これはあくまで協力者なしでのはなしである。)
つまり、素人目から見ても、どこを掘ったのかすぐにバレてしまうのである。
もちろん、私が捨てたものは人間の死体などではないのだが、それでも、どこに埋めたのかバレてしまっては捕まる可能性だってある。
そう考えると山に穴を掘って捨てるのは得策ではないように思えた。
では、どこがいいのか、再び私は考えた。
答えは、すぐ近くにあった。
海だ。
海は、夏場しか人が集まらず、砂地であるため、穴も掘りやすい。
深く掘れないという難点があるが、動物に穴を掘り返される心配もないだろう。
私は、すぐにゴミを車の助手席に入れ、荷台にシャベルを乗せ、海に向かって車を走らせた。
私は、改めてゴミに目をやった。
本当に申し訳ないと思った。
よもや、こんな事になるなど、誰が想定出来ただろうか。
しかし、その事実を知るのは私のみなのである。
これがゴミと化した瞬間は、何が起こったのか自分でもよく分からなかった。
触ってみるとぐにゃんぐにゃんと死んだタコの様で、私と同じ様に温かかった。
けれど、一晩すると、それはカチカチに固まっており、どんなに触っても動くことはなかった。
まるで、元々その硬さであったかの様に動かなかった。
私は、穴を掘る。
ひたすら掘る。
インターネットでは、臭いのキツいゴミは1メートル以上掘ってから埋めなければ臭いが地上に出てきてしまうなどと書いてあったが、非力な私は60センチ程度で断念してしまった。
「また来るよ。」
意味のない言葉をゴミにかけ、私は埋めた。
自分の過ちと不安を掻き消す様に。
ゴミは、うんともすんとも言わなかった。
私は、ドラマで見る様に土を踏んで固めることなど出来なかった。
軽くシャベルで砂地を慣らすと、近くの岩場に腰かけた。
私の住んでいる処の海は、砂地の色が黄色くて、海は浅瀬がグリーンで深いところは紺色がかって美しい。
そして、今は寒いから人は少ないが、夏には多くの人が来る。
このゴミを投棄した場所は、もちろん人が来るような浜辺ではないが、多くの人に愛されているこの海辺を気に入ってくれると良いと思っている。
私は、シャベルを持ち、重い腰を上げると、その場を後にした。
寒いが、心地良い波の音だけが、私の背中に響いていた。
作者適当人間―駄文作家
実話です。
後、江戸川乱歩先生の書き方を意識しています。
悪しからず。