真っ暗で何も見えない…。
目の前にあるはずの自分の手すらも見えない程の闇…。
ここはどこだろう?
?!!
誰かがいる?
暗闇のせいで姿形は見えないが間違いなく僕の前に感じる気配。
その時、僕と対峙する何者かの目が怪しく光った…。
「叔父さん?!」
そう叫び目を開けるとそこは見慣れた自分の部屋。
「なんや…夢か…。」
「でも………。ん〜!叔父さんめっちゃかっこ良かったぁ〜!!」
僕は大の字に寝転がると目を閉じ、小屋での出来事を思い出してみた。
あの小屋でA、Bが意識を取り戻す間、少し叔父さんと話す時間があったので、僕は気になっていた事を聞いてみた。
僕 「今回、AとBは呪われたのに、僕が呪われなかったんはやっぱり叔父さんのおかげなん?式神…とか?」
叔父さん 「式神?(笑)いいねぇ。そんな事が出来たら格好いいね(笑)でも残念ながら僕にはそんな事は出来ないよ。」
僕 「ほなたまたま僕は呪われんかっただけ?」
叔父さん 「護りかな?(笑)」
僕 「護り?」
叔父さん 「そ!僕には式神は飛ばせないけど代わりに、念?て言うのかな?そう言うものは飛ばせる。」
僕 「ほなその叔父さんの念が僕を護ってくれたん?」
叔父さん 「そうだね(笑)因みに僕が遠くの人を護る為に使える力を100とするだろ?その内の50を妹に残りを僕君と僕君のお父さんに使ってるんだよ?(笑)」
母が50で残りって事は、僕25??少ないやん!
叔父さん 「今、自分の母親より少ない!て思っただろ?(笑)」
?!Σ(゜Д゜)バレた!
叔父さん 「でもね、僕君。今回A君、B君を苦しめたあんな化け物ですら君には手出し出来なかったんだよ?これでも不満かな?(笑)」
確かに!二人を苦しめたモノも凄まじい力を持ってるって叔父さん言ってた!でも僕には手出し出来なかった!
そう考えると僕はまるで自分が最強にでもなったかの様な気分になりはしゃいで見せた。
今思えば叔父さんの抱える闇の深さも知らずに…。
無邪気に…。愚かに…。
separator
A、Bの件があってから僕は叔父さんの大ファンになっていた。
母の故郷から戻ると、それこそ毎日両親に叔父さんの話をしていた。
母はA、Bが助かった事、僕が無事に帰宅した事には喜びを見せてくれたが、叔父さんの話になると素っ気なく相槌を打つだけだった。
やっぱりまだ叔父さんを嫌っているのだろう…。
あれから数ヵ月が経ち、あの出来事が嘘の様に感じられる程、穏やかな日々が流れていた。
母「明日も頑張って綺麗にしなくちゃ!」
母は最近になって町内のボランティア活動に参加する様になった。
近隣の山に登り、投棄されたゴミや空き缶を拾って回るのだそうだ。
母 「明日、朝早いから先にお風呂に入って横になるわね」
そう言って浴室へ向かう母。
暫くすると…。
「キャ―!!!!」
突如、悲鳴が鳴り響いた。
僕 「何や!どうしたん?」
僕は悲鳴が聞こえた浴室へ向かい、ドアを開けた。
そこには呆然と立ち尽くす母親の姿。
父 「なんやなんや!大丈夫か?」
少し遅れて到着した父が母に尋ねた。
母 「これ…これ…」
母は足元を指差しながらそう言った。
僕と父はゆっくりと視線を母の足元に落とす。
母 「5…」
僕、父 「は?」
母 「55…。55キロって何よ!! この体重計壊れてるわよ!!」
父 「…。」
僕 「知るか!毎日あれだけ暴飲暴食してたら太りもするわ!」
自分の体重を見て悲鳴を上げたかと思えば今度は体重計に八つ当たり…。そしてそのままふて寝ですか…。この人は…。
次の日朝。
母 「行ってきま〜す!」
昨晩あれだけ騒いだにも関わらず、今朝は茶碗三杯を召し上がり、意気揚々とお出掛けになられた母。
父 「今晩も体重計見てまた騒ぎそうやな?(笑)
僕 「やろうな…。騒がしくなる前にゆっくり休んどこ」
気が付いたらリビングのソファーで寝ていた僕。
時計を見ると午後2時。
「ぼちぼち帰ってくる頃かな?」
そう思っていると、ガチャと玄関の開く音。
それに続いて「ただいま〜」と母の声。
「ただいま〜」と母の声………は、したが一向に部屋に入って来ない…?
父も気になった様で、玄関へ様子を見に行った。
父 「おい!どうした?!大丈夫か?!」
父はすぐに僕を呼びつけ、救急車を呼ぶよう指示をした。
救急車を手配しつつ母の様子を見ていたが、父の呼び掛けにも反応する事なく、ただ横たわる母…。
暫くして救急車が到着すると父と僕は慌てて救急車に同乗した。
救急車が病院に到着すると、母はそのまま検査の為、連れて行かれた。
母の検査を待つ間、二人とも気が気ではなかったが、少しでも気持ちを落ち着かせようと自販機でコ―ヒ―を買う為、財布を出そうとして気付いた。
財布がない…。
慌てて救急車に乗り込んだ為、財布も携帯電話も忘れて来たみたいだ。
僕 「オトン、財布忘れて来たわ…金貸して…」
僕に言われてズボンのポケットに手を入れる父。
その手が右ポケットに入り、左ポケットに入り…。
オトン…。あんたもか……。
どうやら二人共、手ぶらで出て来たみたいだ…。
おまけにどちらも家の鍵を閉めた覚えがない…。
そうこうしている間に母が検査を終え、担架に乗せられ運ばれて来た。
父 「先生!妻は、妻は大丈夫でしょうか?!」
医師 「とりあえず病室の方でご説明させて頂きます。」
病室に着き、父と僕に椅子に座る様に促すと医師は話し出した。
医師 「結論から言わせて頂きますと、奥様は何の病にも侵されておりません。」
父 「ほ、ほな問題無いって事ですか?」
医師 「病には侵されてないのですが…。血が少ないと言うか…。」
僕 「血が少ないて何ですか?はっきり言うて下さい!」
医師が言うには、人間が生きていく上で必要な血液量は決まっているらしく、今の母は平均値より10%程、低いらしい。
父 「そやけど病気は見つからんかったんでしょ?そやのに血が少ないて何です?!」
医師 「奥様は無理なダイエットをなされてたりしませんか?」
僕 「ダイエット??ないない!寧ろその逆ですよ!昨晩も55キロ〜!言うて騒いでましたもん!」
医師 「55キロ?今、55キロと言われました?それはおかしい…。先程、検査にあたって正確な数値を出す為、体重を計らせて頂きましたが、その時は49キロでしたが?」
父 「49キロ?!いやいや、昨晩55キロあったのは間違い無いですよ?それで今日49キロて半日足らずで6キロも落ちてる事になりますやん!先生!妻はほんまに大丈夫なんですか?!」
医師 「と、とりあえず輸血と栄養剤で様子を見て再検査と言う事で。」
医師はそれだけ言うと病室を後にした。
「お父さん…。僕君…。」
意識の戻った母がベッドから僕達を見つめていた。
母は僕達を見つめながらゆっくりと右手を上げ、ピースサインを作るとこう言った。
母 「イェ―ィ…。ダイエット成功…。」
話し聞いてたんかい!てかダイエット何かしてへんやろ………。
父 「アホ!」
そう言った父の目からは涙が流れていた。
母はその後、再び眠りにつき、父は母に付き添うと言うので、入院準備も兼ねて僕は一度家へ戻る事にした。
ガチャ…。
やっぱり鍵は閉まってなかった…。
家へ戻ると少し落ち着きを取り戻し、ソファーに置きっぱなしの携帯を手に取り画面を確認する。
?!Σ(゜Д゜)
着信履歴30件?
誰からの着信か確認しようと履歴を見ると、「非通知」と表示されていないにも関わらず、相手の番号が表示されていない…。
それが30件…。
気味悪いなぁ…。と思ったその時。
部屋中に電話の音が鳴り響いた!
携帯の履歴の件もあったので、不意に鳴り響いた電話の音に、恐らく僕の心臓は一度口から飛び出したと思う。
そんな僕の心境を無視し、鳴り続ける電話に近寄り、恐る恐る受話器を耳にあてる…。
「何してた!何故電話に出ない!時間が無いんだよ!!!」
聞き覚えのある声…。
「おい!聞いているのか!」
間違いない!叔父さんの声だ!
だが、受話器から聞こえる叔父さんであろう声は、明るく、優しさの溢れたあの僕が知る声とは程遠く、正に鬼気迫る迫力があった。
僕はその迫力に圧倒され、声にならない声で返事をした。
僕 「は、母親が倒れて…病院に…」
叔父さん 「違う!病なんかじゃないんだよ!すぐに!すぐに僕の所へ連れて来てくれ!」
僕は言葉が出ない…。
叔父さん 「………。フゥ〜。すまない…。僕君も突然母親が倒れて気が動転してるのに、こんなに捲し立てられたら困るよね…。すまない。」
いつもの優しい叔父さんの声だ。
叔父さん 「僕君にも分かる様に説明するよ。ただし、時間が無いのは事実だから要点だけを。」
叔父さんの話し。
・今回の母の体調不良は病では無く障りが原因。
・障りを成しているモノの正体が叔父さんにすら分からない。
・このままでは母は間違いなく死ぬ。
ここまで説明を受けても僕には今一つピンと来なかった。
叔父さんが連絡してくる位だから少なからずとも怪異と呼ばれる物が絡んでいる事は理解出来る。
でもいきなり母が死ぬと言われても…。
だが、次の叔父さんの言葉で、母の死が僕の中でもリアルな物となった。
叔父さん 「いいかい僕君。以前、護りについて話したのを覚えているね?妹に50、僕君とお父さんに25ずつ。君は母親より少ないと言っていたけど、それでもA君、B君を苦しめた化け物は君に手出しは出来なかった。」
ん?待てよ?25しかなくても凄まじい力を持った化け物を寄せ付けない?
?!て事は、母は?
叔父さん 「理解出来たかな?妹には僕君の倍の護りが付いているんだよ!そんな妹に近付き、障りを成すモノ…。」
僕 「叔父さん!どうしたらええ?すぐ動く!指示を下さい!」
作者かい
い、言うときますけど自己満足ですからね!