―――こんな夢をみた。
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一、
目の前で、自宅に事故物件を示すマークが点り、玄関がノックされる。
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二、
仕留めたばかりの猿がはめていたその婚約指輪を見た瞬間、彼は膝から崩れ落ちた。
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三、
ざぶざぶ音を立てて、水面から突き出たおびただしい墓標のあいだを彷徨いながら、あの子がじぶんの家を捜して泣いている。
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四、
「誰かいるのよ」と不安げに天井を見やっていたお祖母さんが亡くなり、屋根裏をさらうと埃まみれの骨壺が幾つも見つかる。
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五、
玄関先に集う見知らぬ人々に「おめでとう、本当におめでとう」と祝福された翌日、家族が次々死に始めた。
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六、
けさ、十年前なくした右腕から手紙が届く。
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七、
アラームが鳴り響いて、床下から厭な臭いを放つ蟹がぞろぞろ湧いてくる。
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八、
狼はわたしだったのねと、血だらけの床に伏して震える赤頭巾を、白衣の女性はマジックミラーのむこうからじっと見ている。
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九、
集会場にある赤い柱の正体に気づいたとき、村人がだれも笑わない理由を悟った。
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十、
泣きそうな表情で女性は「お願い、お願い、生まれてこないで」とはち切れそうなお腹をさすり続ける。
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【了】
作者Glue
※テキストモード推奨
はーい!みなさまこんにちはー。
吉田悠軌「一行怪談」がおもしろくて、
一行怪談にチャレンジしちゃいました。
ルールは、
・題名は入らない
・文章に句点は一つ
・詩ではなく物語である
・物語の中でも怪談に近い
・以上を踏まえた、一続きの文章である
だそうです。
それでは、
――こんな噺を。
(綿貫さま、ごめんなさーい。いっぺん言ってみたかったんですー)