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中編6
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僕には4歳年上の兄がいる。

弟の僕が言うのも何だが、兄は物凄く美形で、おまけに身長は183cm。

これで女性にモテない訳がない。

事実、兄は何処へ行っても初対面の女性から声をかけられる。

それを僕はいつも羨ましく思っていた。

だが、そんな兄には、致命的な欠点がある。

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僕が小学2年生、兄が6年生の頃。

母親に買い物を頼まれた僕達は、近くのス―パーに買い物に出掛けた。

途中で、僕の友人達に出くわしたので暫し雑談。

暫くすると兄が僕の腕にしがみついて来た。

雑談はその辺にしろ。と催促されているのかと思ったが、どうやら違うらしい。

兄は小刻みに震えている。

気にはなったが、僕は友人達との雑談に意識を戻した。

すると益々、兄の震えが酷くなって来た。

耐えきれなくなった僕は兄に問いかけた。

僕「さっきから何震えてんの?

具合悪いん?」

すると兄は答えた。

兄「あれ…。あれ…。」

兄が指差した方を見ると、女性が犬を連れこっちへ歩いて来ていた。

僕「あれ?女の人が犬の散歩させてるだけやん?」

兄は答えない。

震えは止まらず、顔は青ざめている。

そして女性との距離が3メ―トル程になった頃。

兄「あ"〜!!!」

女性と反対方向へ走り出す兄。

目の前で起こっている事態が全く飲み込めず、暫し呆然としていたが、兄は足を止める素振りを見せないので、仕方無しに兄を追いかける僕。

目的のス―パーまで走り抜き、少し落ち着いた兄に僕は聞く。

僕「さっきの何?

何かびっくりする事あった?」

兄「犬…。犬!」

僕「は?犬?」

兄「あの犬、僕を噛もうとしてた!」

僕「あの犬が噛む?

意味わからんよ。」

兄「向こうから歩いて来た時、あの犬と目が合ってん!ほな何か、噛まれる!て思って…。

めっちゃ怖かってん。」

??は??

噛む?

あの犬が?

あの愛くるしい目をしたチワワが?

僕はこの時、兄が、犬が苦手なのかな?と思っていたが、そうでは無かった。

兄はとにかく小心者で、滑り台を滑らせたら、両手両足を器用に使って滑らない様にし、5分程かけて降りてくる。

僕はそれを見ていて、それ面白いのか?とよく思っていた。

それは中学、高校になっても治らず、進行方向に不良っぽい輩を見つけたら、わざわざ遠回りしてまで避け様とする。

明らかに自分よりも年下の子達であるにも関わらず。

家を出る時、ゴキブリを見掛けたら、怖いからと1日家に引きこもる。

僕はそんな兄に対して嫌気がさしていた。

友人達にも兄の事でからかわれ、兄と顔を合わす事さえ嫌になっていた。

僕が中学に上がる頃には、殆ど話す事も無くなっていた。

とは言っても、僕が一方的に避けてただけだけど。

そんな僕が高校1年生の頃。

兄は遠方の友人に会う為、1日家を空ける事になった。

両親も親戚の家に用事があり、今日は戻らないとの事。

僕は一人でのんびり出来ると喜んでいた。

リビングのソファーに横になり、テレビを見ていると携帯電話が鳴り響く。

電話に出てみると、友人Aからで、今から肝試しに行くので、僕にも参加しろとの事。

僕はその手の話に興味は無かったので、断ろうとしたが、Aは一度言い出すと何があっても折れないヤツなので、僕は渋々、参加する事にした。

肝試しの参加者は、僕、友人A、B、C子、D子。

C子は僕の彼女だ。

5人集まり、目的の廃墟を探索する。

気持ちは悪いが、特に何も起こらず。

探索中にC子が、肝試し終了後、僕の家に来ると言ったので、僕の頭はそっちでいっぱいだった。

今日は家に誰もいない。

と、言う事は…。

僕は一刻も早く、面白くもない肝試しを終わらせたかったので、Aに悪態をつきながら、廃墟内を早足で周りきった。

あまりにも何も起こらないので、Aも肩透かしをくらい、僕の予定通り、早々にお開きとなった。

僕はC子を連れ、まだ遊び足りなさそうなA達に別れを告げ、足早に帰宅した。

僕の部屋で二人で他愛もない話をし、何となくそういう雰囲気になってきた。

よし!

僕は心の中で両手を掲げ叫んでいた。

僕の腕が、C子の肩に周り見つめ合う。

ゆっくりとC子が目を閉じる。

僕はC子の唇に自分の唇を重ね様と顔を近付ける。

……。

バァ―ン!!

?!

一階で大きな音がした。

キャッ!とC子も声を洩らす。

僕は何が起こったのかと、一階を見に行くため立ち上がった。

ダダダダダダダダダ!

階段を掛け上がる音…。

僕は言い知れぬ恐怖にかられ、その場で固まった。

C子は扉を見つめたまま震えている。

ダダダダダダダ!!

バァ―ン!!!

僕の部屋の扉が乱暴に開け放たれた。

そこには、鬼の形相の兄。

状況が飲み込めず、言葉が出ない僕。

そんな僕には目もくれず、兄はゆっくりと部屋に入り、C子を見て言う。

兄「お前…誰や?

何でお前みたいなモンが此処におるんじゃコラぁ!

誰の弟に手だしとんねん!」

僕は、突然現れC子に対して暴言を吐く兄を、ただ黙って見ていた。

C子はいきなりの事で状況が理解出来ていないが、自分に浴びせられている罵倒のせいで涙目になっている…。

兄「おい!聞いとんかい!コラ!

誰の許可得て弟に手ぇだしとんやて言うとんじゃ!」

兄は更に罵倒を続ける。

兄「選べや。

今すぐ出て行くか……俺に…」

バァ―ン!!!

兄がそこまで言うと、突然、部屋の扉が勢い良く閉まった。

兄は閉まった扉を振り返り言う。

兄「ボケが…。

次は無い思とけよ。」

目の前で起こった理解出来ない現象に唖然とする僕とC子。

そんな二人を兄はじっと見つめていたが、C子の方に近付くと

兄「初めまして。

カイがお世話になってます。

カイの兄です。」

兄はC子に挨拶をし、頭を下げた。

さっきまで散々、罵倒されていたC子は、兄の豹変ぶりに少し怯えていた。

この頃になり、ようやく我に反った僕は、C子に対して失礼な態度をとった兄を責めた。

僕「いきなり入って来て何やねん!

人の彼女にボロクソ言いやがって!

てか、何でここにおんねん!」

僕が兄を責めると、兄は少し困った顔をした。

兄「ごめんごめん…。

カイの彼女さんに言うたんちゃうねん…。」

僕「何がちゃうねん!

どう考えてもC子に言うとったやろが!」

兄「ちゃうて。

C子ちゃん?の横におったヤツに言うとったんや。」

C子の横??

兄が言っている事の意味が理解出来ない僕達。

そんな僕達に兄が説明した。

兄は遠方の友人宅に到着し、久しぶりの再開に話に花を咲かせていたそうだ。

だが、不意に僕の事が心配になったらしい。

どういう事か?と尋ねたら、直感だと兄は言っていた。

時間が経つにつれ、その心配が大きくなり、友人との会話に集中出来なくなって来た。

そして、いよいよ我慢が出来なくなり、友人に頭を下げ、慌てて帰宅したのだそうだ。

兄「で、カイの部屋を開けたら案の定、訳の分からん女がおって…。」

僕「また人の彼女の悪口か!」

兄「そやし、ちゃうんやって…。

C子ちゃんの横に、顔が潰れた女がおってん…。

ソイツがカイを見て、物凄い気持ち悪い笑顔で笑っててん。」

女?

顔が潰れてる?

全く意味が分からない。

兄「今日、どっか行ったやろ?

心霊スポットとか?」

僕「何でしってんの??」

兄「人に言うたら気持ち悪がられるし言うてへんねんけど、俺な、霊感?ぽいのがあって、そういうのわかんねん。」

僕「は?霊感?兄が?

ほなC子の横にいたヤツは幽霊で、ソイツを兄が追い払ったて事?」

兄「別に信用せんでもええよ?

けど、それが事実やな。」

僕は兄が言った事が信用出来なかった。

勿論、霊感があるだの、幽霊を追い払っただの、それも信用出来なかったが、僕が引っかかるのはそこでは無かった。

もし仮に、幽霊がいたとしよう。

だが、その幽霊を兄が?

あの超が付くほど小心者の兄が追い払えるか?

僕はそこが一番引っかかった。

僕「いや、幽霊か何か知らんけど、兄めっちゃビビりやん?

幽霊何か追い払えると思えへんねんけど?」

兄「ビビりはビビりやけど、不思議と幽霊は怖ないねん。

さっきの女も、中々のグロテスクぶりやったけど、全然大丈夫やったし。

何でかはよう分からん」

そう言って兄は微笑んだ。

兄「C子ちゃん。

勘違いさしてごめんな。

これからもカイを宜しくお願いします。

カイ?ほな俺、また友人の所に戻るし、戸締まりはきっちりな?」

そういうと兄は部屋を後にした。

兄の話し全てを信用した訳じゃないが、もし本当なら、自分のお兄ちゃんめっちゃカッコいいやん!と僕はテンションを上げた。

兄「あ"〜!!

カイ〜!

ゴキブリ出た〜!あかん動かれへん!助けて〜!」

コイツ……。

やっぱり嫌いや。

Concrete
コメント怖い
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マコさん様。

シリーズ化…。
シリーズの最中…。
胃、胃が痛む…(T-T)

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むぅ様。

新シリーズ?!Σ(゜Д゜)
し、シリーズと言う言葉を聞くと胃が…。

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ゆかちん様。

コメントありがとうございますm(__)m
お兄さん、いい味出てました?笑

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おもれー!

これはシリーズ化に決定ですな!まんな、待ってるよー!って、確かまだ シリーズ化された話の続きがあった様な…。ニヤリ😏

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はと様。

コメントありがとうございます!
まさかまさかのシリーズ化ですか?!Σ(゜Д゜)

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かいさま

とっても面白かったです。お兄さんのキャラ好きかも(笑)シリーズ化したら嬉しいです。

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珍味様。

す、すいません!
どうしてもストーリーよりキャラ重視になってしまいます…。

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