1
これは夢なんだと夢の中で気がついた。
だって、もう15年も前に死んだ愛理ちゃんが、僕と手をつないでこんなにも楽しそうに歩いてるんだから。
僕がソーダ味で、愛理ちゃんはリンゴ味。
夢だからさほど暑さは感じないけれど、どうやら設定は夏みたいだ。みるみるアイスが溶けて手がベトベトになってきた。
ねえ、愛理ちゃん。
僕の初恋の人。
2
いつからだったか、僕らは交換日記をしていた。
愛理ちゃんが病気になって入院してからも、愛理ちゃんはつらいはずなのに、毎日僕のために今日あった事や感じた事を日記に綴ってくれた。
「いつか元気になったらまた遊ぼうね」
「大人になったら結婚しようね」
「うちの病気はなおらんみたいやけど、うちの事忘れんといてな」
「ママがもうやめときて言うてるから日記は今日までにするね、今までありがと」
この一週間後に愛理ちゃんは天国にいった。
3
「この15年間、愛理ちゃんの事を1日だって忘れた事はないよ」
夢の中で僕がそういうと、愛理ちゃんは少し乱暴に手を離してあっかんべーをした。
「嘘つくなー」
「嘘じゃないよ」
僕のソーダ味が溶けてべちゃっと地面に落ちた。愛理ちゃんはそれを見て笑う。
「あは、あはは嘘つきー、あははははははははははははははは!!!」
3
暗い天井。
とっくに目は覚めているのに、僕の耳にはまだ愛理ちゃんの笑い声が響いている。
恐怖が押し寄せる。夢が覚めても笑い声が止まらないなんて事があるのだろうか?もしかしてこれも夢?
暗闇に目を細めると、壁という壁に無数の口がついていた。まるでマネキンの口のようだ。その全ての口が笑っている。
この時ばかりは流石に自分の視力の良さを恨んだ。僕は震えながら隣りで眠る彼女の手を握った。
冷たい。
まるで、マネキンみたいだ。
「ねえ」
いつから起きていたのか、彼女が僕の顔を見つめている。
「嘘つき」
そんな彼女の顔は、グニャグニャと波打っていた。
了
作者ロビンⓂ︎
す、少しは怖くかけたかな?…ひ…
三題怪談のお題
「日記帳」
「初恋」
「アイスクリーム」
※ 参加希望の方はこちらまで
http://kowabana.jp/boards/53
参加者及び参加作品
よもつひらさか様 『イチゴアイス』
http://kowabana.jp/stories/28388
ろっこめ様『追憶の君へ』
http://kowabana.jp/stories/28393
ろっこめ様 『秘め事』(二作目)
http://kowabana.jp/stories/28398
流れ人様 『彼女は壊れ、壊れた』
http://kowabana.jp/stories/28399
吉井様 『君の為に』
http://kowabana.jp/stories/28396
月舟様 『彼女の答え』
http://kowabana.jp/stories/28401
ロビンM様『黑ノート』
http://kowabana.jp/stories/28407
フレール様『過去と未来のノスタルジア』
http://kowabana.jp/stories/28410
ロビンM『うそつき』
http://kowabana.jp/stories/28419