短編2
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うそつき

これは夢なんだと夢の中で気がついた。

だって、もう15年も前に死んだ愛理ちゃんが、僕と手をつないでこんなにも楽しそうに歩いてるんだから。

僕がソーダ味で、愛理ちゃんはリンゴ味。

夢だからさほど暑さは感じないけれど、どうやら設定は夏みたいだ。みるみるアイスが溶けて手がベトベトになってきた。

ねえ、愛理ちゃん。

僕の初恋の人。

いつからだったか、僕らは交換日記をしていた。

愛理ちゃんが病気になって入院してからも、愛理ちゃんはつらいはずなのに、毎日僕のために今日あった事や感じた事を日記に綴ってくれた。

「いつか元気になったらまた遊ぼうね」

「大人になったら結婚しようね」

「うちの病気はなおらんみたいやけど、うちの事忘れんといてな」

「ママがもうやめときて言うてるから日記は今日までにするね、今までありがと」

この一週間後に愛理ちゃんは天国にいった。

「この15年間、愛理ちゃんの事を1日だって忘れた事はないよ」

夢の中で僕がそういうと、愛理ちゃんは少し乱暴に手を離してあっかんべーをした。

「嘘つくなー」

「嘘じゃないよ」

僕のソーダ味が溶けてべちゃっと地面に落ちた。愛理ちゃんはそれを見て笑う。

「あは、あはは嘘つきー、あははははははははははははははは!!!」

暗い天井。

とっくに目は覚めているのに、僕の耳にはまだ愛理ちゃんの笑い声が響いている。

恐怖が押し寄せる。夢が覚めても笑い声が止まらないなんて事があるのだろうか?もしかしてこれも夢?

暗闇に目を細めると、壁という壁に無数の口がついていた。まるでマネキンの口のようだ。その全ての口が笑っている。

この時ばかりは流石に自分の視力の良さを恨んだ。僕は震えながら隣りで眠る彼女の手を握った。

冷たい。

まるで、マネキンみたいだ。

「ねえ」

いつから起きていたのか、彼女が僕の顔を見つめている。

「嘘つき」

そんな彼女の顔は、グニャグニャと波打っていた。

Concrete
コメント怖い
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こえーよ、こわ〜いよー!

最初にお題をクリアーして、後はロビンさんのやりたい放題…おっと 褒め言葉ですよ!

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関西弁は素敵でしょう♬
コテコテの関西弁レクチャーはいつでも致しますぜぃ!!!(←

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雪姉さんコメントサンクスです。

お話に関西の風味を散らすと、違う味わいになりますね。自分で書いてて初めて気づきました…ひひ…

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ゆかちん様、最高の褒め言葉をべりーサンクスです。

次は痙攣するほどのお話を書けるように頑張ります♪

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ふふふ、ろっこめ姐さん。お褒めに預かり感謝です。ベリベリサンクスです。

あ、なんかまたストーリーが降臨しそう!三作目いっちゃおーかな?…ひひ…

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最後鳥肌立ちました((((;゜Д゜)))

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