八塚の蟲シリーズ『枕に蜘蛛の巣』

短編2
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八塚の蟲シリーズ『枕に蜘蛛の巣』

 複雑怪奇。奇妙奇天烈。おおよそ遠く、おおよそ近づけず、理解とは対極に座るもの。

 私、田中恵美が、その不可思議な存在との縁を持ってから、1年余り。

 それはふと、気が付いたことだった。

 歯磨きをして、パジャマにも着替えて、明日の用意を確認してメールとラインのチェックを済ませたら、私は電気を消してベッドにもぐりこむ。ふー、とため息を吐きながら目を閉じて、なんだかわからないけど、突如気になった。

「……白いの?」

「どうしたの、えみ」

 暗闇にまだ慣れない目にも、ぼんやりと映る真っ白な影。いつもの着流し姿のままに、それはふわふわと歩いてきて、ぺとんと私のベッドの横に座った。

「そういえば、アナタ、寝てるの? ううん、寝れるの?」

「わかんない」

「えーと、じゃあ、私が寝てる間はどうしているの?」

おやすみって、言った後の時間。それを白いのがどう過ごしているのか、ふと気になった。いままではなぜか気にならず、放置していた。

「えみが、ねたら、ひま」

「暇でしょうね」

「ひと、は、ねる。むし、は……」

 どうしてたっけ。

 真剣な顔で悩み始めた白いのに、今まで本当に何をしていたのか怖くて聞けなくなる。とりあえず、寝るという概念がないことは分かった。

「でも真っ暗ななかだと、遊びもできないしなぁ」

「うん」

「……あっ」

 そうだ、部屋が真っ暗だからこそだ。

「かくれんぼなら出来るかな。真っ暗だし」

「おに、いないよ?」

「……本当だ」

 それじゃあどうしようもない。しばらく考えたけれど、いい案が思いつかなかった。

「じゃあ白いの、一緒に寝よう」

 何かわからないことをされるよりは、そっちの方がましだ。白いのはぴくんと顔をあげて、私とベッドを交互に繰り返し見た後で、

「せまく、なっちゃう」

 至極まっとうなことを、心配してくれた。

「うーん……あ、それじゃあ」

 思いついて部屋の押入れから、布団を引きずり出す。この部屋には来客用の布団がしまってあるので、とりあえずそれを床に敷いた。

「ここで寝ればいいよ。まねっこで、横になっているだけでもいいし」

「わかった」

 布団に入る仕草は私を見て分かっていたのか、真似をしてするりと入った白いのは、ちょっとごろごろと左右に転がり、私の方を向いて横になった。

「ふかふか」

「おお……感触の表現、新しい。じゃなくて、良かったね」

「うん」

 おやすみ、と私が言うと、おやすみ、と声が返る。そこで私は目を閉じて、翌日までぐっすりだった。白いのも布団の中が気に入ったらしく、夜はここにする、と楽し気に言うので、布団の敷き方と畳み方が当面の目標となったのだった。

Concrete
コメント怖い
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コメントありがとうございます。まとめての返信ご容赦ください。

はと様
こんばんは。だんだん白いのも成長しております。ちょっとずつ、お手伝いの幅も増えていくことでしょう。のほほんと過ごしている一人とひとつですが、ちょっと間違えるとあっという間に真っ暗闇。しかしそこでも白いのは、ぼんやり光って、導き手とも、担い手ともなることでしょう。

mami様
いつもありがとうございます。名前に関しては……全然考えていませんでした。つけたほうが良いのやら、つけるのが怖いやら……

むぅ様
ほっこりまったりでお送りいたしました。

マコ様
可愛いのです。
白いのは、可愛いのです。たとえそれが、なんであれ、可愛いは正義なのです。

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😃白いのー!

なんか、可愛く思えて来たー!

続きお願いします!

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ほっこりしますな(๑¯ω¯๑)

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