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市内から少し離れた場所にお化けが出ると有名な墓地がある。
2
一行は噂を頼りにその場所へと向かう事にした。
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ある怪談がモチーフになったと言われる石像が目印ではあるが、一行を乗せた車は険しい山道に迷ってしまう。
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その時、弾かれたように後部席に座る一人の女性が「来るな!来るな!」と喚きながら暴れ始めた。
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動揺する中、運転手が冷静に車を路肩に寄せて、件の彼女を車外へ連れ出し落ち着かせる。
6
まるでもう死んでいるのではないかと誰しもが疑うくらい彼女の顔は青白く変色し、コポコポと薄く開いた口元から唾泡を垂れ流していた。
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弱々しい指で荷物が入った車のトランクを指さす彼女。見ると、どこからともなく湧き出してきた分厚い濃霧が車の周りに渦巻き始めた。
8
開けると中から紙に包まれた乳児らしき遺体が二体出てきた。どちらも半分ミイラ化しており、紐で縛られ、上からお札が貼りつけられていた。これには全員が腰を抜かしてしまい、とてもじゃないがもう肝試しどころではなくなってしまった。
そう、例の石像とは不幸な死を遂げた幼子たちを祀る慰霊碑だった。
9
話し合った結果、市内の病院へ彼女を運んでから、この身元不明の遺体らしきモノを寺へ供養しに行くという流れになった。
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だが一行の車は帰る途中も視界を遮ぎるような深い霧に纏わりつかれ、そのままガードレールを突き破って谷底へと転落してしまう。
11
それから半年が経ち、昼夜を問わず捜索してきた警察の努力の甲斐も虚しく、彼等の車も、遺体すらも発見される事はなかったのである。
…
12
山中を走る一台の車が勾配の緩やかなカーブ付近で停車した。降りてきた老夫婦が大きく伸びをする。
「いやはや、これは素晴らしい眺めじゃの」
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老夫婦は手を繋いで、思わず言葉を失う程の絶景に笑みを浮かべた。
「あら、これは何かしら?」
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婦人が自分の足元で、トカゲに似た干物の様なものがべったりとアスファルトに張り付いているのを見つけた。
「トカゲにしては随分と大きいな」
老人がそういうと、婦人は「蛇かしら?」と言いながら、まじまじとそれに顔を近づけた。
「やだ、何これ!」
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不意にそれがビクリと蠢き、更に鳴いたような気がして婦人は慌ててそこを離れた。
おーい
「んっ?」
老人が真新しいガードレールに手をつき深い谷底を覗き込む。「いま、下から声がしなかったかい?」「ええ、何か聞こえたわね」しかし、そこには鬱蒼とした森が広がるばかりである。
「おかしいな、確かに聞こえたんだが」
「気持ち悪いわ、もう帰りましょう」
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老夫婦が立ち去った後も、強い陽に照らされたガードレールは、まるで次の来訪者を待つかの如く、ギラギラと怪しい光を放っていた。
了
助けてー
作者ロビンⓂ︎
謎は解けましたか?実は、マジでやばい事になってます…ひ…