【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

心霊地でポケモンGO④ その灯台にナッシーを立てよの巻

中編7
  • 表示切替
  • 使い方

心霊地でポケモンGO④ その灯台にナッシーを立てよの巻

今回のお話も知り合いの絵梨花さんから聞いたお話です。

nextpage

「ああっ、もうジムから負けて帰って来てる」

私はポケモンGOというスマホのゲームにはまりました。

レアなポケモンを捕まえるために心霊スポットに入り、ひどい目にも遭いました。

しかし、懲りずに今もプレイしています。

先ほど私が絶叫したジムというのは他のプレーヤーのポケモンと対戦して、勝利していくと自分のポケモンを配置できる闘技場のようなところなのですが、私のポケモンはまだまだ弱いので、頑張って配置してもすぐ他のプレーヤーのポケモンに負けてしまうのです。

「う~ん、ジムで戦うのにも傷薬なんかのアイテムを浪費するし、これじゃ私みたいに弱いプレーヤーは損ばっかりじゃない、格差拡大よ」

ジムに自分のポケモンを配置していると、毎日強化アイテムなどが手に入るので何とかしたいなあと思っているのですが、なかなかいい方法が思いつきませんでした。

nextpage

そんな時でした。

中学生の娘がネットである情報を見つけました。

「ママ、この島の灯台にジムがあるよ、ここならなかなか人が来れないからいけるんじゃないかな!」

なるほどと思いました。

人の多い激戦区のジムではなく、敢えて人があまり住んでいないエリアのジムを狙うというのは良い考えに思えました。

ポケモンGOのためにわざわざ海の上の島に行くなんてと思う方もいるかもしれませんが、最近私と娘は休みごとに県内各地のジムをレジャーのように探訪していました。

ある時はお城のある大きな公園へ行って散策しながらジムでバトルしたり、またあるときはジムのある行列のできる和菓子屋さんへ行って待っている時間にジムでバトルをしたりしていました。

本来ならインドアな母娘がポケモンGOのおかげでアウトドアに活動していたのです。

さっそく次の土曜日に私達はその島に行くことにしました。

せっかくなので、ポケモンGO仲間の真央さんも誘いました。

「うふふ、誘っていただいてありがとうございます、実は私もジムになかなかポケモンが置けなくて困っていたんです」

真央さんは神社の娘さんで、私の周りには娘の椎奈を始め霊感の強い人が多いのですが、真央さんはその中でも特に強い霊感を持つ女性でした。

彼女の実家の神社もジムなのですが、その神社も激戦区でほとんど配置できないようでした。

「それに普段はほとんど遠出することがないので、今回のお出かけは久しぶりでとっても楽しみなんですよ」

私は実家が神社だとなかなかお休みの日も外に出れないのかなあとその時は思いました。

nextpage

私達は島に上陸すると、徒歩で目的の灯台に向かいました。

島の住宅地は昔ながらの平屋が並び、石造りの坂道はまるで迷路のようでした。

幸いポケモンGOは実際の地図としても使えるので、迷うことはありませんでした。

「ところで絵梨花さんのお気に入りのポケモンは何ですか?」

「えへへ、よくぞ聞いてくれました、最近タマタマをいっぱい捕まえることができてですね」

タマタマというのはどう聞いても男性のアレを連想しますが、決して卑猥な言葉ではなく、卵がくっついたような形のタマゴポケモンのことです。

「ついにタマタマをナッシーに進化させることができたんですよ」

ナッシーというのは梨・・・ではなくタマタマが進化したヤシの木のポケモンです。

なぜタマゴのポケモンがヤシの木のポケモンに進化するのかは謎ですが・・・

このナッシーが私の今持っているポケモンの中で一番強いポケモンでした。

「あっ、奇遇ですね、私もタマタマをナッシーに進化させようと思ってるんですよ」

「へぇ~、真央さんもですか」

「それにほら見てくださいよ、このタマタマ」

真央さんがスマホで自慢のタマタマを見せてきました。

「あっ、なかなかのタマタマですね」

そのタマタマは戦闘力がかなり高めのタマタマでした。

「そうでしょう、私タマタマ大好きなんですよ、ピンクでころころしててかわいいじゃないですか、それに個体値も」

「うわっ『驚異的』で『芸術的』なタマタマじゃないですか」

脅威的、芸術的というのはポケモンごとの個体値ランクを示す表現でこの場合は最高のランクでした。

「しかもサイズは分類できないぐらいの大きさのタマタマなんですよ」

「・・・ママ、真央さん、タマタマのことばっかり熱く語ってるからちょっと島の人たちがこっち警戒してる」

娘が声を潜めて言う通り、気が付くと島のおばさんたちがこちらを指さしながら何かひそひそと話しています。

「あっ、す、すいません、なんでもないんです」

自分が発していた単語の意味に気が付いたのか、真央さんは顔を紅潮させました。

「絵梨花さん、私が下品な話を嫌いなの知ってるでしょう!」

「えっ、下品って・・・ポケモンの話しかしてませんよ」

私はもちろん真央さんの言葉の意味が解っていましたが、あえて素でとぼけてみました。

「あっ、そ、そうですよね、私ったら、今言ったことは忘れてください」

生真面目な真央さんは私の言葉を信じたようでした。

「それより、私お気に入りのナッシーに名前付けてるんですよ」

私も自分のナッシーを真央さんに見せました。

「へぇ、そうなんですか」

『ふなっしー』

「それ梨汁ブシャーの奴だし!

っていうか、名前が変わってるの気が付かなかった!」

娘がすかさず突っ込みを入れてきました。

そして、怒った娘に名前をナッシーに戻されました。

「真央さんもタマタマがナッシーに進化したら名前付けましょうよ」

「ええ、そうですね、どんなのがいいでしょう」

「う~ん、真央さんがタマタマ大好きなことも考慮して、『肉柱』なんてどうです?」

「やっぱり下ネタじゃないですか!」

真央さんは今度こそ顔を真っ赤にして絶叫しました。

nextpage

島の食堂でランチを堪能した後、島の南に向かって歩くと程なくして灯台に着きました。

灯台のジムに近づき、ジムに配置されているポケモンと戦い、私はジムにナッシーを配置しました。

真央さんはモンジャラというもじゃもじゃのポケモンを配置しました。

無事に目的を果たして帰ろうとしたその時でした。

灯台のジムから戦塵が上がり始めました。

誰かに灯台のジムが攻撃されているのです。

しかし、灯台の近くには他のプレーヤーはもちろん人の姿さえ見当たりません。

「えっ、だ、誰に攻撃されてるの?」

狼狽えていると程なくして私のナッシーが負けてジムから帰ってきました。

見てみるとナッシーの名前が変わっていました。

『フナッシーはコロシタヨ』

ナッシーの名前が悪質なメッセージに変更されていました。

「・・・囲まれてますね」

真央さんが半ば呆れ混じりに呟きました。

「えっ、どういうことですか?」

「ほら、そことかあそことか」

真央さんが灯台周りの林の中と海の中を指さしました。

「ひっ!」

彼女が指さした先を注視すると、林の木々の間から覗き込むように立つ黒い影と海の中からこちらをうかがう人の顔が現われていました。

「霊的存在が電子世界の中に干渉してくることはよくあることですが・・・」

真央さんは不満めいた言葉を漏らすと持っていたカバンの中から袋を取り出しました。

「それは?」

「お米とお塩です、ちょっと灯台の周りを清めてきます、椎奈ちゃんちょっと手伝って」

真央さんと娘は灯台の周りを囲むようにお米とお塩を振りまいていきました。

するとスマホの画面に反応がありました。

画面にはタマタマが現われています。

真央さんがそのシルエットをタップすると、タマゴの集まった姿ではなく、七つの生首と髑髏が転がっていました。

名前も『タマタマ』ではなく、『アタマアタマ』になっています。

またしてもゲームなのに集まってきた霊が干渉してきているようでした。

「仕様のない人達ですね」

真央さんはすっと右手の人差し指と中指を立てて空を切り始めました。

nextpage

「太陽の神様、日日ありがとうございます。

どうか迷える彼らを望むべき場所へお導きください」

真央さんの指が舞のようにスマホの画面を切ると画面の中の生首と髑髏は光の玉の中に吸い込まれて行きました。

nextpage

「終わりました」

浄霊を終えた真央さんがにっこりと微笑みました。

「真央さん、ここって心霊スポットだったんですか?」

私はすっかりビビりながら真央さんに尋ねました。

「心霊スポットというか、迷える霊が大勢いたのでしょうね、それが私を目指して近づいてきたようですね」

「真央さんを目指して・・・どういうことですか?」

「自分で言うのもなんですが、私はいつも神社の聖域の中で過ごしているものですから、常に自身が清められた状態にいます。

死して迷うものはそのような清浄な存在を見つけると導いてくれるかもしれないと集まってくるんです」

「ママ、もういいでしょ」

娘が私を制止したので、私はそれ以上事情を聴くことができませんでした。

「・・・よくあることですよ、気にしないでください」

寂しそうに呟く真央さんを見てこれが彼女の日常なんだと思い知りました。

「それより今のタマタマでナッシーに進化できますから、この子達にしばらくはここを守ってもらいましょう」

「えっ、さっきので成仏したんじゃないんですか?」

「まだ、すぐには無理ですね、けれど浮かび上がるような道筋はつくりましたので、この灯台で太陽の力を借りながらゆっくりと昇ってもらいましょう」

そう言うと真央さんは進化したナッシーをあらためて灯台のジムに配置しました。

nextpage

真央さんが清めて結界を張った灯台のジムは今でも守られたままです。

でも、真央さんはこれからも導いていくのでしょうか、この世の迷える人達を・・・まるで漆黒の海で光る灯台のように・・・

Normal
コメント怖い
19
25
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信

はと様、笑えると言っていただき感激です。
私もポケモンはこのポケGOが初めてで他のゲームはやったことないので、そこまで背景は詳しくないのです。
ですから、普通に詳しい人から見て何かおかしいところがないか心配しているほどです。
最近は子供と一緒にアニメの方もちょっと見てみたり、新作のサンムーンも興味はあったのですが、他の家族に止められました。

黒川先輩シリーズの本編も書き進めていますが、こっちの方がやはり書きやすいのです。
ただ、時間軸はこのシリーズの方が十数年あとになるので、そこだけちょっと気にかけています。

返信

ラグトさま

面白すぎて、笑って笑って笑いっぱなしでした。
実はポケモンGOは未体験。。さらにポケモンにもそんなに詳しくないので、ラグトさまのお話でお勉強してます(笑)

黒川先輩シリーズも大好きですがポケモンGOシリーズも後引く面白さで癖になりつつあります。
お体、充分ご自愛くださいね!

返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信