1
賢治ーー
賢治ーー
「んっ?何だあれ?」
「何って?」
「いやさ、あそこほら、あのおばさん交差点の真ん中で何騒いでんだ?」
「おばさん?どこだよ」
「はっ?ほら、あそこだよあそこ!白いカーディガン羽織ったのがいるじゃんか!あ、危なっ!いまギリギリんとこ車通ってったぞ!」
賢治ーー
賢治ーー
「……… だ、誰もいないけど、おまえ大丈夫か?」
「おまえさ、ふざけてんの?さっきからでかい声出して、賢治、賢治って叫んでるじゃねーか?えっ、あれ?いない、うそ!えっ、あのおばさんどこ行った?」
「おい!」
「なんだよ」
「ここの電柱んとこ見てみろよ、少し前にここで死亡事故があったみたいだぜ。被害者は子供みたいだな」
「……ちょっとスマホで調べてみるわ」
「おう、おまえ昔から霊感あるって言ってたじゃん?また見ちまったんじゃねーのか?」
「……… ほんとだ、一週間前に轢き逃げがあったらしい。被害者は近くの小学校に通う…酒井賢治君だって。
…… 犯人捕まったんかな?」
「どうかな」
「お、おい!ちょっと待て!そのすぐ後に子供の母親が事故現場で自殺したって書き込みがあんぞ、ま、マジかよこれ!!」
「笑えねーな、悲惨すぎる。手ぇ合わせてさっさと帰ろうや」
「…… やべ!」
「んっ?どうした?」
「さっきのカーディガンのおばさん…こっち見てる。おい!手ぇなんか合わせてんじゃねーよ、早く逃げんぞ!」
「お、おう!」
「うわ、こっち歩いてきた!早く!早く!」
2
賢治ーー
賢治ーー
ドコナノー
賢治ーー
賢治ーー
オカアサンメガミエナイノー
賢治ーー
賢治ーー
マチナサイ
賢ジーー
ケンーー
ケ…
…
…
…
3
「はあ、はあ、はあ、ビビったー!おまえ急に走り出すから、何事かと思ったよ!」
「はあ、はあ、ごめんごめん、でもやっぱダメだったみたいだわー」
「はあ、はあ、ダメ?ダメってどういう事だよ?」
「んっああ、ちょ、ちょっとおまえこっち来んな!この距離で話そう、なっ?」
「ちっ!ふざけてんのかよ?なんだよ一体?」
「ほら、この名刺やるから今から行ってこい!歩いていける距離だから、ほら!早く行ってお祓いして貰ってこい!」
「お祓い?…◯◯寺って、おまえ!ちゃんと説明しろよこの野郎!」
「わーった!わーった!いいから俺に近づくな!怖がるだろうからあんまり言いたくないけどよ、おまえの背中…」
「背中…?」
「ああ」
「なんだ?」
「さっきのおばさんがおまえの背中に嬉しそうにしがみ付いてんだよ…賢治、賢治ってよ。
おばさん両方とも目が潰れてるから、おまえと勘違いしてるみたいだ」
「……………… 」
「……………… 」
ケン…ジ…
「「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」」
了
作者ロビンⓂ︎
台詞だけの対話体小説、マミ姐さんの真似をしてみました…ひひ…