私は迷っていた。
絵里と思い出をつくると決めたはいいがどこに行きたいか、何をしたいか。
絵里の好みや趣味を何一つ知らなかった。
そして仮にも幽霊。絵里の触れたものがどういう動きをしているのか。声が聞こえるのは私だけみたいだが…
(迂闊に人目の多いところには行けないよな…)
「絵里、行きたい所とかない?したい事でもいい。生きてた頃は何が好きだった?」
「なんだろう。趣味も特になかったし、毎日友達といるかバイトに行くかだったから…」
「そうか…まあ、それは後で考えるとして絵里にいろいろ試したいんだけど、いい?」
「試す?」
「そう。生きてる人間の常識がどこまで絵里に通用するのか」
「…まあ、いいけど…何をするの?」
「まずは…服だよな。寒いだろ?それにいくら周りに見えないからと言ってそのハレンチな格好どうにかしなきゃまずいだろ。」
絵里は自分の服装を見て顔を赤らめる。
「それはそうだけど…」
「着替えてみよーぜ!姉貴が置いてった服もあるしとりあえずそれ着てみろよ!」
「…うん、わかった。」
(これはチャンスだ!もちろん今では普通の姉貴だが過去に中二病とやらを発症させてた姉貴の私服の中にメイド服があったはず!)
「ちょっと待ってて!」
そういい私は今は物置になっている元、姉貴の部屋に走って向かう。
(あったあった…すまん絵里、これは男なら1度は見る夢なんだ…)
少し前に流行ったブランド服やおしゃれな服を隅にどかしメイド服を手に取る。
(可愛い幽霊と同居してて、さらにその幽霊はメイドなんて…この世に未練なんてない!)
と都合のいい遺言を心で呟く。と、その時天井から視線が。
(……嘘だろ…)
そして知ってる声が怨めしそうに耳元で囁く。
「わたし、その隅にある服でいいからね」
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続く
作者amane