最近はどうなのか知らないが、デジタルカメラが普及する以前、大体20年前くらいは写真と言えばフィルム撮影だった。
現像も一般家庭ではできるはずもなく写真屋まかせが当たり前。
今では考えられないくらいの手間がかかっていたというわけだ。
その時、お店がサービスで付けてくれたのがぺラぺラの安っぽいフォトアルバム。
デザインもありきたり。
大学の頃、××部に入っていてよく部室に入り浸っていた。
講義をさぼり、漫画を読んだり雑談をしたり、大学のオアシスを満喫していた。
××部だけに部活動の過去の記録は充実しており、大量のノートとフロッピー、フォトアルバムが詰め込まれた段ボールが部屋の隅に積まれていたのを覚えている。
誰も来ず漫画も無い暇なときには気まぐれに引っ張り出して眺めるときもあった。
昔はこういうことをしてたんだなあと中々興味深かったし先輩方の何年か前の姿を見付けるのもそれなりに楽しい行為だった。
そのフォトアルバムを見付けたのはそんな流れの中だ。
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それは他のアルバムとは明らかに見た目が異なっていて真っ白な背景に無数の茶色のドットが打たれているというシンプルなデザインだった。
更なる違いはアルバム自体が凧糸とゴムバンドでグルグル巻きにされ、「あけないで」と書かれた短冊が張り付けられていたことだ。
もちろんここまでされると開けないわけにはいかないだろう。
慎重に短冊を剥がし、糸とゴムを解いていった。
見た目は厳重だが全てを外し終えるには三分程度しかかからなかった。
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さて、と開けるとそこには十数枚の写真が納められていた。
全て被写体は同じ人間で派手な安っぽいドレスを着た女だった。
頭部に占める顔の割合が五分の一程度、つまり顔のパーツ全てが通常の人間における鼻の下あたりに集中している。
ひしゃげた顔がカメラ目線で笑っている。
全ての写真がそうだった。
作者退会会員