中編3
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一番になりたい

「今週の怖話ランキング1位は…名無しさん「100年の孤独」です!おめでとうございます!」

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何事においても、1位というのは誇らしいものです。

仕事、スポーツ、好感度、そして勉強。

1位を目指すのは結構ですが…

くれぐれも、間違った方法はしないように。

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「今年のKWB45総選挙第一位は…永井 美音さんです!3年連続の受賞です!おめでとうございます!」

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「皆様、本当にありがとうございます!これからも頑張ります!」

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「努力は必ず報われる」

誰かが昔言った言葉。

でも私は信じられない。

世の中は不公平だ。

一位を取れる子はただ一人。

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あの娘がいる限り、私は一位にはなれない。

結局二位なんて、一位の引き立て役でしかない。

可愛くて、スタイルも良い、性格もいい。

歌もダンスもうまい。演技もうまい。

私は何ひとつ、あの娘に勝るところはないんだ。

何であんな娘がアイドルなんかやってるんだろう。

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「奈和ちゃん、どうしたの?顔色悪いよ。」

「え?ああ、ごめん、何でもない。ありがとう。」

本当優しいよね、あなた。

でもあなたの優しさが、憎くて仕方ないんだよね。

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数日後。

「はい、そこまで!」

レッスンの先生が声を掛けた。

「奈和ちゃんと美音ちゃん、また居残り?頑張りやさんね。でも無理はしないでね。」

「いえいえ、お構いなく。」

先生が出て行き、二人だけのレッスン場。

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「疲れたー。ちょっと風当たってくる。」

美音が出て行った。

何かが私に囁いた。

「やるなら、今しかないよ」

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レッスン場は少し高いビルの中にある。

美音が行くところはおそらくあそこ…

屋上だ。

私は美音に話しかけた。

「美音?」

「ん?」

「美音はさあ、いつまでもセンターでいたいと思う?」

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「そうだなあ…別にこだわってないよ。もう充分やりたい事できたし。」

「そう…」

「何で?」

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「じゃあもう、あんたなんて要らない」

私は美音の背中を強く押した。

「えっ!?いやあああ!!!」

だが美音は、咄嗟の判断で柵にしがみついた。

「何で?何でこんなことするの?私、奈和に何かした?」

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「ううん、何もしてないよ。」

「ふざけんな!じゃあ、何で!!!」

「邪魔だから。」

「何が?」

「あなたの存在そのものが。」

しがみ付いた美音の手を、私は蹴飛ばした。

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「昨日未明、アイドルグループKWB45の人気メンバー・永井美音さんが高所から転落し、死亡しているのが発見されました。警察は自殺の線が高いと見て捜査を進めています。」

誰も私を疑わなかった。

私があの娘より唯一勝っているのは、事務所の大きさ。

事務所に泣きついて、私は被疑者から外された。

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あの娘がいなくなって、私は念願のセンターになることが出来た。

罪悪感はなかった。

だってあの娘は私にとって、邪魔でしかなかったから。

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これでよかったんだ。

そう思い、時は流れた。

最初のうちは騒いでいたファンの人の声も、やがては沈静化した。

夜、誰もいないスタジオで私は一人練習をしている。

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「っ・・・!!!!」

急にお腹が痛くなって、私はトイレに駆け込んだ。

「いたた・・・どうしたんだろう。何か悪いもの食べたのかな・・・」

しばらくすると痛みは治まり、出ようとした時・・・

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コツ・・・コツ・・・

コツ・・・コツ・・・

こんな夜遅くに私以外にレッスン場に来る子なんていない。

誰?

忘れ物でも取りに来たのかな?

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「奈和ちゃん、どこ?」

「ひっ!!!」

くぐもっているけど、間違いない。

あの娘の声だ。

もう部屋からは出られない。

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ガチャッ

ついにトイレに入って来てしまった。

もうやりすごすしかない。

コンコン。まず一番前の扉がノックされる。

「誰も居ないや」

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違う違うチガウ・・・

私は悪くない。

一番になりたかっただけだんだ。

「奈和ちゃ~ん、出てきてよ。

居るんでしょ?

また一緒に踊ろうよ。」

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コンコン。

2番目、3番目の扉が開けられる。

次は私の部屋だ。

もう終わりだ。

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私は耳をふさぎ、眼を閉じた。

沈黙がしばらく続いた。

諦めたんだ。

それとも、許してくれたのかな。

私は立ち上がった。

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「見ぃつけた」

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コメントありがとうございます。
そういう風に思っていただけると光栄です苦笑

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誰しもが持ってる感情だからなんかリアルですね・・・・

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