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青薔薇古物店 「スマートフォン⑨」

中編4
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青薔薇古物店 「スマートフォン⑨」

――…それでは続いてのニュースです。」

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「○○市内の国道△△号線で大学生がはねられ、重体となっております。

警視庁によりますと、昨夜未明、国道△△号線で大学生の――さんが道路を渡ろうとしたところ、市内に住む男性(45)が運転する乗用車にはねられました。

――さんは首の骨等数か所を骨折し重傷ですが、命に別状はありません。

警視庁は事故の原因を調べています。」

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~~~

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空から降る雨粒がアスファルトを打ち付ける道路を、色とりどりの傘の花が鮮やかに彩っていた。

大通りの横を走る車道では、様々な車が交差する。

そんな景色を室内の窓から眺めながら、欠伸をする猫がいた。

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「くぁ~。暇だなあ…」

そんな独り言は室内に流れるクラッシックのBGMにかき消され、猫は窓から床へと飛び降りる。

整然と並ぶ棚を縫い歩き、奥にあるカウンターへと進む。

BGMにまざって聞こえてくる話声の主は、電話で誰かと話しているようだ。

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「はい、ええ、かしこまりました。…では後程、失礼致します。」

そう言い終わると受話器を置いた。

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「…客かい?」

「いいえ、お客様だった人のお母様です。貸与した品を返品したいと。」

そう言いながらカウンターの奥へと歩いて行く女性はこの店の店主だ。

タイトなロングワンピースを着こなし、長く柔らかな長髪は一つにまとめ、青い薔薇と蓮の花、そして向日葵の散りばめられた髪留めをつけていた。

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「ということは、スマホの客?」

「はい。彼のお母様がスマホをうちから貸してもらったと聞いていたらしく、お返ししたいと。

ご本人は今入院中で、伺えないとのことです。」

淡々と説明をしながら、カウンターに置かれたティーカップやポットを洗い、片付けていく。

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「今から、ここにくるのか?」

「いえいえ、お母様はこの店の場所を知りません。なので私が取りに伺うとお約束致しました。」

笑顔で答える店主の姿に猫は訝しむ。

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「…取りに行くだけか?」

「もちろん、とりに行きますよ。両方とも。」

「…なんだかんだ言いながらも、最後はやってやるんだな。」

「ふふふ、この店の店主ですから。」

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やれやれと言わんばかりに肩を落とし、その場に伏せる猫は手の上に顎を置き、息を吐き出した。

「結局、あのスマホはなんだったんだ?」

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洗い物を終えた店主は、カウンターを隅から拭いていく。

「あの端末は、通信料の発生する操作を行うと、しりょうの添付されたメールが届くそうです。」

「どんな資料だよ。」

「ふふふ、資料ではありませんよ。

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…死霊です。」

「…なんでそんな物騒な物を貸し出したんだ?」

店主は手を止め、窓の外を見る。

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「私は約束しましたから。約束をしたら、守ってくれると信じるのが私のやり方です。」

「みえみえの嘘だってわかってたくせに。」

「ふふふ。さあ、どうでしょうね?

…彼は、ここで貸し出したその日にすぐ、スマホを使用したのでしょう。

次の日には既にひとつ、憑いておりました。」

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「2週間ぶりに会う彼は、メールの数だけソレが増えていましたね。

律儀にメールを全て開いたのでしょう。」

「アレには自分も驚いたぜ…。視えないとはいえ、さすがにあそこまで来ると影響が出るぞ。」

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「そうですね。お見舞いに伺うとお母様にお伝えしたのですが、何かに酷く怯えているので難しいとのことでした。

入院した理由も、家から逃げるように飛び出したところを車にはねられたそうですよ。

うわ言で、[窓の外が]と、おっしゃっているようです。

お母様が何があったのかスマホ等を調べたけれど、メールは一つもなかったそうです。」

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「ふーん…。なんでメールがないんだ?」

「きっと何らかの理由で削除したのでしょう。…何らかに気づいて、と言う方が正しいのかもしれません。

そして私の予想だと外ではなく、[内]ですね。」

店主はカウンターを拭き終わり、グラスやカウンターに並べられたビン等にほこりよけの布を被せていく。

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「自分は難しい話は嫌いだ。」

「そんなんだからいつまでも居候なんですよ。」

「ちがう!間借りだ!」

「ふふふ」

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店主は衣服掛けにかけてあるストールを羽織ると、傘を手に入口へと歩いていく。

「では答え合わせの続きは、端末を回収してからにしましょう。

お留守番お願いしますね、マガさん。」

「ほいほい、いってらっしゃい番ちゃん。」

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~~~

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―…ここはいわくのついた物の集まるお店。

―…物の使い方は人それぞれ、千差万別。

―…人と出会う数だけ、物も人と出会う。

―…そんな出会いは偶然か、はたまた運命か。

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これより紡がれる物語は、そんな出会いの数々。

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その店の名は

【青薔薇古物店】

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序章・スマートフォン 終

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ふたば様はじめまして
コメントありがとうございます!
やはりあの頃の記憶が鮮明な方は多いかと思います。もちろん作者もそのうちの一人です。

あの頃に怖いを押すだけじゃなく、ちゃんとコメントとか残してれば仲良くなれたユーザー様が今もいたかもしれません(笑)
現実世界がほぼボッチだからネットで頑張ればよかった!(後の祭り)

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ラジオバラード様コメントありがとうございます!
効果音なんてつけられるんですか?
今はまだ文章を作るだけで精一杯なので、今後余裕がでてきたら色々試してみたいと思います。
作者の今の一番の目標は、『継続』なので…(笑)

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月舟様今回もコメントありがとうございます!
月舟様もご存じだったんですか。

おおお…その頃に貴方様がいらしたか覚えていないです。
記憶力の悪さを呪います申し訳ありません…
もしかすると読み専同士どこかの作品でお会いしてたかもしれませんね(笑)

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むぅ様今回もコメントありがとうございます!
もったいないお言葉です(笑)
作者が今一番恐れてるのは夜勤中にひらめいたネタを休憩までに忘れてしまうことです(笑)

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はじめまして雪様コメントありがとうございます!
こんな素人作品にmami様以外の金縁様がいらしてくれるとは思いませんでした。
さらに面白いとまで言ってもらえて光栄です。
これで調子に乗らないよう自戒しながら頑張ります(笑)

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はと様コメントありがとうございます!
お礼を言うのはこちらの方です。
作者の次回作を楽しみにして頂けるなんて、プレッシャーで逃走しそうでありがとうございます(笑)
いえ、本当に嬉しいです

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mami様コメントありがとうございます!
さすがmami様そこに気づいてもらえるとは。
店主さんのモデルになった方は鏡水花様と仲が良く、鏡水花様は以前蓮の花のアイコンだったのでそう表現して、個人的敬意も込めて向日葵も入れてしまいました(笑)
鏡水花様の作品はかねがね拝見していて、作品名は忘れてしまったのですが魚によってたくさんの人が死んでしまう川のお話がキッカケでいろんなお話を読むようになりました。
リレー作品の時のmami様とあの方のやりとり、拝見していてとても癒されたのが記憶にあり、mami様もかなり仲良くされてたので、足しても大丈夫かと勝手に判断してしまいました(笑)
すみません言い訳みたいになってしまっていますね。

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よ~ちゃん様コメントありがとうございます!
ではよ~ちゃん様と(笑)
ダラダラ長くなったかと不安でしたが読み応えあったと言って頂けてうれしいです。
何日か書き溜めてた(サボった)分をまた明日からあげますので、読みにきて頂けたらさらに喜ぶのでお願いします(笑)

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鏡水花様コメントありがとうございます!
最後まで読んでいただけるとは恐縮です…
その怖話ならではの挨拶も良かったですが、なにより冒頭に様々なネタで毎回自己紹介するのが好きでした(笑)
え、ご本人に読まれるんですか!?それはさすがに作者が羞恥死んでしまうので勘弁してください…(笑)
あと画像もありがとうございました!
さっそくひとつ使用させて頂きました!
マイページを見る習慣が無くメッセージボードの通知があったにも関わらず気づくのが遅くなり申し訳ありません…

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makeko様コメントありがとうございます!
解説はほかの方がしてくれてますので、作者はでしゃばらないでおきます(笑)
ただ、作中に店主が取りに行くものは、スマホと溜め込んでしまった死霊達を取り祓うという意味合いだったところが文が下手なばかりにわかりにくかったかもしれません。

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珍味様からコメントを頂けるとは!
…そうは言えど直接の面識はないのに失礼しました(笑)
初めまして、コメントありがとうございます!
この最後の為に頑張って固有名詞を避けて作品を作成しました。
作者今年一番の努力賞です(笑)

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読み応えバッチリでした

次回作楽しみにしてます〜!

ちなみに…よーちゃんで名前でございます(笑)
よーでも大丈夫です(笑)

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読み終わりました(^^)♬
「怖ようございます!」
「怖にちは!」
「怖ばんは!」
あの猫さんの定番挨拶が蘇って来る方も、少なくはないのではないでしょうか?ww
書き慣れた様に、読みやすく、しっかりした構成の話し運び。
確か・・・あの時は、ずっと読み専をしていたと仰っていたかと思うのですが、どうしてこんなに素晴らしいお話しが書けるのに、勿体ない(((◉□◉)))

と、完結したようですので、作中に出て来る「番ちゃんとマガちゃん」に、コピペで読ませちゃいます(*≧▽≦)ww

きっと、2人・・・
「こ・・・これはΣ(◉Д◉;)))」と、驚く事でしょうwww

そうそう♬
先程マイペにもお邪魔しましたが、彼女の好きな青い薔薇の画像を6枚ほど投稿しております。
どうぞお好きにお使い下さいませ(*´ω`*)

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