今では自殺の方法としてポピュラーになってしまった鉄道人身事故。
日曜や月曜になると、必ずと言ってもいいほど人身事故の情報がスマホに入ってきますね。
人身事故で有名な関東の路線といえば、中央線や東武線、JRでしょうか。
人身事故での死に方にもいくつかパターンがあり、跳ね飛ばされて即死なら綺麗な姿で葬式もできるが、粉砕系、断裂系になると、そうもいきません。
しかも即死でない場合もあるというのだから、事切れるまでの痛みや苦しみは想像を絶するでしょうね。
そんな人身事故に巻き込まれる多くの人間にとっても、それはたまったものではなく、特に内臓が飛び散ったり切断面からデロンと飛び出していたりした時はもう、酸っぱ苦いような、なんとも言えない臭気が辺りに漂い、ホーム上でマーライオンしてしまう人も少なくないんだとか…。
昔から事故の多い場所は「亡くなった人が一人じゃ寂しいから犠牲者を呼ぶ」と言われてたりします。
これからお話する知人の体験談も、そんな都会の闇溜まりに潜む住人からの誘いだったのかもしれません…。
nextpage
その日は日曜日で、知人はピアノ教室で教えている生徒の演奏会のために都内のイベントホールへ出かけていました。
その日は朝から晴れていて、春とはいえ初夏の陽気で昼間は暑いくらいに気温が上がったそうです。
演奏会は午前11時から午後4時まで。
知人の生徒達だけでなく、同じ音楽教室系列の生徒さん達が集まるので会場は賑やかでした。
nextpage
知人は他の音楽教室の先生達と打ち合わせをしたり、演奏会を聴きに来たお客さんをホールの中まで誘導したりと忙しく立ち回っていたようです。
ひと通り演奏が終わって、全てのプログラムを終えたのが予定を少しオーバーした4時過ぎ。
そこから、お客さん達に挨拶しながら全員の退場を待ち、生徒達を帰してからホール内の片付けや清掃を行い、会場を後にしたのは5時半頃だったそうです。
nextpage
イベントホールの関係者通用口から外へ出ると、知人の生徒の一人、沙頼(さより)ちゃんが待っていたんだとか。
「どうしたの?帰らなかったの?」と問う知人に沙頼ちゃんは、「演奏会で少しトチってしまったから、苦手な指の運び方について先生にアドバイスを貰おうと待ってた」とのこと。
それに、帰る方向も一緒だから、ということで待っていたそうです。
nextpage
その日の演奏会の話題や沙頼ちゃんへのアドバイス等で盛り上がりながらイベントホール最寄り駅へと歩き、ホームで電車を待っていました。
電光掲示板には、次に来るのは快速と案内が出ていたので二人は快速でちゃっちゃと帰ろう!と笑いあったそう。
nextpage
『~♪…間もなく2番線に快速〇〇行きが参ります。危ないですから黄色い線の内側に…』
«2番線、快速〇〇行き到着です!危ないので黄色い線の内側に下がってお待ち下さい!2番線、快速〇〇行き到着です!途中駅の〇〇、△△、✕✕には停車しません、次の各駅停車をお待ち下さい!»
nextpage
駅アナウンスに駅員のアナウンスが被るのはよくある光景ですね。
私も、あれって何でわざわざ被せるんだろ、と思うことがあります。
…それはさておき。
nextpage
駅員のアナウンス直後、沙頼ちゃんがいきなりホームの外側へとフラフラ歩き出しので、知人は驚いて沙頼ちゃんの肩を掴んで後ろに引き倒したそうです。
沙頼ちゃんが倒れてすぐ、快速電車がホームに入ってきました。
時間も時間なのでホームには多くの人がいて、大丈夫ですか?と声をかけてくれる人もいました。
nextpage
当の沙頼ちゃんは、夢でも見ていたかのように尻餅をついたままの状態で、しばらく呆然としていたそうです。
人身事故を回避できてホッとしたあと、知人は沙頼ちゃんを立たせて、声をかけてくれた人達に礼を言いつつ、目の前でドアの閉まってしまった快速電車を見送り、とりあえず沙頼ちゃんを近くのベンチに座らせました。
nextpage
沙頼ちゃんを落ち着かせようと沙頼ちゃんの前にしゃがみこみ、沙頼ちゃんの手を擦りながら「大丈夫?」と知人が声をかけると、沙頼ちゃんは俯いていた顔をわずかに上げてポツリと言いました。
nextpage
「…呼んでるの」
「え…?」
「…ほら、あそこ…」
nextpage
それを聞いて知人は背筋が寒くなり、沙頼ちゃんの指差す方向を怖くて見ることができず、その後、少し落ち着いた沙頼ちゃんを連れて次の各駅停車に乗って帰宅したそうです。
その沙頼ちゃんは、帰宅後は何も覚えていなかったとのこと。
nextpage
…今度は貴方が、ふとした瞬間に呼ばれてしまうかも…。
お気を付けください…。
[おわり]
作者ゼロ
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ご無沙汰しておりました、すみませんm(_ _)m
知人はピアノ講師ですが、私はヴァイオリンで忙しくしておりました。
知人とも一緒に演奏したりしますが、最近はお互いに忙しすぎて連絡もなく、久々に電話があったかと思ったら、このお話でした。
人身事故、増えてますね…。
死ぬほうも楽になりたい一心なのでしょうが、死後に無残な残骸を不特定多数に見られ、あまつさえ多くの人々に迷惑をかけてしまうことを頭の片隅にでもいいから入れといて!と言いたくなります。
多忙はしばらく続きますが、また忘れた頃にお話させてもらうこともあるかもしれません。
よろしくお願い致しますm(_ _)m