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中編3
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安いアパート

この頃、仕事の都合で引っ越すことになった。

今までは実家暮らしだったから勝手がわからず、とりあえず安ければいいやと思って、家賃の相場?よりもずっと安いアパートに引っ越すことになった。

まぁでも、やっぱり行きなりそこに住むとなるとちょっと抵抗があった。

その家に不満はないのだけど、ただ前に人がすんだというだけで、ちょっとだけ怖かった。

そのことを大家さんにいってみたら「何日かためしに住んでみてそれから決めてもいいですよ。」と言ってもらえた。

ので、ため息混じりに部屋の中を見舞わす、大家さんに「ためし住み」をしたいと申し出た。

それから数日後、幾らかの生活用品を持ってその家に泊まることになった。

家につき、生活用品を部屋の中に置いて、改めて部屋の中を見回ってみた。

やはり、なにもない部屋はすごく広く感じるので、なんだか、寂しく感じる。

実家ではての届く範囲にものが溢れ帰っていたのだが、それがない。

まぁそれは当たり前かと、部屋の中をみてまわる。

台所はすべすべなシンクがあり、新しめのコンロ置き場がある。

前の住人はあまり炊事をしなかったのだろうか?

次にトレイからお風呂場、洗面所から飛んでベランダをみて落ち着いた。

全体的にみてもやはり文句はほとんど出てこない。

強いて言えば、押し入れの中が少し古いのだけだった。

それからお腹が減ったので昼を食べて、暫く外をぶらついて、部屋の中の風呂場を使うわけにはいかないので銭湯に行き、それから晩御飯を食べて結局戻ってきたのは8時過ぎだろうか。

寝るのは人よりも少し早く、九時頃には押し入れの前の方に簡易の布団を敷いて眠りに落ちた。

暫くしてからふと、目が覚めた。

尿意がすぐそこまで来ていたらしい。

寝ぼけ眼でトイレにふらふらしながら向かう。

この時、どこからかなにかを叩く音がしたような気配を感じながら、尿意をトイレの底に治める。

それから手を洗い部屋に戻り、布団に寝転がる。

うつらうつらしてきたところで、何故か頭が急に冴えてきた。

その理由は、先程から何処かで鳴っている音が頭に入ってきたからだろう。

別にそれだけだったら、音が何処かで鳴っている程度で片付ける。

けれど、この音は部屋のなかで鳴っているようなので他人事ではなくなった。

目を開けて音のする方に耳を傾ける。

ちょっと小さい音だけど、その音は涼しげな風鈴の音だった。

それは何処から?

聞いていると不思議な心地になってくるそれは、頭の上の方から聞こえてくるようだった。

そちらの方には押し入れがあるだけなのだけど。

この家は四階だての一番最上階の部屋なのでそれはない。

んじゃあ、隣のうちから?

それもない、この奥にはもうひとつの南側の部屋があるだけだ。

頭が冴えてるとはいえ、起きたばっかりなので少々ぼけている。

ので、なにも考えずに押し入れの取っ手にてをかけた。

そして、思い切り戸を開け放った. ...つもりだったのだけど、それは気のせいだった。

思い切り開け放ったその戸は半分も開いていなかった。

すると、そこから「いないよぉ?いないよぉ?誰も居ないからきにしないでぇ?」って。

誰もいないはずなんだけど、声は確かに中から聞こえてきた。

そこで、記憶は途絶えていた。

起きたときには、何故か俺は玄関付近で塩を持って寝ていた。

それからすぐに大家さんのところに言って住居を拒否した。

それからもう独り暮らしは考えなくなった。

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