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shake
ブーッ ブーッ...ブーッ ブーッ...
昼休憩の時に胸ポケットに入れたままになっていた携帯が振動した。
このバイブ音はメールだ。
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体を起こそうとすると肩と背中に痛みが走った。
リビングのソファーに横になりながら新聞を読んでいたはずが、いつのまにか眠ってしまったらしい。
体を起こした所で腕時計をみると7:00 PM。
メールには ”今どこにいると思う?” という文章と共にふざけたgifが添付されていた。
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shake
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ブーブーブーブーブーッ
今度は着信音だ。
「もしもし...」
「今どこにいると思う?」
メールの送り主からの着信だった。僕は適当に返事をしながら足元に散らばっている新聞を拾い集める。どこまで読んだか分からない記事、神妙な表情の政治家が記者に向かってなにかを訴えているのがみえた。
「今どこにいるんだよ」
「日本!さっき日本に着いたんだ、驚いた?」
「え驚いたけど..えらい急だな」
持っていた携帯を床に落としそうになり、もう一度持ちなおした。
「ふーん。その言い方じゃ、まだ信用していないな?今携帯にホテルのURL送った。今夜予定がないなら来いよ」
メールを確認すると、確かにホテルの場所が載っていた。でも、まだ僕は信用できなかった。何回かこのようなやりとりをして騙された記憶があるからだ。
「今から支度して行く」
「いいねぇ。ホテルのロビーで会おう」
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ホテルは携帯の画像で確認したものよりも広く大きく感じた。
エントランス・ホールやレストランには海外の観光客らしき人達ばかり。ロビーの脇で仁王立ちしている自分がなんだか浮いているように思える。
辺りを見渡し探していると、ホテルの入り口に変なものが視界に映った。
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「ん?あの人何してるんだろう」
男か女か分からない、その人物はホテルの中へは入らずに入口付近でうろうろしていた。
真下を向いたまま歩いているので顔がよく見えない。その動きはまるで壊れたぜんまい人形のようだ。その人物がいるそこ一体だけ異様な空間に感じた。
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shake
ポンポン
不意に後ろから肩を叩かれ、反射的に振り向いた。
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「待たせたね、やっと会えた!」
「本当に来てたんだ、いやー驚いた」
肩を叩いたのは友人だった。相当びっくりしたのか、心臓がまだバクバクいっている。
再会して早急に馬鹿力で抱擁され,背骨が折れる思いをしたあと、友人の部屋へと移動した。
この時にはもうホテル入口の怪しい人物の姿はなかった。
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部屋に着くと中には見知らぬ人が二人、一人はソファーで居眠りをし、一人は書斎の上のパソコンから顔を上げ笑顔で会釈する。表情は穏やかだが、目に鋭さがみられた。釣られてこちらも挨拶し返す。
「この居眠りしている方はアシスタント、今挨拶したのはマネージャー」
「友達かと思った、プーちゃんの仕事仲間か」
「うん。なにか飲む?なんでもあるぞ」
テーブルにはグラスに入った水、ワイン、ワイン、ワイン、ウォッカ、ワイン...
此方が何をくれと言う前にグラスに赤ワインを注ぎ、目の前に置いた。
友人は自分のグラスにも赤ワインを注ぐ、しかも並々と。
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「プーちゃん、なにか怖い話もってないか?」
グラスワインを一気に飲み干し、答えた。
「んー、そうだな...俺がネカマに騙されて襲われそうになった話はどうだ?」
「その話は聞いたよ、君の瞳はまるでホープダイヤのようだ...ゲヘヘヘ...これだろ?」
「気持ち悪...そうだよ、その話だ。じゃあ、この話はどうだ...」
再び赤ワインをグラスに注ぎ、若干赤みのさす顔で語り始めた。
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時刻は夜の10時過ぎ。今日は仕事もなく予定もなく、なにもやることがなかった。
仲の良い友人の何人かに連絡しても、みんな既に予定があり一緒にどこかへ付き合ってくれる者は誰一人居なかった。
独りで飲みに行こうかと考えたが、そんな気分にはなれなかった。
今日はなんだか人恋しい、携帯の画面に流れる連絡先を眺める。
「はあ、いい女いないなかな...暇だな...ナンパするか」
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いつも以上に念入りに髪をセットして、普段は使わない香水をつけ、いつもより良い服を着て、鏡で自分の顔をチェックし、少し高価な時計をして家を出た。
見た目がかっこいい車をレンタルし、目当ての女の子を探しに行く。
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「綺麗な女の子...今夜俺の相手をしてくれる女の子...さあどこにいる?」
ポーカーフェイスで道に立つ女の子を物色する。本当は頬が緩みそうなのを必死に抑えていた。早く自分好みの女の子を見つけたかった。
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それから数分経った頃、やっと目当ての女の子を見つけた。
ドストライクの子だ。
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「君、今夜時間ある?」
「ええ、何時間?」
白っぽいレースの様なタイトワンピースを着た、長身の女の子が車に近づいてきた。真っ赤な口紅と大振りのピアスが目立つ。窓枠に手をつき、顔を近づけてくる。人形のように綺麗な顔だな、と思った。
「二時間でいい。変な事はしないよ、ただ一緒に酒を飲んでくれればいい。この条件どうかな?」
「一緒にお酒を飲むだけでいいの?お兄さんエンジェルね。いいわよ、一緒に楽しみましょう?」
ドアを開けると助手席に乗り込んだ。
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彼女が入ってくると同時にきつい香水の臭いと一緒に臭い化学物質の様な変な臭いが漂った。
正直、咽るかと思った程臭い。
これは選ぶ子を失敗したかな...そう考えていると女の子が声を出した。
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「ねえ、お名前は何て言うの?私の名前はメアリー」
女の子はわざとらしく耳元で囁きながら言う。この時は何故か甘い匂いがした。
「ブラウンだ」
「ブラウン?もしかしてチャーリーブラウン?アハハハ」
shake
大声で笑いだした。車内に声が響き、ものすごくうるさい。メアリーは大股を開き足をばたつかせ、手を叩きながら笑う。
「おいおい、女の子なんだからそんなに大股開いちゃだめだよ。行儀が悪いよ」
「うえーん、うえーん...ごめんなさいパパァ...アハハこういうのが好きぃ?」
メアリーは泣き真似をしながら子供の様な声で言う。また、選ぶ子を失敗したかも...と考えた。
「ねえ、ちょっと寄ってもらいたいところがあるの。すぐ済むから、すぐ済むから寄ってくれない?パパァ」
「そのパパァって言うの止めてくれ..なんだか不気味だ。いいよ、寄ってあげるけど、突然屈強な男が現れてボコボコに殴られて金を取られるなんて事はないよな?」
「美人局じゃないわよ、そんな事しないわ。すぐ済むから、すぐよ...」
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メアリーの指定された場所へ着いた。
そこはぽつりぽつりと一軒家が建っている、見知らぬ土地だった。人通りが少なく車もあまり通っていない。メアリーはすぐ済むからと言い残し、ある一軒家の中へ入って行ってしまった。
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「まだか...まだ来ないのか...」
指先でハンドルを叩きリズムをとる。最近聴いた曲を口ずさみ、時間を潰す。
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music:2
15分...30分経ったか...メアリーの入って行った家の中から男と女の怒号と悲鳴が聞こえてきた。
「なんだなんだ!?何が起こってるんだよ!」
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shake
ガシャンー ガシャーン バリン
家具が倒れる音、ガラスの割れる音様々な音に混じって助けを求める人の声がする。
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sound:39
助けてー!やめてー!嫌だー!ギャアアアー!
明らかにこの状況は異常だ、メアリーは何をしているんだ。メアリーを呼びに行こうとした時
shake
バァーーーン
家のドアを勢いよく開けてメアリーが出てきた。
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music:6
「お待たせー」
目をカッと見開き真っ赤な口を開けて手を振っている。異様に青白い顔で、顔の汗がテカテカ光っていた。
その手には包丁が握られ、ワンピースはところどころ赤く染まり、髪は乱れている。
本能的が逃げろと警告している。
急いでエンジンをかける。手にびっしょり汗をかき、手が震えた。
メアリーが走って此方へやってくる。
「くそっ!早くエンジンかかれ!このポンコツ!」
やっとエンジンがかかり発進する。
メアリーがニコニコ笑いながら走って追いかけてくる。
ブラブラブラブラブラブラ...ブラブラブラブラブラブラ...ブラブラブラブラブラブラ...ブラブラブラブラブラブラ...ブラブラブラブラブラブラ...」
意味不明な言葉を大声で叫んでいるのが聞こえる。髪を振り乱しながら追いかけてくる。
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メアリーを完全に撒くまでエンジンを最大にして走った。
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「やっぱり選ぶ子間違えた....」
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「どうだ、怖いだろ?」
友人は椅子に座り、ふんぞり返りながら得意気に言った。
「怖い...同じ目には遭いたくないな。ところで、話に出てきたブラウンっていう人は誰なの?」
「知りたいか?」
悪戯を企む子供の様に楽しそうに言った。
「ほら、そこで眠ってる男...これがブラウン」
さっきからソファーで居眠りをしているアシスタントを指さした。
「意外と近くにいたな..」
噂をされている本人は一度薄く目を開けた後、再び目を閉じた。
声をかけても反応がなく、起きる気配がない。
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「怖い話、もっと聞きたい?」
作者群青
皆さんおはようございます・こんにちは・こんばんは、群青です。
この話は、以前書いた”オールドハウス”という話に出てきた友人が登場します。最近その友人と再会しまして、色々な怖い話を聞かせてもらいました。その中の一つが今回の話です。
誤字脱字などございましたら、ご指摘して頂けると幸いです。お気軽にコメントして下さい。