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短編2
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ミガワリ

変わらない景色の中、落ち葉を踏む音と烏の鳴き声だけが響く。目的地がどこなのか何の為に歩いているのかさえ今はわからない。空は分厚い雲に覆われていて薄暗く、吹く風が肌に刺さる。

どのくらい歩いたのだろうか。目の前に大きな鳥居がひとつ見えた。朱い鳥居は処々朱が禿げて黒い。少し不気味な光景ではあったが私の足は止まろうとはしなかった。

怖い。

帰りたい。

もう進みたくない。

そう思うのに私の足は止まらない。ゆっくりと落ち葉を踏みしめながら、どこかを目指して進んで行く。

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社が見えてきた。

切り立った崖の麓、崖と向い合う様にしてその社は建っていた。朽果てたその外観は今にも崩れ落ちそうで、人の気配も生き物の気配もない。

近付きたくない。

ここはよくない。

本能的にそう感じているのに、足は言うことを聞かない。一歩ずつ一歩ずつ、近づいていく。社の階段は踏み込む毎に嫌な音をたてる。

社の中には所々赤い大きな岩が一つ置かれていた。中は薄暗くそして寒い。足は少しずつ岩に近付いていく。烏の鳴き声も今はもう全く聞こえない。薄暗い空間に私の息使いだけが響く。

嫌だ嫌だ嫌だ

怖い怖い怖い

『此処に全部置いて行って。』

背後で聞こえたその声にゆっくりと振り返る。正面の崖に空いた穴。全く先が見え無い闇。

あそこにいかなければ。

向き直りまた岩へと近付く。岩の所々赤いところ、よく見るとそれは真赤な御守袋。新しい物、薄汚れて破けそうな程昔の物。沢山のそれらは全て真赤な同じ物。

『ゼンブオイテイッテ…』

気が付くと私の手にも真赤なそれが握られていて。

『ゼンブ、オイテ、イッテ…』

置かなければ。いかなければ。置きたくない。いきたくない。置かなければ。いきたくない。置きたくない。いかなければ。

「代わりに行ってくるよ。」

私の手をとって笑ったその顔を私は覚えていない。止めなければと思ったのに出来なかった。私を置いてあの闇の奥へいってしまった。恐怖と哀しみで動けない私にまた声が聞こえた。

『マタ、ミガワリ』

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