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中編5
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第1話 和風の廃旅館

music:7

人生の終わり…

わかっていてくるものもあれば、唐突に突きつけられるものもある。

わかっていたら心構えができるかもしれないが、理不尽なものや突然な終わりには未練が残りやすいのではないか。

そんな者の生への執着は計り知れない…

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music:4

俺の名前は五彩 純(ごさい じゅん)。

友人の唐木と小さな部屋にいる。

この前、唐木を誘ってオカルト研究会を設立?させた。

大学には民俗学サークルとして申請している。

今、使っているこの部屋は現在は使用されてないらしく自由に使っていいとのことだ。

古そうなエアコンとガタガタいう扇風機がある。

俺 『あっついなぁ!』

と言いながらちりとりに埃をはき、ゴミ箱に入れる。

唐木 『よしっ!終わり!クーラーつけようぜ!』

と唐木がリモコンで電源を入れる。

涼しい風が頬をなでる。

持ってきたノートパソコンに電源を入れて、有線を繋ぐ。

唐木 『それで何すんの??』

俺 『近くの心霊スポットを検索する』

唐木 『いいねぇ!』

心霊スポットで検索してたら気になるサイトがあった。サイト名は『知る人ぞ知る地元の事故物件』というものだ。

スクロールしていくと一際異彩を放つ場所があった。

俺 『おっ!これいいんじゃないかな。 和風廃旅館! あっ、けど説明もなにも書いてないね 』

すると唐木が

唐木 『俺、この廃墟の噂聞いたことあるぞ…』

唐木の話をまとめると、

ある山奥に和風の旅館があった。

元々そんなに人気はないところで女将と数人の従業員で切り盛りしていた。

旅館が休みのときに女将が庭の手入れをしているところに運悪く土砂崩れが起きたらしい。

前日が大雨で崩れかけていたのだろう。

土砂は裏庭を埋め尽くすほど広範囲で女将は今も見つかっていない。

というものだった。

唐木 『ここにしょうぜ!!なっ!』

俺 『まぁ、いいよ』

オカルト研究会の最初の活動は『和風廃旅館の探索』になった。

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そこは車で3時間の緑に囲まれた山奥。

麓の街まで下るには1時間30分くらいかかる。

空は夕暮れで闇がそこまできている。

到着すると門があった。その奥に異様な雰囲気の大きな廃旅館がある。

門の前に車を停める。

門自体は錆びていて、ギーっと低い音を立てながら開く。

敷地内は手入れされていなく、草は生え放題で旅館の壁には蔦が這っている。

旅館は木製でいかにも和風って感じだ。

唐木 『まずは旅館の中から調べようぜ!』

持ってきていたライトに明かりをつけながら唐木がいってきた。

俺 『そうだな。』

俺もライトをつけながら答える。

近くに明かりはなく、ライトを頼りに歩く。

正面の扉を開けて中に入る。

中に入ると玄関があってその奥に受付があった。

肌にまとわりつく湿気と古い物置のような臭いがする…

唐木 『なんか俺、ワクワクしてきたw』

俺 『良かったなw』

などと話しながら奥に進む。

一階建ての旅館らしく、部屋は沢山あった。

しかし老朽化が進み、廊下に大きな穴が開いていたので2,3部屋しか見れなかった。

その見た部屋も俺が写真を撮ったのだか特に異常はない。

すこしテンションが下がりながら出口に向かった。

唐木 『まぁ、旅館には何も無いかぁ。 よし!本命の裏庭に行こう!』

俺 『そうだな』

といって旅館から出て裏庭に向かった。

裏庭に着くとあたり一面土石で埋まっている。

すると

唐木 『あっ、あそこ通れそうだぜ!』

と唐木が指をさした。その方向を見てみると確かに廃旅館と土石の間に人が通れそうなところがある。

その間を通り抜けてみると少し広い空間があった。その空間は土石に囲まれていて、一部だけ土石流に崩されたであろう蔵と蔵の中身があった。

唐木 『なんだあれ??』

ライト当てると何が光った。

俺 『写真だ…』

唐木が近づいて写真を見る。

唐木 『なんか大将みたいな人が写ってるな…』

唐木が埋まっていた写真立てを取って見ていると土が崩れて井戸が現れた。

すると唐木が

唐木『おっ! 井戸があるじゃん!』

と井戸のなかを躊躇いもなく覗き込んだ。

しばらく覗いてから、

唐木『ちぇっ、ただの井戸かよっ…』

写真立てを井戸の淵におきながらふてくされるから

俺 『残念だったな…』

と言葉を返した。

唐木『もう帰ろうぜぇー』

と言うので

俺 『ああ、ちょっと写真撮るから先に帰ってて』

と答える。

唐木 『へーい』

と出口にスタスタ歩いていく。

music:6

井戸が出てきてから唐木と話しているとき、俺の声は少し震えていた…

唐木は気づかなかったが、井戸には何がいた…

sound:10

その何かは黒いモヤで手の形をしていて井戸の壁にしがみついている。

見間違えたか?などと目をこすってから様子を見てみるとそのモヤは動きだして壁を這い上がろうとしている。

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shake

ヤバイッ!!!!

と思って足を動かそうとした。

動かない…っ!??

金縛りにあったかのように体が動かない。

そのモヤは井戸から這い出てきて人の形をしていた。

いや人の形だがところどころ形がおかしい…

そいつは這いずりながらどんどんこちらに迫ってきている…

俺は頭の中で南無阿弥陀仏を唱えているが全く効果は見られない。

恐怖で呼吸が荒くなる。

俺 『ゴホッ!!ッ!!』

急に強烈な悪臭が鼻を襲う。

魚や肉の腐ったような…そんな不快な臭いがそいつから出ていた。

あと1m…その距離までそいつはきていた。

臭いと恐怖で頭は朦朧として『あぁ、おれはどうなるんだろう』と考えていた。

すると、突然声が聞こえた。

???『おいっ!大丈夫かっ!?』

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music:4

その言葉と同時に金縛りが解けた。

そして黒いモヤも消えた。

唐木 『なんか苦しそうだったけど埃でも吸い込んだのか?』

帰りが遅いから唐木が見に来てくれたらしい。

俺 『大丈夫…ありがとう』

というと唐木は不思議そうな顔をして

唐木 『ありがとう??』

俺 『いや、それより早く帰ろう。』

こんな場所早く帰りたい…

唐木 『ふーん、まぁそうだな!腹も減ったし!』

足早に車に乗り込んだ。

俺 『なんか帰りに食おうぜ、俺の奢りで』

助かったのもこいつのおかげだし

唐木 『じゃあ、ファミレス行こうぜ!』

俺 『おう!』

しばらく車で走ってから街の明かりが見えたので窓を開けた。

風にあたりながら考える。

『あの人?は亡くなった女将なのだろうか… もしそうだとしたらあの写真の人は女将の… 』

一瞬、夜の匂いの中にあの臭いがしたような気した…

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