僕には付き合って五年になる彼女がいる。
高校三年の時、僕から告白して付き合う様になった。
付き合ってから聞いたんだけど、彼女もずっと僕の事を想ってくれていたみたいで、卒業までには僕に告白するつもりでいたらしい。
相思相愛ってやつだ。
そんな僕達は付き合い出してから毎日が幸せだった。
何をするにも、何処へ行くにも常に一緒。
たまには自分の時間が欲しいって言う人もいるけど、僕達はそうは思わなかった。
少しの時間でも、たった十分間でも一緒にいれるならそれだけで幸せだった。
そんな僕達にも一応、一つだけ決め事の様なものがあった。
それは、互いに束縛し過ぎ無い。というありきたりなもの。
お互いを好きでいれば好きでいる程、変な気を使ってしまう事ってあるだろ?
例えば、友人達とごく普通に飲みに行くにしても彼女の事を考えたら中々切り出せない。みたいな。
まぁ、束縛とはちょっと違うんだけど、互いに無理無くいつまでも自然体でいる為の、僕達二人のたった一つの決め事だった。
でも、そんな決め事すら僕達二人には必要無かった。
勿論、互いに友人達と遊びに行く事はあった。
でも、それがどんなに遅くなっても必ず一度はお互いに顔を合わせてたんだ。
本当に無理はしてないよ?
僕達は毎日一緒にいたかったし、毎日顔を見ていたかったんだ。
ごめん!別にノロケてる訳じゃ無いんだ。
それ位、僕達は愛し合っていたって事を分かって貰いたかっただけなんだ。
そんな僕達が、結婚を意識し始めたのは付き合って三年が経った頃。
でも、その時はまだ二人共学生で、経済力も無かったから、二年の期限を決めて結婚の約束をしたんだ。
その間に二人で頑張ってお金を貯めようってね。
それからの僕達は今まで以上に幸せだった。
頑張って結婚資金を貯めて、二年後には結婚するんだからね。
互いにアルバイトで貰った給料から、少しずつ貯金をして、結婚する日を夢見て笑い合ったよ。
その時僕は、彼女には内緒で結婚資金以外にも貯金をしていたんだ。
そう…婚約指輪のお金をね。
そりゃしんどかったよ?
アルバイトで貰える給料なんてそんなに多いものじゃ無かったし、限界まで食費を削ったりしてね(笑)
でも、全然苦じゃ無かった。
指輪を渡した時の彼女の顔を想像したら、これ位の事は本当に平気に思えた。
でもね?
女性の勘って言うのは本当に凄いと思うよ。
僕が食事を抑えて何かしてるっていうのが彼女には分かったんだろうね。
週末になったら僕の家に泊まりに来て、食べきれない程の手料理を作ってくれるんだ。
本当に凄い量だよ?
そしてそれを美味しそうに頬張る僕を嬉しそうな目で見つめて、無理しないでね。って笑うんだ。
本当に彼女は優しかった。
それからあっという間に二年が経って、遂に約束の日が訪れた。
僕はもう朝から彼女に会いたくて会いたくて。
でも、はやる気持ちを抑えて夕方から会おうと彼女に言ったんだ。
大分背伸びをして、夜景の見えるレストランに予約を入れていたから。
そこで正式に彼女に結婚を申し込む予定をしていた僕の心臓はもうバクバクで(笑)
夕方に彼女と落ち合い、レストランで美味しい食事をとった後、出来るだけ自然に彼女をテラスへと連れ出す僕。
僕達を包み込む光輝く夜景よりも綺麗に見える彼女。
僕はゆっくりと彼女の前に指輪を差し出す。
「これからもずっと僕の側で笑っていて欲しい。
僕と結婚して下さい。」
気のきいた言葉は思い浮かばなかった。
ただ、僕の想いを素直に彼女へと伝えた。
「嬉しい…。」
彼女はそう呟くと大粒の涙を流しながら僕に抱きついた。
そんな彼女に僕も感情を抑えられなくなって彼女と一緒に涙を流す。
「これからも…ずっとずっと一緒にいようね。」
涙を流しながら彼女をきつく抱き締める僕の耳元で彼女がそう囁いた。
本当に幸せだった。
これからの僕達には、幸せしか待っていない。
心からそう思えた。
でも…。
彼女はその夜、自宅マンションから飛び降りた…。
作者かい
(T-T)