短編2
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引きこもり

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俺は今年で38歳になる。仕事もせずに実家暮らし、一日中家の中に居て過ごす。いわゆるヒキニートってやつかな。

そんな俺だが今日も起きて時計を見る、時刻は深夜の2時くらい。まあいつもこんな感じだ。

部屋の前に置いてあるおにぎりを頬張る。仕事しろみたいな感じの書かれた紙がいつも添えられているが、気にしない。スマホでTwitterをチェックした後PCの電源を入れる。このPCは母親が高校の卒業祝に買ってくれた14万ほどのノートPCだ。

「これから頑張ってね」と選んでくれた母と最後にまともに話したのはいつだったか。そんなことを考えているうちに起動が完了する。更新を知らせる表示が毎回うっとうしい。

メールをチェックすると、7時間ほど前に友人から披露宴の招待メールだった。興味ないのでゴミ箱に移動する。

高校の時は楽しかった、なんて思いでを思い出しながらネトゲを起動する。今ではのめり込んで30万は課金してると思う、もちろん親の金だ。見つからないように財布から万札を抜き取るのは楽ではない(この時だけは徒歩2分のロー〇ンに出かける)。

父親はすでに他界していて、母親ひとりでやっている。起動して、ログインボーナスを受け取る。

「こんにちは!御主人様」この声を聞くと安心する。同級生はみな結婚しているそうだが、俺はこれで十分だ。

気が付けば、もう夜が更けて明るくなってきている。時計をみると4時50分。2回目のお休みタイムといくか。昼飯の時まで寝るとしよう。

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・・・ん・・・? 気が付けば午後2時だった、空調が快適なのか。

いつも通り部屋の前に置いてあるおにぎりを・・・と、?今日はやけに豪華じゃないか。年金の支給日か?

そこにはおいなりが5つ置いてあった。いつもはおにぎり2つなのだが。

いただきマンモス。いつ覚えたのか忘れたが未だに頭から離れない言葉だ。

むしゃむしゃ・・・ なんか苦い・・・。俺が食ったことあるおいなりじゃないぞ・・・これ。

突然、喉の辺りが熱くなった。あつぅい! なんてふざけたことを言っている場合ではない。やばいぞこれ!

汚れた部屋でもがき苦しむ俺が最後に見たのは、老いた母の気味の悪い笑顔であった。

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