「寄生蜂って知ってる?」
「なにそれ?なにそれ?」
「人間の脳に寄生する蜂なんだ」
「うぇええ、なんか気持ちわりいな」
「寄生蜂がな、こう、飛んできて頭蓋骨に卵を植え付けるらしいんだ。」
「へぇー、それでそれで?」
「卵っていうと、何百匹って想像するだろう?でも、その卵にいるのはせいぜい3~4匹の寄生蜂の幼体なんだ。」
「ふぅーん。」
「でな、その幼体は頭蓋骨と脳皮の間をこう這いずり回って、成長していくんだな。」
「うぇええ、気持ちわりぃいな」
「いや、もっと気持ち悪いのはな、その幼虫大きくなってくると、脳皮を食い破って脳そのものを食べ始めるのさ」
「マジか!やべぇじゃん。そうなったらもう宿主は死んじゃうんじゃねぇのか?」
「いやこれが最も凄いんだがな、その幼虫は食った脳の機能を代替するんだよ」
「はぁああ?信じられねぇな、そんなの」
「いや、本当なんだって。だから宿主自身も気づかないうちに、頭の中を支配されてるなんてことが昔は結構あったらしいぜ」
「で、結局最終的にはどうなるの?」
「すべての脳を食い尽くしたら、宿主から飛び立って別の宿主の頭に卵を植え付けるんだって、もちろん元の宿主はそれでお陀仏さ。」
「へぇ、そりゃ怖いな。今の時代に生まれて俺達は良かったな」
「定期健診で、寄生蜂がいたらすぐ見つかるからか?」
「ま、それもそうだが。俺達に棲みついているのは、寄生蜂じゃなくて、共生蜂だからさ」
そう言って、そいつが見せた脇の下には、共生関係にある蜂達が巣をつくり、元気よく出入りしていた。
作者園長
ジャンル的にはナンセンスになるのでしょうか
↓の便乗です。
http://kowabana.jp/stories/29616
心がざわついて、ざわわ様の企画に乗せられました。
「手垢に汚れた届かぬスイッチ」が無いのは、自分の出したタイトルだからではなく、単純に思いつかなかったからです。