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中編6
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獣(ケダモノ)

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周りの友達は子供が出来ただ、結婚するだと大盛り上がりだけど

私(ユカ)は今まで異性と付き合ったことが一度もない。

ただの一度も・・・・

でも負け惜しみとか強がりじゃなく

私は本当に彼氏も欲しくなかったし結婚もしたくなかった。

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安物のヨレヨレTシャツを着て

スーパーで半額になったお惣菜を買いあさり

夜中泣き叫ぶ子供にミルクを与え

必死で育児、家事をしようともそれが当たり前でそれが母親の仕事と

誰からも褒められる事なく、数年後には母親の苦労も知らず

勝手に大きくなったと思い込んで両親に生意気な口をきく子供達。

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これのどこが幸せなの?

私はずっと子供のままでいたい。

料理好きのパパ

いつも明るいママ

そんなパパとママに守られていたい。

それが私の理想だったしパパとママも同じ気持ちのハズと思ってた。

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そんなある日仕事から帰り

いつもの様に楽しい食事をしていると突然

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「ユカちゃん、会社かどこかで良い人いないの?」

穏やかながら真剣な顔で問いかけてくるママ

「えっ?」私が口ごもってると

「もし良かったらお見合いとかしてみない?」

思わずパパの方に視線をやるも

苦笑いを浮かべるだけでママに何も言ってくれないパパ。

何で何も言ってくれないの?

幸せと思ってたのは私だけ?

本当は私の事お荷物とでも思ってたの?

悔しいやら恥ずかしいやら色んな気持ちから思わず食卓を飛び出す私

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「ごめんね。ビックリさせて、でもいつかはママ達も死んじゃうしその時ユカちゃんが一人だけだなんて考えると・・・(涙)」

その日以来、毎日毎日ドアごしから私に喋りかけるママ

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「でもそんな泣くほど私の事モテない女と思ってるの?」

その一生懸命さ必死さが逆に女としてのプライドをも傷つけていった。

「だったら作ってやろうじゃない男の一人や二人!!」

私は半ばやけくそで合コンやら飲み会に参加するようになっていた。

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しかし趣味も面白い話題もない私にとって話せることは家族の話題位で当然盛り上がらない。

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ただそれ以上に私を不愉快にさせたのは意味もなくヘラヘラ気持ち悪い笑顔を見せ

どこがどう面白いのか全く理解できない下品な下ネタの数々

そしてただただ自己満足にすぎない自慢話等

知性の欠片も見せない低能な野獣共に対し、それまでパパとしか話したことのない私にとって恐怖以外の何者でもなかった。

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でも周りを見渡すと

キャッキャッと楽しそうに会話し

こそっと電話交換したり、二人だけの世界になってたり

気付けば私以外はそれぞれがそれぞれで盛り上がってて

私だけが「カヤの外」状態になってるそんな飲み会ばかりになってた。

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そして今日も・・・・

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男:「ユカちゃんってどんな人がタイプ?(笑)」

私:「パパみたいな・・・感じの人が・・・」

男:「今までどんな彼氏と付き合ってたの?」

私:「イヤ別に私は・・・・・」

男:「休みの日は?」

私:「家族と・・・・・・・」

男:「趣味とかあるの?」

私:「・・・・・・・・・・」

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質問が出る度にドンドン黙り込む私。

いつもならここらで男共は他の女の子にターゲット変えいつも通り一人ぼっちになる私なんだけど

今回だけは少し様子が違ってた。

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男:「あのさぁ~ユカちゃん今日何しに来たの?」

私:「・・・・・・・・・・・・」

男:「小っちゃい声でパパ大好きアピールばっかされても困るんだよね~」

私:「・・・・・・・・・・・・」

男:「言っとくけどあんたは別に美人でもなんでもないただのブスだよ!!」

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そして「退屈ならもう帰って良いから!!」と、酔っ払い特有の最低な悪乗りからの「帰れ!!帰れ!!」の大合唱

女友達も「もう可哀想だからやめてあげなよ~」と口ではフォローしてるも明らかに楽しんでる様子だった。

そんなどうしていいかわからない状況の中ただただうつむき涙を堪えてたまさにその時

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「ヤメロー!!」

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今日の飲み会で一番男前で中心的人物だったリョウって男の子からのまさかの一言

リョウ:「お前らのノリを強要するんじゃねえ!女の子イジメて何が楽しいの?」

そして一緒に参加してた女友達に対しても

「友達が困ってんのに一緒に笑ってる君らも最低だね!」

と、メンバー一同を黙らせ

「今日はもう終わり終わり!!」と飲み会をお開きにしてくれたリョウ君からの

「ゴメン」

ママに対する見返しとか意地とかじゃなくその瞬間、私がリョウ君に恋をしたのは言うまでもない。

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「もう一度会いたい!あの時のお礼を言いたい!!」

それからと言うものひょっとしてコンビニとかで偶然会えるかも?

仕事の取引先の社員として実は彼が働いているのかも?

あの角を曲がると偶然彼が・・・等々

あり得ない妄想の毎日で私の頭の中はリョウ君の事で頭がいっぱいいっぱいでもう自分が自分でなくなっていた。

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そんなある日私の携帯に見知らぬ番号からの着信が

もしや?と思い慌てて携帯に出ると

その「もしや」だった

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相手は何とあのリョウ君!!

何でも私の友達から番号を聞いてかけてくれたとの事

しかし緊張と嬉しさで何を話してたかなんて全然覚えてない。

ただただこの時間が永遠に続いて欲しい事だけを考えていた。

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そして携帯を切ると私は泣いていた。

その涙が嬉しい物なのか不安な物なのかさえも整理がつかず

気付くと何年かぶりにママのベッドで寝ている私がいた。

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しかし次の朝ママから

「本当に大丈夫?」

昨日の優しかったママとは一転しどうもリョウ君に不信感を持ってる感じだった。

いくら無口だからって今どきの男の子はそんな直接的に悪口も言わないし、そんな少女漫画見たいに都合よくヒーローなんて登場もしない。

つまりママが言うには余りに話がうますぎるとの事らしい。

それぐらい昨日の私はどうかしてたのだろう。

それでも私は自分の気持ちを抑える事が出来なかった。

騙されても良い、彼女がいても結婚してても良い、とにかくもう一度彼と会いたい!!

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するとここまでずっと黙っていたパパから

「そもそも何でユカなんかを好きになるんだ!」

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私:「どこまで私の事をバカにすれば気が済むの?(涙)」

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その言葉をきっかけに私は家を飛び出しホテルを転々とするようになった。

そしてパパ、ママが行きそうな場所には足を踏み入れず

派手な化粧と服で着飾り今まで出遅れた分を取り返すかの様に夜な夜な遊ぶ様にもなっていた。

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そんな時病院からの電話でママが倒れたと聞かされた。

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家を飛び出した後、家族からの電話は全て着信拒否していたため病院からの電話でその事実を知らされた。

それでもママの事など全く頭にはなく

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「あれ以来何で電話をかけてくれないの?」

考える事はリョウ君の事ばかりで生まれて初めての恋に私の心はムチャクチャになっていた。

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今思えばパパからの「そもそも何でユカなんかを好きになるんだ!」って言葉の意味をあの時もっと深く考えとけば・・・

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数日後、友達の説得で渋々病院に行くとそこにはいつも笑顔で明るいママの姿はなく、うつろな目で寝てるママが・・・

想像してた以上に痩せ細り弱り切ってるママの姿に私は言葉をなくし

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たった一度優しくされただけで

助けてくれた人がたまたまカッコ良かったからってだけで

全部自分の都合の良いように妄想して

結局あれ以来電話もないじゃん。

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私は深呼吸をし震える手でリョウ君に電話をした。

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「プップップッ」

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「お客様がおかけになった電話は・・・」

「・・・・ごめん。ママの言ってた事が正しかった・・・(涙)」

私はなんて馬鹿な事をしてたんだろう

自分が情けないのと後悔とで病室から動けなくなりただただママが回復することを祈っていた。

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また一緒に買い物行こうね。

またお料理教えてね。

パパより美味しく作りたいなぁ

お見合いの相手はどんな人かなぁ?

大粒の涙を流しながら必死でママに喋り続けたその時

うっすら目を開けたママから・・・・

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「ユカ・・・・早く・・逃・げ・て・・・・」

リョウ君が電話で家族の事が大好きな私の事を「好きだ」と告白してくれてた事を今思い出した。

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