「センパイ!!」
「今日はどうしたの?魔法学校の帰り?」
「誰がハーマイオニーなんスか!それよかセンパイ、何さ作ってんだ?」
「サーターアンダギーよ。おやつにはやっぱりコレよね♪」
「オラの地元にゃ、そんな文化はねがったども、サーターアンダギーは好ぎです」
「用事ってサーターアンダギーを食べに?」
「ちげぇますよ!千尋センパイにゃかなわねな……実はレポートを……」
「また?!〆切延ばしてもらうのに頭を下げるのはもうイヤよ?」
「いや、〆切は明日だすけ大丈夫です」
「明日で大丈夫なの?テーマは何?」
「何だかんだ言っても、センパイはオラを助けてくれんだから、ホントに女神様だべ」
「そういうのいいから早くして。アンダギーが焦げちゃう」
「今度のは『妖怪』ですだ」
「妖怪か……なかなか難しいテーマね」
「先生も意地が悪いすよ」
「で?ミシェルさんは何をテーマにしたいの?やっぱり河童?」
「やっぱり河童って語呂がいいなぁ……でも、河童はたくさん出てますからねぇ」
「確かに題材としてはメジャー過ぎてキツいかもね」
「センパイは妖怪を題材にするなら何にしますか?」
「そりゃ、キジムナーさぁ」
「急にウチナーグチが出だ!!」
「沖縄の妖怪と言えば、キジムナーでしょうよ」
「キジムナーって、どんな妖怪なんスか?」
「キジムナーは、ガジュマルの木に棲んでいて、赤い顔の子供みたいな姿をしているって言われてるの」
「ほほぅ」
「キジムナーは基本的には良い子で友好的なんだよ。魚取りがエグいほど上手くて」
「エグいほど上手いって……」
「ただね……距離感が近いんだ。一度、仲良くなると毎日遊びに来るの」
「……何か、そんな人に苦しんでるセンパイが一人いた気が……」
「でも、悪気はないし、富をもたらしてくれる」
「座敷わらしみてぇだな」
「近いかもね!ただ、邪険にすると凄絶な仕返しをされる」
「その辺は人間とおんなじですね」
「そうね。本土の妖怪と明らかに違うのは、キジムナーがとても身近なご近所さんみたいな存在なところだね」
「と、言うと?」
「本土の妖怪は怖いイメージが先行するのが多いけど、キジムナーは漁を手伝ったり、かまどの火を借りに来たりとか、妖術で何かするってことをあまり聞かないのよ」
「隣の家に味噌借りにいくみたいなノリでねスか」
「斬新でしょ?」
「こういうのは斬新って、言うんスかね?」
「妖怪って、子供に戒めを伝えるのが一番の役割なんだと思うの」
「ほぅ」
「もちろん、全部が全部じゃないよ?原因不明の事象を『妖怪のせい』にして納得させるなんてこともあっただろうし」
「全部、妖精の仕業みたいなことスね」
「そう!例えば、夜中に出掛けちゃダメって言うのに、『べとべとさん』が出るぞ!とか、むやみに山に入ると、『ムジナ』に化かされるぞ!とかね」
「得体の知れないヤツなら、説明はできませんからね」
「そうそう!とにかく、訳が分からないモノが出るから止めなさい!!って楽じゃない?」
「そうすると、キジムナーにはどんな戒めが?」
「それは『友達とは仲良くしなさい』ってことだと思うよ。キジムナーは仲良くしてるとイイコトがあるからね」
「友達と仲良く……いい話ですねぇ」
「沖縄の人は大らかだからね……いろいろあったけど、それを気持ちで乗り越えてきた」
「ナンクルナイサー精神ですね」
「まさに『過ぎたるは及ばざるが如し』よ。過去に囚われるより、今を懸命に生きる方がよっぽど生産的だもの」
「強いんですね」
「強くなきゃいけなかったんだよ……沖縄は」
「何だか沖縄が好きになったな!行ったことねぇけど」
「いい所だよ?沖縄は」
「それで、レポートの方は……」
「サーターアンダギーでも食べながら、一緒に考えようか♪」
「チヒムナー!!」
「誰が妖怪よ!」
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妖怪 まとめ
妖怪は、その地域性が生み出した『居ぬモノ』であり、説明できない不可思議な事象に名前を与えることでその理由としたモノや、子供らへ戒めや道徳を教えるための一つのツールとして確立したモノと考えられる。
作者ろっこめ
以前、書いたまま放…じゃなかった、書きっぱなしになっていたモノを投稿させていただき、スッキリしたいと思います。
これで気兼ねなく休めるぅ!
( ^∀^)~♪
何やかやで70作品を突破してましたけど、そんなに書いてたことに我が事ながらビックリ!!
そこで、70作品突破記念作品として、『A子シリーズ』を執筆いたします。
大長編は無理ですが、それなりにボリューミーにしたいと思いますので、今しばらくお待ちください。