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美「ほら希美、このドア触ってみて、凄く熱い。磨りガラスでトイレの中の様子は見えないけど、この明るさは明らかに電気のせいじゃない。そう、これは太陽の光り…
まるでこの中だけがお昼。しかも夏のお昼間。とても信じられないし、考えるだけでも馬鹿馬鹿しいくらいの異常事態だけれど、現状ここだけが違う世界だとしか思えないわ」
希「秋田君が言ってた、トイレの中が別空間だって話。やっぱり本当だったのかな…」
亮「……うう」
美「りょ、亮輔君。どうしたの?」
亮「………… 」
美「気分が悪い?すぐに帰るからもう少しだけ頑張って!」
亮「 …あは、あはははは!!!」
希「どうしたの亮輔君?!」
亮「… あはははは。僕は友達だからね、大丈夫だよ。あはははははは!!」
ガラガラガラ
美「ちょっ、ちょっとだめだよ亮輔君!そこは開けちゃだめ」
亮「あはははは。もうおま@が#おまえ%わる&ひひゃひひゃひ!!!」
美「だめーー!亮輔君待って!そこに入っちゃだめ!亮輔君!!」
希「亮輔くーーん!!」
ガラガラガラ、ピシャン
希「え、えっ?どういう事? 亮輔君あんなにトイレ怖がってたのに、なんで一人で中に入っちゃったの?!」
美「りょ、亮輔君!!ここを開けて!早く!開けなさい!開けてーー!」
ガタガタガタガタ
美「はあはあ、だめ!これ全然開っかない!なんなの?これどうなってんのよ! 」
希「亮輔君の目がすごく怖かったよー、美穂、亮輔君て何かに取り憑かれちゃったんじゃないの?もうやだ!帰りたい… 」
美「 本当信じらんない。こんな事ってあるのかしら?なんか悪い夢でも見てるみたい」
希「ど、どうしよう美穂」
美「亮輔君置いてこのまま帰る訳にもいかないし… よし、しょうがない、私も入ってみる! 」
希「えっ?何言ってるのよ美穂。入ってみるってドア開かないじゃない! 」
ガタガタガタ
美「この際、もう力づくで壊すしかないでしょ。でも、希美は入っちゃだめだかんね、絶対に。
そのかわり、もし私が入ってから10分たっても何も起きなかったり、出て来なかったりしたら、その時はすぐに警察を呼びに行ってちょうだい。お願いよ、希美! 」
希「やめて、一人にしないで美穂ー。ねえ絶対に危ないし、私たちだけで連れて帰るなんて無理だよー、行かないでお願い!」
美「………… 」
希「……ぐす… 」
…
優「やめろ美穂。そのドアは絶対に壊しちゃだめだ」
希「あ!秋田君?! 」
美「 やっと帰ってきたか」
優「 美穂。希美ちゃんの言う通り、そこには入っちゃだめだ。マジで帰って来れなくなんぞ!」
美「はあ、ちょっとあんた今までどこに隠れてたのよ。あんたがいない間に亮輔君がこの中に入っちゃったんだよ?どうすんの? 」
優「ああ、見てたよ。亮輔は多分… もう無理だ。
さっきも言ったようにここに入ったら最後、二度と出る事はできねぇんだ」
希「どうして…、ねえ秋田くん。
どうして亮輔君は人が変わったようになっちゃったの?急に笑いだしたりして…」
優「引き寄せられたんだと思う。
噂ではこの中には引き寄せられた人間しか入れねぇって話なんだ。恐らく亮輔は中のヤツに魅入られたんだろう。
希美ちゃんも見ただろ?亮輔は自分の意志に関係無く、操作されてその中に引きづり込まれたんだよ」
ダダダダダ
バチーン!
優「ってー!何すんだよ!!」
美「心底見損なったわ優人!
よくこんな危ない場所に私達を連れてこれたわね!ほとほと愛想が尽きたわよ!亮輔君にもしもの事があったら…
私… 私、あんたを一生恨むからね!」
優「…う 」
美「とにかく私は何があっても亮輔君を連れ出しに行く。止めたって無駄よ!
だけど、だけど希美だけは頼んだわよ。その子だけは絶対に無事に帰してあげてちょうだい! 」
優「…ば、バッカやろー。
だめだよ行っちゃ。お前は行っちゃだめなんだよ。
…死ぬのは亮輔だけでいいんだ」
美「…あ、呆れた。死ぬのは亮輔君だけでいいですって?
ねえ、あんた今自分で何言ってるか分かってんの?じゃあ最初から亮輔君を消すつもりでここへ来たっていう事なの?もうこれ以上私をガッカリさせないでよ!」
優「お、俺だって半信半疑だったさ…まさか噂がマジだったなんて思わねえしさ。
き、昨日来た時には何にも起きなかったしよ…」
美「は、昨日?
あんた昨日もここに来てたの? ほんとバッカじゃないの? もう訳わかんないんだけど。
はあ… しょうがない、こうなったらあんたが行きなさい」
優「…… え?」
美「だからあんたが亮輔君連れて来なさいっての!あんたのせいなんだからあんたが責任持って助けて来んのがスジってもんでしょうが」
優「あー無理!無理!
俺絶対こんな所入りたくねぇし!」
美「あっそう!?
もし行かなかったらあんたとは何があっても一生口聞かないからね!それでもいいのね?」
優「一生って、 …マジかよ…
えっ?俺一人で?」
美「あたりめえだろ。早く行けよ馬鹿優人!」
優「 ……… 」
美「もうトロイわね!泣くんなら初めっからこんな馬鹿な事するんじゃないわよ!早く入りなさいよ根性無し!」
優「 わ、分かったよ!ぐす…
でもこれどうやって壊すんだよ? 簡単には壊れねぇぞ? 」
ガラガラガラ
優「 あ、あれ?普通に開いたんですけど…?
ははは、なんだこれ? 」
希「……!!!」
美「…ゆ、ゆ、優人。…ま、前、前見てー!!」
希「ひ、ひえ…」
優「 えっ、前? 」
『 おにいちゃんモ、ぼくとあそんでくれル?』
優「 う、う、うわー!!なんだお前!!
や、やめろ!放せ!! う、うわ!た、助けて!助けてええええええええ!!! 」
ガラガラガラ
ビシャン!!
「「 ぎゃーーー!!! 」」
美「優人!!」
希「秋田君!!」
希「な、何?今の男の子だれ?! 」
美「いやー!返して!!優人を返せこのヤロー!! 」
ガタガタガタガタ
美「 また開かないよこれ!
どうなってんのよ、開けよ!開け!」
ガタガタガタガタ
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十分後
希「…ぐす。
ねえ美穂。さっきの男の子はなんなの? 一瞬で秋田君の事引きづり込んじゃったし。
すっごく青白い顔してたよね?あれってガチの幽霊じゃん。典型的なやつじゃん!
私、初めてモロに見ちゃったし。どうすんの?次は私達の番なの?もう嫌っ、本当におうち帰りたい!! 」
美「はあ、はあ、優人ー!!いたら返事しなさい!!」
ガタガタガタガタ
美「 だめだわ。やっぱりビクともしない」
希「美穂ー、もしかしてこれって超ヤバくない? ねえ、こういう時ってどうすんの?
警察に相談?それとも探偵事務所?
いや、霊能者かな?
まさかあの古畑?右京の方が仕事が早いかしら?
あっ、淳二?霊視でなんとか。いやいや大槻教授も捨てがたいかも。 ぶつぶつ… 」
美「ちょ、希美?
大丈夫よね?あんたまでおかしくなんないでよ!
やっぱまずは警察なんじゃない?どう考えても私達じゃ解決できそうにないしね…
希美、あんたの電話からすぐ警察に電話して頂戴!」
希「………ひっ」
美「ど、どうしたの?希美」
希「み、美穂。
あ… あれは何?」
美「ど、どうしたのよ。なんかいるの? ど、どこよ? 」
希「だ、誰かあそこにいる。ほら…
ほらそこー!!美穂の後ろ!服… あ、赤い服の女が這って来てる!!!
怖いよ…怖いよぉ… 」
バタ!
美「ちょっと大丈夫希美!しっかりして!ちょっと起きなさいよ希美ーー!!」
ズル
美「…なに?」
ズル ズル
美「や、やだ!誰よあんた!?いや、来ないで! や、やめて! 嫌っ!いや!イヤーー!! 」
『 おおおおおお… おまえもか…』
美「 ぎゃーーーああああ!!! 」
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数日後。
秋田優人宅の一階和室から、祖母光代の遺体が発見された。
既に死後一カ月が経過しており、遺体は腐敗が進んでいた。長年に渡り何らかの暴行を受けたと見られる痕跡が見つかったものの、胃の中から何も出なかった事から死因は衰弱による餓死とされた。
一方で、昏睡常態が続いていた吉岡美穂と永田希美は、一命を取り留め意識を取り戻したものの、事件前、一週間ほどの記憶を失っていた。
秋田優人。石原亮輔。
両名の安否は不明。現在も捜索が続いている。
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⑤へ続く
作者ロビンⓂ︎
まだまだ続くよー。残念!…ひ…
幼馴染み⑤
http://kowabana.jp/stories/30016
登場人物
秋田優人
吉岡美穂と幼馴染みの高校生。
中学生の時に両親を亡くし、以後、祖母と二人暮らし。
吉岡美穂
美人で優等生だが、絵が下手。
家で猫を10匹飼っている。
親友は永田希美。
永田希美
天真爛漫で何事にも興味津々な性格。
官僚の父を持つお嬢様。
趣味はヌイグルミ集め。
川口拓海
秋田優人のクラスメート。
真面目で読書家。
オカルトサークルの会長である兄の影響で、霊能者の稲河淳太と交流を持つ。
石原亮輔
秋田優人や川口拓海と同級生で、陸上部主将のスポーツマン。
優しくてイケメンだが、体育会系に有りがちな「どこか間抜けな一面」を持っている。
稲河淳太
肩書きは自らの体験談を語る初老の怪談師だが、確かなその実力から霊能者としても活躍している。
怪談を通じて川口拓海の兄と親交がある。
金と名誉に異常な執着がある一面も。
北野真子
稲河淳太の助手。
36歳、バツイチ子無し。
学生時代に火の玉を見て開花し、霊界に興味を持つ。