実は俺には、この物件に棲む女が見えている。
見えているのに、見えていないように芝居をするのは至難の業だった。
わざとらしく、「ここに決めようかなあ」などと、独り言を言ったりして。
その女は、露骨に嫌な顔をしたことも知っている。
恐らく、首吊りだろう。
長く伸びた首に、うっ血した紫色の顔。
デロリと出た舌を見れば、どんな死に様だったかを物語っている。
俺には霊感がある。
この家は、不動産屋は隠しているが、事故物件だということは承知している。
だからこそ、俺はこの物件に賭けているのだ。
この俺の背中に乗っている、頭が陥没して、目が飛び出した女を何とかしてくれるのではないかと。
この女は、俺が殺した。
ストーカーだった。あまりのしつこさに、俺はついかっとなって、バットで頭を殴打すると、頭は陥没、目玉は飛び出してしまった。
女の死体は、うまく山中に埋めて隠してはいるが、この女、相当にしつこい。
死んでなお、俺につきまとうのだ。
お払いと称して、他人に高い祈祷料をぼったくられたこともあったが、皆、偽の霊能者。
俺は考えた、毒には毒を、霊には霊を。
この女は俺に執着しているから、霊媒体質の俺に近寄る霊、特に女は全て蹴散らしてきた。
百戦錬磨。
そして、俺は、この女に勝てそうな、非常にこの家に執着を持っている、とてつもなくパワーを感じる女の霊に出会うことができたのだ。
さあ、来い。
どうせ、俺とこの女を全力で追い出すために、何か仕掛けてくるのだろう?
頼む、このストーカー女を何とかしてくれ。
俺にとり憑いてもいい。
この女よりは、お前のほうがまだマシだからな。
作者よもつひらさか
ロビン様、ビビっと来ちゃいました。久しぶりに。