地元の知り合いから聞いた話。
今から三十年ほど前、和歌山県の南部川村というところでの話。
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谷口というお爺さんが、夜遅くに川の近くを歩いて帰っていると、
「浴びよぉらよ(浴びようよ)、浴びよぉらよ」という声がした。
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声の聞こえた方はちょうど淵になっていて、谷口さんは上から覗いてみたが何もなかった。
しばらく行くと、また同じ声が今度は河岸の方から聞こえた。
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行ってみると、岸から伸びた木の枝に引っかかって、男の水死体がプカプカ浮いていたそうだ。
急いで警察に届けたそうだが、それっきりあの声が聞こえることはなかったという。
作者岩坂トオル