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中編5
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微笑む女

これは、今から遡って12年前から続いてきた話です

当時僕は、いわゆるヤンチャな中学生でした

毎日授業をサボって体育館の裏で仲間と談笑していました

そんなある日、いつものようにみんなでワイワイ騒いでいたとき、ふと視線を感じ体育館の2階の窓を見上げました

そこには、一人の女性がいました

赤いタートルネックのセーターにジーンズ、髪は肩にかかるくらいの黒髪、優しく微笑んでいました

パッと見てとても綺麗な人だなぁと思ったのを今でも覚えています

ボーッと見つめていると

友人「なに見てんだぁ?」

僕「いや。2階からこっち見てる女がいるんだよ、あんな美人な先生うちにいたか?」

そういうと友人も2階を見て

「誰もいねぇじゃんか」

2階に目をやると、もう誰もいませんでした

その夜、いつもなら夜更かしをするのですが、その日は凄く眠く早々に眠ってしまいました

部屋に気配を感じ目が覚めました

そこに、彼女がいたのです、昼間体育館裏で見た綺麗な女性

その瞬間、生まれて初めて金縛りにあいました

恐怖で目を閉じたいのに閉じれません

目を離したらなにをされるかわからない

しかし彼女はただ、そこに立ち僕を見下ろしていました

あのときと同じ、優しく微笑んで

僕の恐怖は次第に薄らいでいきました

みつめあう時間がどれ程だったかはわかりませんが、すごく長く感じられました

ふいに彼女が顔を近づけようとしたので、思わず目を閉じてしまい

そこで金縛りは解け、彼女もいなくなっていました

それからは、彼女が姿を表すこともなく、僕は高校生になり、そのこともすっかりわすれていました

高校生活にもなれた頃、初めて恋人ができました

僕から告白し、付き合い始めたその夜

彼女が再び現れました

枕元にたって僕を見下ろして

そのときの微笑みは、なぜかとても冷たい

氷のようでした

動けない僕に手を伸ばし左の肩を強く握られました

その手は服の上からもわかるほどにつめたかった

その瞬間、彼女は消えて金縛りも解けました

それから2年間の間に、僕は左手首の骨折、左足太腿の肉離れ、自動車との接触事故により、左膝脱臼と左半身に立て続けに怪我を負いました

家族も、あまりに怪我が多いのでなにかとりついてるんじゃないかと茶化しぎみに言ってきたので、これまで体験したことを初めて打ち明けました

父「近くに有名な寺がある、今夜にでも御払いにいこう」

そう提案し、僕もただ事ではないと感じていたので御払いをしてもらうことにしました

寺への道中、僕の体はとても重く、特に左の二の腕は下側に引っ張られるような感覚がずっと続きました

寺につくと坊さんに今までの経緯を一通り話しました。

こういうときって坊さんは

「その女がとりついてる!早く払わなければ、命に関わる」的なことを言うものだとおもっていたのですが、実際は

坊さん「わかりました、ではばじめましょう」

と、やけにすんなり始まったのに違和感を感じたのを覚えています

本道に通され、

坊さん「それでは、始めますが、御払いの間決して声を出さないように、可能な限り体も動かさないように」

と念を押されました

坊さんがお経を読み始めた頃、僕の左手はどんどんおもくなり

坊さんがなにか、丸い金色の紙?絵が書いてありました

それを頭の上からパラパラと落としたとき、二の腕を凄い力で握られている感覚に教われました

思わず声が出そうになりましたが、坊さんに言われたこともあり、必死に耐えました

御払いが終わる頃には、腕の痛みも、重さも無くなっていました

坊さん「以上でございます、最後にこれを」

と、御札と先ほど頭の上から落とした金色の丸い紙を渡されました

僕「ありがとうございました、それで、僕にはなにか憑いていたんですか?」

坊さん「それはお答えできません、ただ、しっかり御払いはいたしました、その御札は家の見えない場所に大切に保管し、その金色の紙はお財布や、カバンなどの普段身につける物のなかに納めていつも持っていてください」

と言われ、僕はこれが答えなのだと思いました

僕にはなにか、あの女性が憑いていたのだとハッキリと悟りました

帰りの道のりは嘘のように体が軽かったのを覚えています

これで終わったのだと、解放されたのだと

それからは、怪我もなく、高校も卒業し地元を離れ就職し、数年が経ちました

そして昨年の12月、結婚もいたしました

まさに順風満帆っといった具合に

ある夜のことです

僕は妻とベッドで眠ってしまいました

物音で目が覚めました

玄関の閉まる音です、その日、鍵をかけ忘れたことを思いだし、泥棒か変質者でも入ってきたのかと思い、体を起こそうとした瞬間、またあの感覚

金縛り、

入ってきたのが、泥棒でも変質者でもないことを瞬時に理解しました

「ちゃんと御払もしてもらった!あれからなにもなかったのになんで今さら!!」

と頭のなかで叫び、気づきました

地元を離れるとき、あの御札をおいてきていました

「だから居場所がバレたのか!?」

そんなことを考えていると寝室にそれは入ってきました

なにか喚きながら、凄まじい形相で

その表情は今までとはまるで別人、服装で辛うじて彼女とわかりました

僕は妻をなんとか起こそうと、声を出そうとしますが、やはり声は出ず、それは徐々に近づいてきます

なにを喚いているかようやく聞き取れました

彼女はこういっていたのです

「見つけた、見つけた!!どうしてぇどうしてぇ!!!」

と繰り返し叫んでいました

彼女はベッドの真横まできました

そこで彼女は動きを止めました

妻を見下ろしています

すると、僕の方を見て、さっきまでの形相が嘘のような、あの体育館裏で見たときの優しい笑顔を僕に向け、すーと消えて、同時に金縛りも解けました

混乱のなか、妻を起こし、今誰かいなかったかとか、聞いても意味のないことをさんざん質問していました

もちろん妻はなにも見ていないと、怖がらせるなと怒られてしまいました

その数日後のことです

妻の妊娠がわかりました

あの時、彼女はこのことがわかったのでしょうか?

だから、なにもせずに消えていったのか

それとも別の理由なのかわかりませんが

最後に見せたあの微笑みは、確かに最初に見たあの優しい微笑みだった

あれから数ヶ月なにも起こっていません

ただ、産まれて来る子は女の子です

なにか、因縁を感じてしまいます

Concrete
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