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中編4
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我儘

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トイレの花子さんや闇子さんやさっちゃんの4番目の歌詞など怖い話は数多くある。私には霊感もないし、そういった類の話ははなから信じていない。何かを壊すのは器物損壊になるからやらないし、心霊スポットに侵入するのも交通費がかかる。だいたい夜中に起きてわざわざなにかを実行したり、どこかに行くのならその時間は寝るかそうでなければ勉強するかしていた方がいいに決まって

る。

全く私は可愛くない考えの生徒だったが、皆の前では怖い話を聞くときは感慨深いような顔つきをしてしみじみと怖いねぇと言っている。

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中学2年生の夏休み。

私は塾に、ピアノに忙しかった。でも、予定があるのは心地よい。たまに友達と遊べば満足だし、旅行も興味がない。

塾では予習をメインに勉強して、余裕のある受験を迎える準備をしている。成績は学年トップをキープできている。ピアノは規模の広いコンクールで優勝もして、私は充実した毎日を過ごしていた。

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「努力をしない者は大嫌い」

コレが私の中で大きかった。

世の中には強くなりたいと言いながら練習に手を抜いたり、痩せたいと言いながらお菓子を食べすぎたりする人がいる。

貧しいのなら、もっと努力すればいいのに…そして投げ出せばいいのに…。

愚痴ばかり吐くのは醜い。

他人のせいにするのは、もっと、醜い。

世の中のせい?誰かのせい?

正直言ってそんなことを言ってる人は負け組だと感じている。

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ある日の晩、私は夜中に尿意で目を覚ました。時計を一瞥したところ、2時を少し過ぎたところだった。

私はトイレに入った。

便座に座り、目線を落としていると、青白い裸足が前にあった。

私は驚き、目線を恐る恐る上げると、ややふくよかで忌々しい目つきをした金髪の女性がいた。

覇気は感じられず、生きている者とは思えなかったが、想像していた幽霊像と全く異なっているので動揺もしていた。

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「お前は恵まれている、憎い…憎い…憎い………」

ブツブツと女は呟き始め、

「ァァァァァァア」と金切り声をあげた。

そんな声を出したならとうに両親は気づくであろうに、全く両親は気づいていないところを察すると、認めたくないが、幽霊の類いなのだろう。

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「お前を呪い殺してやる…」と言いながら手を私に向かって伸ばしてきた。

私は苛立ちを隠せなかった。

「なんなの?恵まれてるからって私を呪い殺すなんて道理に合わない!いい?努力しないで他人を怨むのはね、何の得にもならないし、生産性ないこと。そうやって死んでも愚痴ばかり吐いて理不尽に当たり散らして人を殺してるの?それでアンタが賢くなったり、運動できるようになったり、尊敬されたり、美しくなったりした?

…そんなのは馬鹿がやることだよ」

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女は、「努力したってどうにもならないことだってある…」と小さい声で言った。

「わかった、何か貴方は頑張って、どうにもならなかったとして、私を呪い殺す理由になる?」

幽霊は苦しそうにうなりながら消えていった。

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そうして月日が流れ、私は志望校に無事合格し、華やかな高校生生活を満喫し、大学受験も難なく終えた。

ピアノも相変わらず続け、トップの成績を保つことができた。

友人とショッピングをした帰り、友人と別れたところで私は見覚えのある顔立ちの女性を見た。

向かいから歩いてくる…。

(あの人…)

かなり痩せて、落ち着いた茶色の髪色になっているが、間違いなく、あのときの女だ。

(死んだ人じゃなかったの…)

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女性はぎこちなく会釈した。

「あのとき…、苦しかった…あのとき…たしかに貴方は正しかったかもしれない…、けれど、貴方の当たり前だと思っている世界は他人とは違うことだってあるから…

私も我儘でした。

でも、貴方の当たり前を押し付けて、それができない人を見下しているのは、むしろ、貴方の我儘でもある。」

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なんとも言えない息苦しさを覚えた。

口の中がいやに乾燥する。無理やりに唾をつくって飲み込んだ。

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しばらく私は呆然とその場に立ち尽くしていた。

私は、でも、真人間で、正しい、ずっと、正解し続けてきた。

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思えば、私は「幽霊の類いは信じない」はずだったのにあの女の登場で翻ってしまったし、私は「努力家で正しい」はずだったのにあの女のせいで否定されてしまった。

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私は………

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私は、立ち去っていく女の首を絞めた。

これ以上強い力が出せるものかと思った。

そして…

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とある病院にて、医師がある女の母親に言った。

「…〇〇さんは女子大生に首を絞められて以来、度重なるフラッシュバックで過食を繰り返し、精神的にも不安定な状態です。何かあれば叫んでしまったり…。

今は通院レベルですが、髪の毛を染めたり、ピアスを開けたり、いきなりのことでしたからご自身への強い嫌悪があり、変身願望かと…」

ある女の母親は涙を流した。

「…あの子は、私の元夫にも…暴力を振るわれていて、苦労をかけたのに…本当に…本当に……」

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「ァァァァァァァア」

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Concrete
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