酷く蒸し暑い夜のある日。
私は真夜中に、ふと目が覚めました。
続いて、もあっとした蒸し暑さと、汗で肌に張り付いた衣服の不快感に襲われました。
「暑い」
軽く呻きながら、エアコンのリモコンを探し、
「ピッ」
という音と共に、エアコンの作動音が響き、やがて、涼しい風が部屋に流れ出しました。
地獄のように暑かった部屋が、数分で天国に様変わりする事を、肌で感じながら、私は再び眠りに就こうとしていました。
仰向け寝て、両手をお腹の辺りで組んでいた私は、睡魔に誘われつつ、横向きに寝ようと、組んでいた手を離しました。
そして片方の手を、横向きで寝る、自分の顔前辺りにもってくる為、枕の横の位置に置いたとき、
「ペチッ」
という音が響きました。
「ん?」
と、声には出さなかったものの、私はすぐに不思議に思いました。
今鳴った音もそうですが、置いてある手が枕よりも高い位置にある事。
そして、手に感じる布団などの布ではない感触。
人の肌のようにスベスベしているが、氷のように冷たい感触と、細長い何かが私の指に絡まる感触。
私は、眠りに向かい始めていた意識を再び起こし、重たい瞼を開けました。
ぼんやりと霞む眼前に、何かがある事は分かりました。
その何かに自分の片方の手が乗っている事も分かりました。
「寝る前に何か置いたかな」
と考えながら、霞む視界が次第に、はっきりと見えだした頃、
「ひっ」
と言う短い悲鳴と共に、私は飛び起きました。
理由は、目の前にいた何かの正体が分かったから。
私の隣にいたものは、女性の顔でした。
蒼白い顔に、かっと見開かれた両目、これでもかと開かれた口、長い黒髪が特徴的な女性の顔が、私を見ていました。
恐怖で震える私を、どれくらい見ていたのか。
満足したのか、女性の顔に恍惚とした笑みが浮かびました。
そして、笑みを浮かばせながら、ゆっくりと後ろへ傾いでいきました。
女性の顔が半分も回らない内に、ベッドの端に顔は行き、やがて、ふと視界から消えた後、
「ゴトン」
という、鈍い音が響きました。
暫く、恐怖で動かなかった身体を、なんとか動かし、ベッドの端から下を見てみましたが、女性の顔は、どこにも居ませんでした。
作者セラ
暑苦しく寝づらい日に思い出した、体験話を書いてみました。
毎回ですが、誤字、脱字あったらごめんなさいm(__)m