高速で群馬と長野の境目辺りの店に納品に行った時のことだ。
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確かお盆が近い今頃の時期だった
店に着きいつも通り納品の準備をし台車を転がした。
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店から少し離れた場所に車を止めたのと
駐車場が上り坂になっていたこともあり
店の様子が普段と違うことに気付いたのは
大分近づいてからだった。
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店の外観がおかしい。
コンビニエンスストアの見慣れた外観が
妙なモザイクが掛かったような見た目に変わっていた。
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更に近づいて理解したと同時に寒気を覚えた。
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虫である。
一番多かったのは亀虫
その他は色々・・・
見たことないような大きさの
カゲロウのような虫
セミ、蛾
そんな虫達に店の外観がぼやけて見えるほどだったのは鮮明に覚えている。
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店が峠の国道沿いにあり、店の裏は
崖で下には川が流れている。
深夜ともなると周囲に灯りはこの店しかなく
虫が集中してしまうようだ。
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虫に耐性がある私でもあの数はドン引きした。
店内も悲惨で
客に踏み潰された無数の骸が通路を埋め
台車を転がすと押し手に伝わる嫌な感触は忘れようにも忘れることは出来無いだろう・・・・
この光景はこのコースを離れるまで
毎年繰り返された。
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一先ず納品を終え
車に戻り一息着く・・・
次の店まで約10kmほど距離がある上に
暗く細い山道のアップダウンが続く為
荷物が多いと気を使う。
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ただ、その日は何故かいつもより夜の闇が深いような感じだったのを覚えている。
毎日深夜に走る同じ道でも日によって
見た目や様子は異なるもので、
その日はいつもより暗く、ヘッドライトの届く範囲が狭く感じた。
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いつもより見えづらい道
道は細いが民家はポツリポツリとある
時間的に灯りのついた家は無く
私の車のヘッドライトのみがカーブの度に
右に左に揺れていただろう。
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そんな道の先に
人が歩いているのが見えた。
こんな時間に人が歩いているのは
多分この時初めてだったと思う。
今考えると、ヘッドライトが照らすよりも先の人影を
普段より深い闇の中よく見付けられたと思う。
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人影が近づいて来るにつれ
その姿に唖然とする
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背後を見せるその人は
おそらく老婆
ずんぐりと猫背でうなだれぎみで
薄いピンクのジャージを
上下身につけている。
今時のナイロン地の物ではなく
もっと古い物
元はもっと鮮明なピンクの色をしていただろうそのジャージは薄汚れ色褪せていたのだろう。
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ヘッドライトに照らし出された
後ろ髪は長く白髪混じりで
全く手入れはしていない
そんな印象を見たものに与える程に
荒れた残バラ髪のごま塩色のロングヘア
明らかに異様。
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車が近づいて来たことに全く気付いていないようなので
徐行しつつ横を通り抜ける際に
顔を見てしまったことを後悔した。
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深い無数のシワの刻まれた顔は
目、鼻、口がどこに有るのか分からないほどに深い。
もしかしたら無いのかも・・・
そう初見で判断できるほどに異様な顔
単なる徘徊老人とは明らかに違うことは
瞬間で見分けがつく。
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ヤバイ!
と若干体が強ばった。
ドア越しに向こうの存在を認識しつつ
道が狭い為、車を加速する事も出来ず
スーッと横を通り抜けると
少し落ち着き
今出会った者をサイドミラーで確認したが、もう闇の中に消えていた。
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毎日使うこの道だから
その日出会った物が普通ではないことは
よく分かる。
その日以降見たことがない。
徘徊老人だって見たことがない。
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この出来事があって以降
私はこの仕事を続ける限りこういったことにも注意を払うことを心がけるようになりました。
作者ニクガスキー
私が初めてハッキリとおかしいと思う出来事でした。
件の店は今は閉店したそうです。
前任者が見える人だったので、コースを引き継ぐ際に注意されたことがあって
「高速下りて右に曲がり下り坂を下った突き当たりの信号は気を付けて」と
元々古戦場だったらしく高速の橋脚が目の前に現れるのですが、その
根元辺りに良くない物が溜まってるとのことでした。
私は見えないので全くそこには反応しなかったのでしが、この婆さんに関しては実体もハッキリと見えてましたが、異様さが際立っていたので忘れられません。
前任者にこの件を話したら
宵闇の中にハッキリと認識出来た段階で普通じゃないって言ってました。