【重要なお知らせ】「怖話」サービス終了のご案内

県境の店と山道での出来事

中編3
  • 表示切替
  • 使い方

県境の店と山道での出来事

高速で群馬と長野の境目辺りの店に納品に行った時のことだ。

nextpage

確かお盆が近い今頃の時期だった

店に着きいつも通り納品の準備をし台車を転がした。

nextpage

店から少し離れた場所に車を止めたのと

駐車場が上り坂になっていたこともあり

店の様子が普段と違うことに気付いたのは

大分近づいてからだった。

nextpage

店の外観がおかしい。

コンビニエンスストアの見慣れた外観が

妙なモザイクが掛かったような見た目に変わっていた。

nextpage

更に近づいて理解したと同時に寒気を覚えた。

nextpage

虫である。

一番多かったのは亀虫

その他は色々・・・

見たことないような大きさの

カゲロウのような虫

セミ、蛾

そんな虫達に店の外観がぼやけて見えるほどだったのは鮮明に覚えている。

nextpage

店が峠の国道沿いにあり、店の裏は

崖で下には川が流れている。

深夜ともなると周囲に灯りはこの店しかなく

虫が集中してしまうようだ。

nextpage

虫に耐性がある私でもあの数はドン引きした。

店内も悲惨で

客に踏み潰された無数の骸が通路を埋め

台車を転がすと押し手に伝わる嫌な感触は忘れようにも忘れることは出来無いだろう・・・・

この光景はこのコースを離れるまで

毎年繰り返された。

nextpage

一先ず納品を終え

車に戻り一息着く・・・

次の店まで約10kmほど距離がある上に

暗く細い山道のアップダウンが続く為

荷物が多いと気を使う。

nextpage

ただ、その日は何故かいつもより夜の闇が深いような感じだったのを覚えている。

毎日深夜に走る同じ道でも日によって

見た目や様子は異なるもので、

その日はいつもより暗く、ヘッドライトの届く範囲が狭く感じた。

nextpage

いつもより見えづらい道

道は細いが民家はポツリポツリとある

時間的に灯りのついた家は無く

私の車のヘッドライトのみがカーブの度に

右に左に揺れていただろう。

nextpage

そんな道の先に

人が歩いているのが見えた。

こんな時間に人が歩いているのは

多分この時初めてだったと思う。

今考えると、ヘッドライトが照らすよりも先の人影を

普段より深い闇の中よく見付けられたと思う。

nextpage

人影が近づいて来るにつれ

その姿に唖然とする

nextpage

背後を見せるその人は

おそらく老婆

ずんぐりと猫背でうなだれぎみで

薄いピンクのジャージを

上下身につけている。

今時のナイロン地の物ではなく

もっと古い物

元はもっと鮮明なピンクの色をしていただろうそのジャージは薄汚れ色褪せていたのだろう。

nextpage

ヘッドライトに照らし出された

後ろ髪は長く白髪混じりで

全く手入れはしていない

そんな印象を見たものに与える程に

荒れた残バラ髪のごま塩色のロングヘア

明らかに異様。

nextpage

車が近づいて来たことに全く気付いていないようなので

徐行しつつ横を通り抜ける際に

顔を見てしまったことを後悔した。

nextpage

深い無数のシワの刻まれた顔は

目、鼻、口がどこに有るのか分からないほどに深い。

もしかしたら無いのかも・・・

そう初見で判断できるほどに異様な顔

単なる徘徊老人とは明らかに違うことは

瞬間で見分けがつく。

nextpage

ヤバイ!

と若干体が強ばった。

ドア越しに向こうの存在を認識しつつ

道が狭い為、車を加速する事も出来ず

スーッと横を通り抜けると

少し落ち着き

今出会った者をサイドミラーで確認したが、もう闇の中に消えていた。

nextpage

毎日使うこの道だから

その日出会った物が普通ではないことは

よく分かる。

その日以降見たことがない。

徘徊老人だって見たことがない。

nextpage

この出来事があって以降

私はこの仕事を続ける限りこういったことにも注意を払うことを心がけるようになりました。

Concrete
コメント怖い
0
5
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ