人形の森 X-完
バジリスクが苔た地面に横たわると
優しい小さな声で。
「あとは頼みました」
バーキン博士は涙を必死に堪え解毒薬を作ろうとするが、アイボリーはバーキン博士を止める。
アーロンは二つの卵を抱えバジリスクの目の前に立つ。
「この子達に何か言い残したことはあるか?」
バジリスクは卵を見つめ
「ちゃんとご飯を食べなさい、それから友達も作りなさい…それから…それから…」
バジリスクは静かに涙を流し息を引き取った。
母としての愛は種族関係なく深いものである。
バジリスクが息を引き取るのと同時にアーロンの腕の中で2匹のバジリスクの子供が孵化した。
2匹のバジリスクはアーロンの顔をジッと見つめ
可愛らしい鳴き声で「ガォ」と鳴いた。
バーキン博士は涙ぐんだ瞳で小さな二つの命に希望を感じ取った。
その時、冷たい風とナイフを突きつけられているような殺気が辺りから漂い始める。
レイモンド達の背後から冷たく薄っすら笑い声で
「おいおい…まさか魔人ネケンがやられるとはな…」
死神を彷彿とさせる衣服を身に纏う二人の人物
巨大な剣を背負った人物が前に出る
「そんな怖い顔をするな。お前達に危害を加えようなんてこれっぽっちも思っちゃいねーよ」
レイモンドは、その後ろにいる小柄な男から感じる不気味なオーラを感じていた。
「その後ろにいる奴からは殺気しか感じないが?」
「あぁ?こいつか?こいつは立ってはいるが、休眠状態に入ってる。俺の気配を感じ取って付いてきているだけだ、安心しろ。」
アイボリーはバーキン博士を庇いながら質問する
「その紋章、髑髏星だな?」
剣を背負った男は頷きながら
「あぁ、俺はヒース。こっちはヴィシャス」
ヒースは腰に手を当てバジリスクを見る
「魔人ネケンから聞いたか?バジリスクに愛する者を奪われたって話を」
アーロンは2匹のバジリスクを抱えたまま
「あぁ…復讐すると言っていた」
「それがな実はバジリスクにではなく、ヒドラに殺されたんだ」
哀れな男よ…復讐の為にバジリスクを殺そうと
与えられた合成魔獣ヒドラと共にバジリスクを探している間、本当の仇の相手はすぐ隣に居たんだからな…
この森が猛毒に塗れ、人形の森と呼ばれるようになったのは全て、合成魔獣ヒドラが原因だ。
最初は、この森で合成魔獣ヒドラの行動パターンと戦闘力を計っていたが、まさかバジリスクが生息しているとは想定外だった。
魔人ネケンが人間だった頃、ネケンの家族が運悪く、合成魔獣ヒドラに遭遇してしまった。そして事故が起きてしまった。
襲われたネケンは毒気に犯され精神が正常ではなくなった。復讐を決意したネケンはナイトメア様に懇願し、復讐するための力を得た。
古い人間は、すぐ伝説と現実を間違える。
猛毒=バジリスクといった感じにな。
ヒースが左ポケットに手を入れると、レイモンド達は身構える。
「おいおい、そんなに怯えるなガムを取り出すだけだぞ?」
ポケットから取り出したガムを口の中に放り込み
「本当なら怪物を皆殺しにするところなんだが…そんな気分じゃねぇし…はい、そうですかと殺されてくれなさそうだしな…」
アーロンは睨みながら
「そりゃそうだろ。この2匹のバジリスクは殺させない」
ヒースはガム風船を破り再び噛み始め
「お前、自分自身が怪物だって自覚あるか?殺すのは怪物の姿をしてるやつだけじゃないんだぜ?」
ヴィシャスが突然、武者震いする。
ヒースはガムを地面に吐き捨て
「これ以上、ここにいるとコイツが暴れそうなんで帰らせてもらうとしよう。」
アーロンは鋭い眼つきで睨み
「とっとと失せろ」
アーロンの言葉に合わせて2匹のバジリスクもヒースに向かって威嚇する。
ヒースがレイモンド達に背を向けると殺意に満ちた瞳でアーロンを睨む
「次に会うときは、お前の首を落とすと決めた時だ」
そう言い残しヒース、ヴィシャスは姿を消した。
張り詰めていた緊張感から解放された一同は
その場に座り込んだ。
「ちょっと休憩したら研究所に帰ろうぜ」
そう提案したのはアルだった。
アルが地面に座り込むと足元に毒仙花が一輪だけ咲いていた。「あ、毒仙花!ラッキー!」
あれから数時間後…
研究所に着いた一同はバーキン博士の研究室に待機していた。
アルは缶ビールを片手に部屋をウロつきながら
「今回の髑髏星との接触で一つ分かった」
幼い2匹のバジリスクに懐かれたアーロンは呆れた表情で「あぁ…髑髏星の復活と昔より過激差は増しているだろうし、あのヒースとヴィシャスという男」
レイモンドは書類を漁りながら
「冷静さを保ちながら強烈な殺気を漂わせてた。普通の人間なら3分も持たないな」
アイボリーは2匹のバジリスクをテーブルに肘を付けて観察する。
「この2匹のバジリスクはどうなるんですかね?」
そこへ様々な道具を抱えたバーキン博士が戻ってきた。
「この子たちは私が保護、大事に育てるよ。立派なバジリスクになったら人里離れた森へ帰すつもりです」
「そうか、なら俺は次の仕事に向かう。こいつらを頼んだ。」
アーロンはそっと立ち上がり2匹のバジリスクに目もくれず部屋を後にした。
まるで2匹のバジリスクは親を待つような眼差しで
アーロンが出た扉をジッと見ていた。
バーキン博士は悩ましげに腕を組むと
「あいつはあいつで寂しいんだ。別れを言うのが一番嫌いでな」
アルがそう言うと部屋を後にした。
レイモンドは人差し指で頬を掻きながら
「まったく、めんどくさい男だな」
「えぇ、本当に。」
その頃…髑髏星地下本部
「合成魔獣ヒドラ、魔人ネケンがやられました」
殺伐とした空間に立つ、ヒースとヴィシャス。
その空間の奥の玉座に座る仮面の男が立ち上がり
「そうか…誰にやられた?」
「カフマンの身内かと」
仮面の男は黙ったまま杖を力強く床を叩く
しばらくの沈黙が続き
「わかった…。バーンからの報告で人狼が巣食う村を見つけたらしい。そこに向かい人狼を殲滅してこい。詳細は追って連絡する」
ヒースとヴィシャスは軽く会釈すると闇に消える
「カフマン…必ずこの手で殺してやる」
仮面の男は携帯を取り出し
「モルガン、お前に任務を与える。アームストロングを捕まえてこい。すでに居場所は掴んでいる」
To be continued
作者SIYO
私の暇潰しが、誰かの暇潰しになればいい。
ハイ、どうも(^ ^)SIYOです
なんとか物書きモードが徐々に徐々に戻ってきてます
あ、あと「死神と俺の日常」も続編が書き終わります汗
「カフマンという男」シリーズにも笑い要素を取り入れた
「とある休日で… X」
なんか、たまには気楽な物も書こうかと笑笑
一応、カフマン、レオン、ヘルシング、ダンピールが登場します。もちろん、怪物or幽霊?退治が超常現象調査委員会本部で起きます(^ ^)ストーリーには関係のない番外編ですが
別作品の人物が登場します。お楽しみに( ^ω^ )