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中編4
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夜の水辺にて

この話は、親戚の叔父さんが住んでる家のすぐ近くで起こった事件が、テレビのニュースでやってた事から始まります。

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叔父さんは、他県のちょっと離れた所に住んでて、正月とかで親戚が集まるって時に時々会ってた様な人なんです。でも、僕の事は結構可愛がってもらってたんで、大好きな叔父さんだったんです。

その叔父さんの住んでる所が、たまたま観てた夕方のニュースに出てたんですよ。

当時、僕は大学生でしたから、今からかれこれ、15年位前の事になります。

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その日は、バイトも休みで1日中、部屋でだらだらしてたんです。気ままな大学生の独り暮らしってやつを満喫してたんです。

で、夕方のニュースを観てたら叔父さんちの近くが出てる。

レポーターが子供達にインタビューしてるんです。どうやらこの子供達が第一発見者らしい……。

僕はびっくりして、直ぐに叔父さんに電話しました。

「あっ、もしもし叔父さん!?ニュース出てるよ叔父さんちの近く!!大変じゃん!!……」

『おぉビビりか。ああ、今◯◯ニュース観よるんか??おうよ、近所の子供らが見つけたみたいでなぁ……』

ってな具合でその事件について教えてくれたんですけど、叔父さん、ちょっとおかしな事を電話口で言ってきたんですよ。

『……いやでもな、あれ、ワシがインタビュー受けとったかもしれんのぜ……』

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叔父さんはその日、バスでも釣るかってな事で、近所のダムに夜釣りに出掛けてたみたいなんです。このダムっていうのは、ブラックバスやらヘラブナやらが釣れるんで、結構釣り人が来るような所なんですって。とはいえ、それほど有名な釣り場って訳でもないんで、夜なんかはほとんど人が来ない。叔父さん、それなもんですから、結構、そのダムで夜釣りをしてたみたいなんです。

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ダムには、水辺まで降りられる場所がいくつかあるみたいなんですよ。叔父さんは、お気に入りの水辺に向かった訳です。

いつもの様に静かな場所。

到着すると、早速竿を振る。ルアー釣りです。始めの内は調子が良く、キャッチアンドリリース!!ってやってたんですが、しばらくすると、当たりがなかなか来なくなってきました。そろそろ場所でも変えようかなぁ、なんて考えてた時でした。

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なぁ~ぉん、なぁ~ぉん……

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何処からか、猫のなき声の様なものが聴こえてきたんです。

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なぁ~ぉん、なぁ~ぉん、なぁ~ぉん……

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叔父さん、辺りを見回すんですが、暗くてよくわからない。

でも、なき声は聴こえる。

気味が悪くなってきたもんで、釣りを中断して、なき声の出所を探ってみることにしたんです。

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真っ暗な辺りを、懐中電灯で照らしていきます。

あっちからか??いや、こっちからかな??

と、どうやらこのなき声、水辺の方から聴こえてきている様子。

(いやいや、そんなバカな事は無いだろう。いくらなんだって、そんな……)

そう思いたいんですが、そのなき声のする方というのが、間違いなくダムの水辺。

しかも、岸から少し離れた水の中から聴こえてくるみたいなんです。

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そこで叔父さんね、ふと、嫌な事に気が付いちゃったんですよ。

(あれ??……このなき声、ほんとに猫かぁ??……いや、もしかして……こりゃあ、赤ん坊の……な、なき声じゃあないのかぁ!?)

そう考えた瞬間、全身をぞぞっ!!っと

寒いものが走り、もの凄い恐怖を感じたんですね。もう、釣りどころじゃなくなった叔父さんは、一目散に逃げ帰ったそうですよ。

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その翌日の昼間、ダムへ釣りにきてた近所の小学生3人組が、叔父さんが釣りをしていた辺りで黒いビニール袋を見つけたそうで、興味本意で袋を破いて中を見たらば、中には、腐乱した赤ん坊の死体が入っていたそうです。

これが、夕方のニュースで流れていた事件だったんですよ。

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さて、はたして、叔父さんが聞いたあの奇妙ななき声は何だったのか。

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ただの猫の鳴き声だったのでしょうか。

それとも、自分の居場所を教えるために、腐乱した赤ん坊が泣いていたのでしょうか。

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真相はわかりません。

ただ、普通に考えれば、あれはやはり、猫の鳴き声だったのでしょう。

そして、たまたまあの場所で、赤ん坊の死体が発見されたのでしょう。

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しかし、この国には昔から『川赤子』という妖怪が住んでいるといわれます。

水辺で赤ん坊の泣き真似をして、人間を脅かす妖怪が。

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僕には、叔父さんの話もどこか、この川赤子に通ずるものがあるような気がしてなりません。

叔父さんはあの夜、『この世のものではない何か』に呼ばれていたのではないか……と。

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皆さんも、夜の水辺には気を付けた方がいいのかもしれませんね。

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……なぁ~ぉん、なぁ~ぉん……

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