「この前あんな終わり方しちまって、辛気臭えのなんの。何か明るい話ないんか?」
「無いことも無いわよ。まぁ今の私達にはあんまり意味の無い話なんだけれど。‥そうね。今回のテーマはそれにしようかしら。」
「何か気になる言い方するね。テーマは?」
「「おまじない」についてよ。」
この3人は「オカルト研究会」を自称し、今も他の生徒が帰った後、空き教室で勝手に集まりお喋りをするのが日課になっている。3人とも女子高校生である。
いつもぼーっとしていて、少し抜けている楓
少し口が悪く、考え方にどこか時代を感じさせる舞
オカルト知識が豊富だが、その内容が少し偏っている咲。
この物語は、その3人による会話劇である。
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「おまじないだぁ?お前にしては珍しい物持ってきたな。何かこうお前の持ってくるネタは堅苦しいもんが多かったから意外だなぁ。あたしも小学生の時とかよくやったぜ?」
「堅苦しくて悪かったわね。私だってこう見えてそっちの方面の知識は無いことも無いのよ。‥でも私はおまじないの内容じゃなくて、その行為その物に興味があったわけだから。おまじないをかけたりそれで自分の幸運を願ったりって事は殆どしてないけどね。」
「相変わらずつまんねえ奴だなぁ。年頃の女子は絶対やるもんだろ。なぁ楓?」
「えっと‥まぁ少しはね。消しゴムに好きな人の名前を書いて~ってやつやってたなぁ。」
「楓好きな人とかいたのかよ。」
「えっ。ま、まぁ小学生の時はね‥」
「それも有名なおまじないの1つね。もっとも、それは消しゴムに書いてある名前を相手が見て、意識するようになって関係が上手くいく様になるっていう割りと裏付けがあったりするのだけど。」
「お前はもうちょっと乙女みたいな事言えねえのかよ。あ、あたし頃のはあれだ。おまじないじゃないかもだけど、真夜中に洗面器に水貯めて、剃刀咥えて覗くと未来の結婚相手が見えるってやつ。結局あたしはやらなかったけどさ。」
「あ、そのまじないは古くからある呪術ね。水面。というか水場は霊的現象が起こりやすいのを利用したものよ。後、刃物、というか金物というのは魔を払う力があって、それを組み合わせる事で悪いものを払いつつ、霊の力を借りて未来を見る、といった所かしらね。さっきみたいなおまじないと違うのは、この呪術に関しては科学的な裏付けが全く無いのよ。でもその噂だけは広まってるというのは1つの不思議な事ではあるのよね‥」
「そんな難しく考えんなよな。普通に結婚相手が見えたらいいなーくらいの気持ちでやるのがおまじないなんだろ?」
「おまじないだって立派な呪術よ。こっくりさんとか、後は藁人形とかもひいてはおまじないの延長みたいなもので、更に言うなら呪いを簡略化したものがおまじないになってるものもあるわ。‥因みにさっきのおまじないで、うっかり咥えた剃刀を水の中に落っことしたらどうなるか知ってる?」
「あーそういや知らねえなぁ。どうなるんだ?」
「色んな人が話に書いてるけど、もし知らないなら知らない方があなたのためよ。どうしても知りたいなら後でこっそり教えてあげるわ。あんたならやりかねないし。」
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「二人共、おまじないとか呪術が何で効くか考えた事ある?」
「いや。あんまり深くは。」「わたしも。」
「私が重要だと思うのは、その行為を実際にやること、と、何らかの形でそれが相手に伝わる事だと思うの。人は精神の影響を簡単に受ける生き物なのよ。だから、その行為を実際にやることで自分の願いが叶うって思い込む事が出来れば、自然と願いを叶える様に行動するのよ。例えば玄関を左足から出れば良いことがある!って思って行動するとして、1日の内何かしら良いことがないほうが珍しいわけでしょ?でも、そうすれば次の日も左足で出ようかなってなるわ。それを続けていれば、左足で出たから良いことがあったと思うようになるわ。これかまおまじないよ。」
「‥お前人生楽しいか?」
「愚問ね。こういうこと考えている時間は本当に楽しいわ。」
「あ、あの!相手に伝わるっていうのは‥」
「それは‥あら、もう夜明けね。その話含めて次回に繋げようかしら。その話はおまじない、というより、呪術、いわば呪いに近い物だから。」
「えっ‥」
「さぁ。まとめに入りましょうか。」
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「おまじないというのは、本人の心と行動を前向きにするものなのよ。というか、その程度の物でなければならないの。おまじないに溺れて破滅した人の話を知っているけれど、術者が術に呪い殺されてどうするのって話だし。一方で、これを使えば毎日を少しだけ明るくする事が出来るわ。要は使いどころよ。霊的であろうと科学的であろううと、それは変わらないわ。こんな所かしらね。」
「なぁ最後にいいか?」
「何かしら。」
「お前。右手首に巻いてるそのミサンガみたいな黒いわっかのヒモ、それもまじないみたいなもんだよな?つかそれどっかで見た様な気がすんだけど‥」
「あぁこれは‥いや。何でもないわ。ただのアクセサリーよ。」
「ふふっ」
「何だよ楓。いきなり笑いやがって。」
「何でもないよ~」
「じゃあ今日はこの辺ね。」
「ってもうちら学校から出られないしよ‥まぁ寝に行くか。ねみいし。」
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あのミサンガ、わたしには見覚えがあった。もうずいぶん古いホームページに書いてあったおまじない。「このミサンガを手首につけている間は、あなたが大事にしたい友達とずっと良い関係が築けます。ヒモを切らずに大切にしてください。そして、ヒモが切れた時、友達以上の関係になれるでしょう」
わたしはそんな二人が大好きです。
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何だろうこの内容は。このノートを拾った生徒はそう呟いた。ノートにはまだ続きがある。また明日読むとしよう。
作者嘘猫
復活しました。誰が読んでくれるかわかりませんが、どうかこれからもよろしくお願いします。
続きを楽しみにしている方は多分あんまりいらっしゃらないと思うのですが、唯一の趣味でございますので、どうかご容赦下さい。
もし、考察してほしい内容がありましたら、コメントをお願いします。全力で取り組ませて頂きます。