お盆まであと2日あまり
色々とお寺さんへ行く準備をしていた
今回はS子の両親も行くことになった
特にS子の父親はS子やS君から色々な話を聞いて興味を持ったようだ
S君の母親がオハルちゃんの子孫なので義理父としてはぜひ一度お寺へ行きたいと言っていたそうである
お寺さんへS君の両親も加わる話をしたら和尚さんは大喜びして
「ぜひ、S君のお父さんともお話がしたいですわい
チンピラオヤジ殿も面白い方ですしS君のお父様もぜひお見知りおきしたいですわい
一般の方の宿泊は全てキャンセルしましたわい
お部屋は余裕があるのでぜひぜひお越しください」と終始喜んでた感じだった
とりあえず13日の夜に出発をしようと予定はしている
12日まではS君とF子が東京での仕事があるとのこと
それとS君とF子の同棲するためのアパートを今探しているとF子から電話をくれた
まぁ一人だけ面白くない人物がいるけどな
このシリーズを読んでる人ならすぐにわかるはず
その同棲の話を私がしたときにわめくわめく
まるでガキんちょと同じだったな
いずれF子もお嫁に出さないといけないだろうに
知らない男よりもガキんちょもよく知ってる男なら安心だろ
葵がそういう感じでガキんちょに話をしたら大人しくなった
「じいちゃ!!!F子姉ちゃんも大好きな人といた方が幸せなんだぞ!!
じいちゃは葵がいるから大丈夫なんだぞ!将来は葵がじいちゃのお嫁さんになってあげるんだぞ」
といわれオヤジ涙流しながら葵の手を握ってた
ヤレヤレ・・・・
アパートが見つかり次第に婚約もすると言う話も聞いた
S君の両親は大喜びをしていた
おふくろも大賛成だった
オヤジはショックを受けて目がうつろになってた(笑い
子供たちはその話を聞いてその話題で夕食は大いに盛り上がったな
私の両親とS子と私と子供4人
S君からはF子とS君両親
合計11人の大所帯となった
荷物もすごい量となるだろうな
前回もなんとか車に詰め込めたけど今回も後ろの席はすべて荷物で埋まるだろう
今回はレンタカーハイエース2台分を借りる予約をした
それぞれの家族で乗ってもらうことにした
オヤジが葵たちの部屋で一緒に寝てたのが効いたのが悪夢を見ることは無くなったようだ
ただ葵が夢の中で
「パパ、夢の中でタロウ兄ちゃんがパパたちにとても感謝してたよ
「「葵ちゃんはオハルの子孫だよね、オハルが大きなお兄ちゃんたちに助けてもらったことはオハルから聞いたよ
さぁ、葵ちゃん、僕の背中におんぶしな、走るからちゃんとつかまってるんだよ
横にいるオアキ・オハルも一緒に走るからね」」と言ってオアキ・オハルちゃんの両手をつかんで
お寺まで逃げたんだよ」
それを聞いて私はまぶたに熱いものを感じた
何で、死んだ人たちを助ける必要があるんだ、と迷っていた
だが葵からこの話を聞いて私は決心した
ましてやオハル・オアキちゃんは葵が一人の時に心配してくれて一緒に遊んでくれた
その感謝もしないとね
「天国」とやらの世界がどんなものが分からないけれどオアキ・オハルちゃんが助けてほしいと夢の中にまで訴えてきたのだから
子供たちは宿題に追われてたな
葵だけは宿題が無いので朝食を終えたら一人で中庭の手入れをしていたらしい
昼からは楓が葵の面等を見てくれてた
12日のお昼にS子と楓と葵の3人でデパートへ行ったらしい
お土産や、下着など、いろいろと持っていくものを買いに行ったようだ
例の如くS子が買い物に夢中になり娘たちとはぐれてしまったらしい
デパートの場内アナウンスでS子を呼んでもらい娘たちから文句を言わたらしい
「ママ!!いつも言ってるでしょ!迷子になるんだから勝手にあちこち動いちゃダメ
私たちが案内するから後ろから大人しくついてきてほしい」
「おっちーー・・・・楓ちゃん・・・ごめんよ」
「ママ!楓姉ちゃんの言うとおり!ちょろちょろしたらダメなんだぞ!」
「おっちーー・・・葵ちゃん・・・ごめんよ」
という具合
完全にS子は真っ赤な顔になってた
匠と仁からもツッコミをされてさらにS子は赤面してた
どっちが親なんだよ
13日のお昼にS君とF子が帰ってきた
どうやらアパートを見つけてきたようだ
来週には婚約をするとのこと
それを聞いてオヤジは固まっていた
まぁ分からないわけではない
手塩にかけて育てた娘が他の男にとられる
私も楓と葵の2人の娘がいる
将来この2人は私の元から離れるわけだから
葵と楓はF子にまとわりついてた
なんか話をしてた
S君と2人きりになったときに
「S君、うちのF子でいいのかい?
性格きついよ」
「わかってるよ、あの時に大喧嘩したときによくわかった
俺はいまだに大人のオアキちゃんを追いかけてる、ぜったいに敵わない恋だと
わかってるけど・・・オアキちゃんの写真を見てF子とだぶるようになった
俺はほんとうに誰が好きなのか
F子なのかオアキちゃんなのか・・・
ふと・・・耳元で「私を愛してくれるのはうれしいけれど
私はもうこの世の中にはいない、でもあなたの目の前にいる女の子はあなたを思ってる
はずだよ、もっと現実を見なくちゃね、大きなお兄ちゃん」と聞こえてきたんだよ
まさにオアキちゃんの声だった
それで意を決してF子に告白した
即座にOKをもらった
正直、半分は必ずOKしてもらえるはず、あと半分は断られたらどうしよう、という心情が交錯してたよ
いくら幼馴染でも婚約者となるんだからな
正直怖かった」
「だよな・・・俺もS子に告白したときにもしかして断ってくるんじゃないかと思ってた
「ぎゃははははは!!!アニキ!何を冗談言ってるのさ、今日はどうしたの?」と言われたときには心臓が止まりそうになったよ
もう1度同じセリフを言ったさ
「え!!マジでアニキ!!!、私をもらってくれるの?本当だったらうれしいんだぞ」とOKをもらえた時には手足が震えてたよ
でも・・・
もう気づいたら4人も子供がいる」
あはははは、とS君に笑われた
夜になりお寺へ行く準備をはじめた
S君の両親も家へ来た
義理父がおふくろに挨拶をしていた
オヤジは相変わらずチンピラ
基本的にソリは合わない
まぁお互いに意識はしているがそれ以上はないという感じ
夕食をとり夜の8時ごろに停電が起きた
またか!!!という感覚が蘇った
義理父は何が起きたのか分からずキョロキョロと見まわしてた
私は急いでブレーカーを見に行った
幸いにも焼き切れたのではなく単なる電圧異常みたいだ
ブレーカーが落ちていた
すぐに元へ戻した
みんな、安堵感のため息が出ていた
夜の9時になり私はお寺へ電話をかけた
「いつでもお待ちしています」との返事だった
今年は事件が多すぎ
和尚さんは何回も家へ来てくれた
お盆の日を境にこういう異常な事態が無くなればいいと思うのだが・・・
夜9時過ぎに荷物のチェックと各々の忘れ物はないかなど点検してから全員車に乗った
やはり車の後部座席は2泊3日分の荷物でぎっしり
なんとか荷物も収まった感じ
F子をどちらの車に乗せるかで少しもめたがいずれS君のお嫁さんになるということで
S君の車に乗ることになった(チンピラおやじが文句を垂れたからだ)
おやじは寂しそうにF子をみつめていた
S君を先頭にゆっくりと発進した
私は家の方を見て今回はどの部屋も明かりはついていなかった
ホッとした
これからお寺まで結構かかる
何事も無ければいいのだが・・・
家を出て高速の前のコンビニに寄り休憩とおやつやジュースなどを買い込んだ
義理父はいつもの如く大人しい
逆にチンピラオヤジはやかましい
おチビちゃんを連れてコンビニへ行ってもらえるのはうれしいが
本当にやかましい
子供たちは自分の好きなおやつやジュースを買ってきたようだ
葵と楓はオヤジと相談しながら買ってたみたい
私は周囲を見回した
これといった怪しい人物や車両は見当たらなかった
お盆なので帰省や遊びに行く車で満車状態
30分ほど休憩したのちに高速へ入った
高速はすこし渋滞気味だった
この分だとお寺まで夜の0時過ぎになりそうだ
まぁ慌てずにのんびりと行こう
夜も22時過ぎに子供たちは眠いのか車内は急に静かになった
楓と葵は久しぶりに匠や仁とお話が出来て上機嫌のよう
特に葵は日中はほぼ一人なのでなおさらだろう
「パパ、私眠くなってきたよ、もう寝るね」
「僕も寝るわ」
「俺も寝る、すごい眠気が来てる」
「あたちはもう少し起きてるんだぞ、じっちゃ、お話たくさんするんだぞ
ママもお話に参加するんだぞ」
「おうよ、どんどんしゃべろうな」
「おっちーー、葵ちゃん、もうそろそろ寝ないとダメなんだぞ
お姉ちゃんやお兄ちゃんたちはもう眠いって言ってるんだぞ」
「あたち、あんまし眠くないんだぞ、もっと遊んでほしいんだぞ」
「おっちーー、わかったんだぞ、ママももっと話すんだぞ」
葵以外は全て寝たようだ
葵はオヤジと楽しげによく話している
S子も話に加わり車内は少しやかましい
おふくろはその様子を見てるだけだ
車の流れは少し停滞気味だがまずまずの流れだ
ちょうど中間地点のSAが見えてきた
ここで休憩をする
「パパ!!、後ろから得体の知れない気配がする
ばあちゃ、荷物の隙間から後ろの車を見てほしい」
「後ろの車だね・・・どれどれ・・・荷物がたくさんありすぎて隙間がほぼないね、
お、ここからなら見えそうだよ、・・・・、え!!!、目がおかしくなったようだよ・・・」
「ばあちゃ!!絶対に後ろの車に乗ってる者の目を見たらダメだよ
目線を合わせたらダメだよ」
「ほい、わかったよ、でも・・・信じられない・・・」
「ばあちゃ、もう前を向いてね、パパたちは絶対に後ろを見たらダメだよ」
楓が急に起きてなにやら不安な言葉を話し出した
「ばあちゃ・・・少し目を閉じて落ち着いてほしい」
「うん・・・いや・・・もうね、心臓が飛び出しそうだよ、
目を閉じるわ」
「どうしたんだ?楓」
「パパ、後ろの車に乗ってる人物はSおじさんとF子姉ちゃんだよ」
「え!?なに?うそだろ、S君の車は前を走ってるよ」
「確かに前の車はSおじさんだよ、後ろに乗ってるのは「死神」だよ、パパ」
「えええ!!!死神って・・・マジかよ」
「その死神たち、私たちが事故るのを待ってるんだよ、パパ」
「ウェッ・・・おいおい・・・事故るのを待ってるって・・・」
「私も信じられないよ、まさにS君とF子だよ、あの二人が死神だとは思えないよ」
「パパ、次のSAに入ったらしばらくは車から出ない方がいいよ」
「そっか、S君に連絡するからな」
私はS子にS君に楓が言った通りに「車から出るな」と連絡するように言った
「おっちーー、わかったぞ、アニキに連絡するぞ」
連絡して理解したのかS君が手を振った
SAに入った
その得体の知れない車もSAへ入ってきた
私たちの止めた場所から少し離れた場所に車を停めていた
私は横目でその得体の知れない車を見た
確かに2人乗っている
もっと確かめようとしたときに楓が言ってきた
「パパ!!、気を付けて、絶対に目を合わせたらダメだよ
目を合わせたら魂を抜き取られるよ」
「おっ、わかった、目を合わせないように確かめてみる」
仁と匠が目を覚ましたようだ
「お兄ちゃんたち、しばらくはそこに座ってて
しばらく外を見ないでね」
「なんだ!!!俺、シッコしたいぞ」
「僕もだ、なんだよ、楓、えらそうに!!」
「お兄ちゃんたち、外に得体の知れない車が停まってるんだよ
危ないから言ってるの!!!」
「うそぉ!!!、やべぇ・・・俺、ちと我慢するわ」
「あたち・・・怖いよ、じいちゃ、お手て」
15分ほど過ぎた
ふと私は得体の知れない車を見ようと横目で見た
え!消えていた
得体の知れない車はいなくなっていた
「パパ、もう得体の知れない車いないでしょ?」
「いないよ」
「一時的にいなくなっただけだと思う、いまのうちに用事を済ました方がいいよ」
「そっか、よぉし、車から降りて用事を済まそう」
子供たちやオヤジやおふくろが順に降りて行った
それをS君たちも見て降りてきた
私は薬とお守りを持ってさっきいた得体の車がいた場所へ向かった
楓も後ろからついてきた
「楓、危ないからみんなのところにいたほうがいいよ」
「うん、でもパパが心配だから」
着いたことはいいが何やら臭う
魚の腐ったような臭いだ
ガソリンの臭いではない
「オェッ・・・クサッ、何この臭いは・・・胃がむかつく・・・
あいつら・・・まさに死神だな・・・オェッ」
「パパ、早く、お薬をこのあたりにばらまいてよ」
「お、わかった」
薬をばらまいた
すごい煙が出てきた
反応がすごい
臭いも徐々に取れてきたような感じ
「これで・・ここから出てくることはないと思うよ、パパ
早く車へ戻ろう」
「そっか、一応成功かな・・・」
私は楓の手をつかんで走って車へ戻った
「大丈夫かい?すごい煙が出たね、あいつら死神だって!?それもおれらとよく似てるってか・・
迷惑だな」
「本当に、迷惑よ、アニキ、ちゃんと薬を撒いてきた?」
「撒いてきたさ、煙が出てだろ」
「パパたち、運転には十分気を付けてね
あいつらまだあきらめてないと思う」
「そっか、楓ちゃん、ありがとな、慎重に運転するよ」
「楓ちゃんがいて本当によかった、私はもうそういう能力なくなっちゃったよ」
「パパたち、もうそろそろこの場所から出ようよ」
「そうだな」
それぞれの家族が車に乗った
S君の車がゆっくりと動き出した
私はゆっくりと車を走らせながらSAの駐車場を見た
例の車はいなかった
「おふくろ、すまないがたまに後ろから外の様子を見てほしい」
「はいよ、わかったよ」
しばらくは子供たちが騒いでていたがしばらくすると静かになった
子供たち全員寝たようだ
夜ももう23時過ぎだ
車の量も少し少なくなった
実家へ帰るのだろうか家族連れの車が多かった
昼間の蒸し暑さは少し和らいでいた
車から見る夜景は本当に綺麗だ
運転をしていなかったらあちこち見てるだろうな
前の車を見ると義理の両親たちは眠ってそうだ
S君とF子はなにやらおしゃべりをしているようだ
「オヤジ、すまんがたまに両横のほうも見てほしい
怪しい車が横にいたら知らせてほしい」
「おう、わかったぜ」
「おふくろは後ろをたまにみててほしい」
「はいよ」
「S子、特に左側の方を見ててくれ」
「おっちーー、パパ、わかったんだぞ
前と左側をよく見るから、パパは運転に集中してていいんだぞ」
とにかく後ろの車が全周囲の様子を見ないとな
「まぁ・・・眠くなったら寝てもいいよ
起きてる間は警戒をしててほしい」
しばらくは何事もなく走り続けた
高速を降りた
お寺さんへ行く途中のコンビニへ寄った
子供たちを起こして全員コンビニへ買い物や用事をした
子供たちは寝ているのを起こされて不機嫌だったが車の中においていくわけにもいかないしな
高速を降りるまでは怪しい車は見ていない
「もうそろそろお寺へ着きます」
「さようですかい、お待ちしておりますわい
慌てずに慎重に運転してください」
「はい、お寺の周辺で何か異変などなかったですか?
こっちは「死神」とやらにつけられてました
一応薬を撒いておきましたけれど」
「え!死神ですか・・・楓ちゃんがそう言ってたんですかい
なるほど・・・ちょっと待ってくださいな、今お寺周辺を見てきますわい
後ほどまた電話をしますわい」
お寺への到着を和尚さんに話をした
コンビニは15分ほど休憩をしてお寺まであと30分ほどかな・・・
やはり高速はお盆のラッシュが重なってだいぶ遅れてしまった
今、夜中0時は過ぎている
コンビニはやはり田舎なのか人はそんなにいなかった
子供たちはおやつやジュースを手にもって車に乗り込んだ
S君たちも全員乗車したようだ
ゆっくりとS君の車が発進した
しばらくすると電話がかかってきた
S子に電話を代わってもらった
「おお、これはこれは若奥様、お元気でしたかな
こちらのお寺は・・・ひとつ・・・気になるものがありましたわい
お寺の駐車場に黒い車が一台停まってるんですわい
おそらく参拝の客だとは思いますのだが本堂には誰もいないんですわい
もちろんお寺の中には家内しかおりませんわい
一般のお泊りのお客は全てキャンセルしたので誰もいないはず
まさか・・・とはおもうのですが・・・先ほど話された「死神」の車でしょうかな
今、本堂から電話をしてるんですけれどね」
「和尚様、警戒だけはしててください
私たちはもうすぐ着きますから
それともしS君とF子に似た人物を見かけたら即座に薬を相手にぶつけてみてください
遠慮はいりませんから
その死神はS君とF子に化けてるんです」
「え!・・・なんと・・・そうですか・・・見かけたら遠慮なしにぶつけますわい
慌てずにゆっくりとお越しください」
「はい、慎重に運転していきますね、でわでわ」
やはり・・・その黒い車は「死神」の車なのだろうか・・・
子供たちは眠気が無くなったのかおしゃべりやふざけあいをして賑やかになっていた
楓と葵は大喜びをしていた
普段、なかなか仁と匠に構ってもらえずにいたから
遠くの方にお寺の屋根が見えてきた
「おっちーー、お寺さんが見えてきたんだぞ
もうそろそろ着くんだぞ」
「パパ・・・慎重にお寺さんの駐車場に行ってみて
黒い車があるはずだから」
「え!!!なんで楓、知ってるんだ?」
「感じる!!!あのSAの時の感じ、間違いないよ、パパ、死神だ!!!」
「なに!!」
「ママ!!!Sおじさんに連絡して駐車場へ入らずに今すぐ車を停めてと連絡して」
S子が慌ててS君に連絡をした
すぐにS君は道路のわきに寄せて車を停めた
S君が降りて自分たちのいる車に近寄ってきた
「どうした?なにかあったのか?」
「いや・・楓が例のSAのときの死神を感じたらしいんだよ」
「うわっ!そっか・・・あいつらがいるのか・・・
和尚さんには連絡したの?」
「今から連絡するよ」
わたしは和尚さんに電話をした
「和尚さん、やはり、死神の車でしたよ」
「そうですかい、やはり・・・本堂や庭先にも誰もいないんですわい
わしゃ、本堂でお経をあげてますわい、もしお寺へ入るときは本堂側からお入りくだされ」
「はい、そうします」
私は歩いて駐車場へ行った
確かに黒い車が1台止まっていた
わたしは薬をその車にぶつけた
だが反応は無し
あの魚の腐ったような臭いもしない
死神の車じゃないのか
私はそこからすぐに離れてオヤジたちがいるところへ戻った
「おかしい・・・薬を車にぶつけたけど反応が無いんだよ」
「パパ!!車は普通の車だよ、ぶつけても反応は無いよ
とにかく死神を探さないといけないんだよ」
車は道路わきに置いたままお寺へ歩いて向かった
夜だが蒸し暑い
すぐに汗が噴き出してきた
「暑いね、蒸し暑い、蚊がすごくいるし・・・」
「おっちーーー、暑いんだぞ」
距離にして300メートルほど
駐車場を避けて裏の門から入った
門を入るときに「キーーン」という耳鳴り?機械音?みたいな音が一瞬だけ聞こえた
「え!今の音は何?聞こえた?」
「聞こえたんだぞ、なんだろう?」
「わかんないよ」
門の入り口の庭を歩いていた
こんな蒸し暑いのにモヤみたいなものがかかっていた
汗がなぜがひきはじめた
なんとなく寒くなった
「なんか・・・今度は寒くなってきたよ」
「おっちーーー、寒いんだぞ」
「パパ、あたち寒いんだぞ」
しばらく歩いていると本堂が見えてきた
モヤがかかっていて本堂らしき建物が見えたというのが正しいのかも
本堂の庭先に出た
おかしい・・・和尚さんがいない
本堂でお経をあげてるはずだと思ってた
わたしはすぐに和尚さんへ電話をした
通じない
圏外になっていた
ありえない
モヤが完全に消えた
また蒸し暑さが戻ってきた
本堂をよく見た・・・・
「えええ!!!なにこれ?ボロボロになってるじゃん
仏さまがチリで汚れてるし
床が抜けてるよ」
「うわぁ!!!なんじゃこりゃ
オンボロ寺じゃないかよ」
呆然とした
ぼろぼろのお寺、本堂が目の前にあるのだ
どういうことだ?
「おかしいな・・・こんなはずじゃない」
全員お寺から出ることにした
ぞろぞろとお寺の正門から出た
駐車場にあった黒い車は無かった
まだ午前3時
暗闇がまだ支配してる時間だ
とりあえず止めた車まで戻った
子供たちを車の中に入れた
大人だけは外で事の成り行きやこれからどうするか話し合いをした
子供たちは中から心配そうに見ていた
S子に車の中へ行くようにと言っておいた
義理父と義理母も車で待ってるように言った
とりあえずは辺りが明るくなるまでは車で待機することにした
眠気がすごい
家族全員眠ってしまった
朝7時ごろに目が覚めた
子供たちは起きててお菓子など食べながらおしゃべりをしていた
オヤジやおふくろも起きてた
外を見ると一見お寺さんの周辺の風景だ
だがお寺を見ると朽ち果てた姿に変わっていた
「なんでこんなボロボロの寺になってるんだよ」
「おっちーーー、おかしいんだぞ、和尚様や奥様はどこにいるんだろ?」
「パパ、・・・言いにくいけど私この風景を見たことがあるよ
夢の中でね
餓鬼たちが追いかけてきてオハル・オアキちゃんやタロウ兄ちゃんなど走って逃げていく夢だよ
葵も見てるはずだよ
まさかと思うけどここが「天国」なのかも」
「えええ!!!まさか・・・そんな・・・田んぼや畑は荒れ放題
とても人がいるとは思えない風景だぞ
こんなのが天国なのか・・・」
「だな・・・これからどうするんだよ?」と
S君が自分たちの車に乗り込んできた
さて・・・どうしようか・・・食料もほぼ無い
お菓子やジュースだけだ
とりあえずは荒れ果てたお寺の中を見ることにした
「まぁ・・・どうしようもないよな
食料も無いし・・・まずはあの荒れ果てたお寺の中を調べてみよう」
お寺の探索にはオヤジと私の2人で行くことにした
S君を含めあとは車の中で待機しててもらおう
「パパ!!気を付けてね、今のところ何も感じていないけど、何かが来るかもしれないから」
「おう!わかったよ、そこでちゃんと待ってるんだよ」
「うん、パパ」
オヤジと一緒に正門から入った
蜘蛛の巣や倒れた灯篭などひどい有様だ
「おうよ、こりゃなんだよ、どうみても100年くらい人が住んでないような感じだぞ」
「たしかに・・・これはひどい・・・」
玄関から中へ入った
中もすごい有様だ
床は抜けて壁はボロボロ
慎重に歩いだが床が腐っててズボッと足がはまった
「うわぁ・・・だめだ・・完全に床が腐ってる」
「げっ!、靴が脱げたぞ・・・歩きにくい」
仏間へなんとか行けた
だがそこは仏間の部屋じゃなく化け物屋敷という感じの部屋になっていた
美しい庭園はそこにはなく単なる砂とゴミが散乱していた
これは・・もう・・・
私たちは一旦お寺を出て車へ戻った
「だめだ・・・完全に化け物屋敷になってる
とりあえずは当分は車の中で生活するにしかない」
「生活と言っても食べ物が無いよ・・・パパ
どうするのさ?」
「ううう・・・だよな・・・このままじゃ飢え死にだよ」
子供たちもなんとなく意味が分かってきたようで不安な顔をしていた
車もむやみに動かせない
おやつやジュースなど節約すればなんとか3日は持ちそう
でも・・・3日持ったところで意味はない
せめて・・・子供達だけでも元の世界へ戻してほしい
本当に困った
とりあえずは車の中でいることにした
というか無駄に動くとお腹が空く
せめて水だけでも飲める場所があればいいのだが
私はオヤジを連れて例の場所へ行くことにした
「オヤジ、水が湧くところを知ってるから一緒に来い」
「お!水があるのか・・・ついていくぜ」
「S君、留守番頼むわ」
「おう!わかったぜ、例のあの場所だな、水が沸いてればいいけどな」
「まぁ期待はしないでほしい」
お寺の横の道を歩いて山のふもとの付近に清水が沸いてる場所があるはずだ
やはり・・お墓は無茶苦茶に壊れていた
もちろんオアキ・オハルちゃん達の墓もだ
涙が出てきた
しばらく歩くと草や木が青々と茂っていた
「お!これは・・・」
小さな滝からきれいな水が流れていた
良かった!!!水があった
これで飲み水は確保できた
ここは少し広場になっててテントを張れる
そこから横の道は山上へ行く道と繋がってる
山上の神社も見てこよう
「オヤジ!!、山の上の神社を見に行くぞ」
「おう!」
30分ほどかけて山頂へ着いた
神社は無事だった
ここなら周囲が良く見渡せれる
私は山頂から下を見た
S君たちがいた
もう1度麓をみた
・・・なんとも味気のない世界だろう
活気が全然ない
完全に死んでる世界だ
雲が全然動いていないのだ
かといって明るさは変わっていない
とりあえずは山頂か水が出るところで生活の場としないとね
あとは食料だ
田んぼや畑は全滅してる
どう見ても果物や野菜などありそうもない
ふと見ると・・・懐かしい建物があった
思わず身震いがした
まさか・・・オハル・オアキちゃんの実家だ
お寺から1Kmほどにある
この風景は江戸時代末期なのか?
まさか・・・
山を下りた
「例の場所に水が沸いてだよ
水の確保は出来たよ
後は食べ物だ」
「うそぉーー!!やったね、水が飲める
あそこならテントを張れば何とか生活はできる
ダメなら車の中だな」
「山頂でも生活はできるよ
あそこなら360度見渡せれるし
落ち葉や落ち木がたくさんあるから暖は取れる
後は食べ物だけだ」
「だな・・・どこかにないかな・・・」
原始時代の生活になるのかな・・・・
これからどうしようか・・・・
私たち家族だけの世界なのか
ほかに人はいないのだろうか・・・
不安が募る
当分は節約の節約をしての生活となるだろう
何という仕打ちだろうか・・・
オアキ・オハルちゃんのような一人ぽっちじゃないのがせめてもの救いだけどね
どれだけオアキ・オハルちゃんが一人で頑張ってきたかと思うと・・・
もちろん私たちは手伝いをしてきた
だが・・・所詮は一人ぽっちは一人ぽっちだ
葵だけはこういう気持ちはよくわかるだろう
一人、中庭でモクモクと草むしりや庭の手入れをしているから
私は葵をギュッと抱きしめた
「パパ!、痛いよ、どうしたの?」
「ごめんね・・・これからどうしようかと・・・」
「うん・・・でも心配しなくてもいいよ、パパ、ママやパパ、じっちゃ、ばあちゃ、お姉ちゃんやお兄ちゃんたちがいるよ」
「葵・・・そうだよな・・・家族がいるよな・・・」
義理父・義理母には本当に申し訳ない
巻き込んでしまった
お昼だろうとおもう
一応時計は動いている
昼食といってもお菓子を少しジュースを少しだけの昼食だ
水はいくらでも飲めるのだが・・・
早く何とか食料の確保をしなくちゃ
やることもなく時間が過ぎていった
安全のために全員、車の中にいた
なぜだが眠気が襲ってきた
どのくらい時間がたったのか・・・・
外から窓を叩く音がして目が覚めた
「え!・・・音?」
「起きてくだされ、どうしました?」
「ええ???」
ふと窓を見ると和尚さんがいた
「え?和尚さま・・・」
「大丈夫ですかい?
なかなか到着しないので外へ出て見たら車が止まってるから様子を見に来たら
車の中で皆さん寝てらっしゃる」
「あああ・・・えええ・・・夢だったのか・・・・」
「あれ・・・パパ、和尚様がいるよ、どうなってるの?」
「さぁ・・・パパもわからないよ」
「おっちーー!!あれれれ・・・」
全員起きた
みんな・・・キョトンとしてる
S君のほうも起きて外へ出てきた
「ありゃ・・・元の世界へ戻ってるぞ。どうなってるんだよ」
「え?元の世界ですかい?」
和尚様に今までの出来事を話しをした
「えええ・・・全員同じ夢を見たんですかい
お寺がボロボロで・・・まるで江戸時代の末期みたいだったとな
これは・・・」
「ええ・・・もうお寺は朽ち果てて世界が死んでるようでしたよ
それと雲が全然動いでいなかったんです」
「なんと!!雲が動いてないとな
そりゃ・・いや夢じゃないかもです
もしかして一時的に天国へ行ったのかもしれませんわい
まぁ・・とりあえずはお寺へ行きましょう」
とにかく夢だったようだ
ホッとした
もう朝方5時は回っていた
全員仏間へ
全員腰を下ろした
「おっちーー、夢でよかったんだぞ」
「うん、あたち・・怖かったんだぞ」
「でも・・あれって本当に夢だったの?
俺さ・・・どうみてもリアルとしか思えないよ」
「私も匠兄ちゃんと同じ意見だよ
パパ、どうみても夢じゃないような気がする」
「アニキ・・・全員同じ夢など見れるかな?
楓ちゃんの言うようにおかしいと思わない?」
「確かに・・・リアルすぎるよな」
みんな口々に意見を言い張った
義理父や義理母も夢じゃないような気がすると言いきっていた
さてと・・・スマホ・・・あれ・・・スマホが無いぞ
落とした?どこで落としたんだろう
あっ!!!湧き水のところだ
いや夢の中の湧き水の出てる所
「あちゃ・・・スマホ、落としてきた、夢の中の湧き水のところだ
まさか・・・とおもうけど俺、湧き水のところへ行ってくる」
「え?夢の中で落としたの?じゃあ湧き水のところへ行っても意味ないじゃん、アニキ」
「だよな・・・たしかに・・・でも・・もしも、ということも」
「パパ、私と一緒に行こうよ」
「危ないからここにいた方がいいと思うけど・・・なにか気になることあるの?」
「うん、もし夢じゃなくリアルだったら・・・」
「まぁ・・・一緒に行くか」
私は楓と一緒に湧き水の出る場所へ行った
あちこち探したがなかなか見つからなかった
勘違いだったのかな・・・
あとは山頂の神社の場所だと思うけど
「楓、今から山頂へ行くけどついてくる?」
「うん、ついていく」
楓を伴いながら山頂へ向かった
途中で仏間を見た
仏間から全員こっちをみていた
楓が手を振ると葵や匠・仁が手を振った
「パパ、みんな見てるね」
「だな・・楓たちは本当に仲がいいよな
ケンカしてもやはり兄妹だよな」
「うん、えへへへ」
山頂へ着いた
あちこち探した
あった!!!!・・・え????あった・・・
「わぁつ!スマホを見つけたよ、パパ」
「えええ・・・んな馬鹿な・・・じゃああれは夢じゃなくリアルということになるのかな」
「だよね・・・これパパのでしょ・・・」
「確かにパパのだ、でも・・・まぁ・・・戻ろう、楓」
「うん」
仏間へ戻った
「スマホ、あったよ」
「ええ!!!まじかよ、じゃあ夢じゃなくありゃリアルだったんだ」
「ほんとうに?そんな・・・あんな世界が天国なんで・・・イメージと全然違うじゃない、アニキ」
「あ!!俺、暇だからカメラで写してた!!!」
S君がカメラの中身をチェックしはじめた
みるみるうちにS君の顔が青ざめていった
「まさか・・・そんな・・・・うそだろ!!!」
「どうした?S君」
「おっちーー、アニキ、どうした?」
それは餓鬼たちが村人を襲ってる場面だ
それとオハルちゃんやオアキちゃんが逃げてる様子も写ってた
数十枚
餓鬼から逃げ惑う人や餓鬼に食べられてる場面やまさに地獄絵図だった
「そんな・・・写した時にはこんな場面はなかったぞ
なんでこった!!!クソォ!!餓鬼とも!!!」
「おお・・・なんということですわい
まさに地獄ですわい」
和尚さんは仏壇に向かいお経を唱えた
「ひどい・・・アニキ!!なんでこんな場面写したの?」
「いや・・だからこんなシーンは無かったんだよ
何気なしにあちこち写しただけだよ」
((大きなお兄ちゃん、大きなお姉ちゃん、助けて~~~
助けて~~~トト様カカ様、食べられたよーーー))
「え!!!なに?オハルちゃんの声がしたぞ」
「わしゃも聞こえ申したわい、あれは間違いなくオハルちゃんですわい」
「今夜、もう1度天国へ行けるようにお狐様に頼みましょう
わしゃもその天国へいけれればいいのじゃが
とりあえず今夜山頂の神社へ行きましょう」
夢じゃなくリアルだった
まさか・・・私は急いでコンビニへ買いに行った
もちろん水とジュースとパンなどを買ってきた
オヤジと私と和尚様3人分、3日分だが買ってきた
それを湧き水の少しくぼみのある所に隠してきた
「どこ行ったのさ?パパ?」
「いや・・まさかとおもうけどパンやジュースなど買ってきて湧き水のところに隠してきたよ
うまくいけば3日分の食料は確保できるから
今回は私とオヤジと和尚様3人だけで行くことにした
あの様子だと全員行っても食料の確保はできない
ここで待っててほしい」
「俺も行きたい・・・まぁ・・・食料の確保かぁ・・・留守番だな」
「仕方ないよね、あの様子だから」
「おっちーー、パパたち、気を付けてね」
「あたち、行きたいんだぞ、連れて行ってほしいんだぞ」
「葵、ダメだよ、今回は無理だよ、お寺さんにいようね」
「えええ・・・楓姉ちゃん・・・わかったんだぞ」
「ごめんな、葵、留守番しててくれ
仁と匠、妹たちを頼むぞ
お寺の中で遊ぶのはいいけど決してお寺の外へ出ちゃダメだからな
おいしいもの食べててくれればいいぞ」
「分かったぜ、パパ、妹たちはまかしておけ」
「うん、兄ちゃんたちと遊んでるよ」
夜の23時過ぎ
子供たちは全員寝た
義理父義理母は隣の部屋でゆっくりしてもらう
おふくろと和尚様の奥様は仏間
F子とS子も同じく仏間でいてもらう
S君は各部屋のパトロールをしてもらう
死神はまだあきらめていないはずだ
隙あらば必ず何かしらの行動を起こすはずだ
仏間は強力な結界を張ってあるので恐らく大丈夫だと思う
隣の部屋も同じく
お寺全体が結界の中に入っている
オヤジと私と和尚様は午前0時過ぎに山頂の神社へ行く準備を始めた
「果たしてお狐様が来て下さらるかどうか」
「ですわな・・・来てもらわないと天国とやらに行けませんわい」
「おうよ!その狐とやら・・・俺は・・いややめておこう」
「なんだ!!オヤジ、いつもの毒舌はどうしたんだよ?」
「しめるぞ、コラァ!!!まぁ・・・いいにくいんだが・・・その狐様は一応「オアキちゃん」とみんな思ってるんだろうけど・・おれは違うような気がしてならない・・・
その「オアキちゃん」もしかしたら・・・あいつらに捕まって仕方なしに命令されてるような気がするんだが・・・時空間を本当に「オアキちゃん」がしてるかどうか俺は実に怪しいと思ってるぜ」
「はぁ・・??オヤジ、頭いかれたか?オアキ・オハルちゃんの幼少時の時空間を「オアキちゃん」が操ってくれたからこそ俺たち子孫は生きてるんだよ、じゃなければおふくろと出会ってなかったぞ、オヤジ!!」
「え・・・いや・・・その方がよかったような・・・(小さな声でブツブツ)」
「は?何ブツブツ言った?おふくろにばれたらオヤジ、クビ、チョンだぞ!!」
「わぁ!!!言うなよ、F!!!」
確かに・・・なかなかお狐様は現れもしないし助けもしてくれない
オヤジが疑うのは半分は分かる
ごちゃごちゃとオヤジとやりとりしてうちに時間は過ぎ
もうすぐ0時だ
「もうそろそろ行きましょうか、和尚様」
「ですな・・・」
「おうし!!行くぞ!!!」
「子供たちや妹たちを頼むよ、S君」
「おう!!まかせとけ、気をつけて行ってくれ」
ゆっくりと山頂を目指して歩き出した
蒸し暑さはすっかりなくなってもやはり夏の夜だ、少し歩いただけで汗が出てきた
タオルで顔を拭きながら黙々と歩いた
神社へ着いた
辺りは虫が鳴いていた
もちろん人はいない
少し休憩をした
「お狐様!!!ぜひ天国へ行かせてください!!
オアキ・オハルちゃんが私たちを呼んでます!!!
一刻も早く天国へ行ってオアキ・オハルちゃん達に会いたいです!!!」
私は天に向かって大きな声をだした
シーンと静かなままだった
「ダメかぁ・・・・」
「おい!!!狐様とやら、てめぇらの正体はわかってるんだぞ!!!
おまえら「死神」だろ!!!
よくもまぁ・・・偽善ぶった真似をしやがってよ!!!
だが俺は騙されないんぜ!!!
俺はx:;p@@;:の子孫だからな
おまえたち一族を地獄へ追放した子孫だ!!!!
いつまでも逆恨みしてどうするんだ!!!
おまえたちの悪業は全宇宙まで知れ渡っているんだぞ
だからこそ宇宙創造の神々は貴様らを追放したんだ!!!
隠れてないで出て来い!!!」
おいおい・・・オヤジ・・・何を言ってるんだよ
「死神」だって・・・まさか・・・じゃあ・・・俺たちはその「死神」とやらに踊らされていたのかよ
てっきり「大人のオアキちゃんとその息子」だと思っていた
つむじ風が吹いた
「大きなお兄ちゃん、和尚様!!!オヤジ様、ありがとう!!!
やっと死神からの束縛が解かれました
私は操られていました
大きなお兄ちゃんたちを天国へ行かせないように私を縛り付けていたんです
オヤジ様が言うような騙しはしていません・・・私は抵抗をしましたが力が無さ過ぎただけです
大きなお兄ちゃんや大きなお姉ちゃんが私たち姉妹を助けてくれなかったら
トトカカ様に会えなかったしタロウ・ジロウ兄ちゃんたちとも会えなかった
でも私も少しは勇気を持って時空間を短時間ですけれどでもその短い時間でも
大きなお兄ちゃんや大きなお姉ちゃんや和尚様は私たちを助けてくれました
そしてお寺でオハル・オアキは再会できました
オヤジ様の喝で「死神」は一旦撤退しました
でも「死神」「餓鬼」はまだ解き放されていません
私は「死神」「餓鬼」を操ってるものを知ってしまいました
知ってはいけない禁断の秘密を知ってしまいました
だからこそ私は病気になり私の息子を犠牲にこの世から消えたのです
でも幸いにも私の娘が生き残りました
さぁ・・・もう時間の猶予はありません
天国へ行く時空間を開きますね
今度は時間は無限になります
もし不利な状況へ陥ったのなら遠慮なしに私を呼んでください
元の時間へ帰しますから
まだあなたたちは生身の人間
天国は死人の世界です
決して生身の人間が行けるような場所ではないのです
あなたがたの天国への滞在時間は12時間が限度です
時空間はいつでも開いていますが
もし12時間以上滞在した場合はもう2度と元の世界へ戻れずに時空間の狭間に永遠に閉じ込められてしまいます
そこへ入ったら私や上狐様方ですら助けることはできません
ただ・・・オヤジ様の体の中に閉じ込められている「悪魔」が目覚めたら・・・やめときましょう・・・
さぁ・・・時空間をあけますよ、そこへ飛び込んでください」
オアキちゃんが復活してくれた
死神に捕まっていたのだ
一体・・天国とやらの世界はどんな様子なのだ
神々が住んでるのではないのか
「よぉし!飛び込むぜ」
「はいーーー行きましょう」
順々に時空間の穴らしきものの中へ飛び込んだ
一瞬で夢に出てきた風景が広がっていた場所に出た
田んぼや畑は荒れ放題
上空を見渡したが厚い雲が動かずに浮いていた
「夢と同じだ
これが天国なのか
イメージとは全然違う
とりあえずはお寺へ行きましょう」
「ですわい・・・これが天国だとは信じれませんわい」
私たちはお寺へ向かって歩き出した
今のところ人影が全くない
静寂だけが支配していた
お寺が見えてきた
「うわ!夢と同じだ
そのまんま、オンボロ寺」
「これはひどいですわい
こりゃ・・・私が物心ついた時のお寺とそっくりだわい
私が幼少の時はお寺は戦争時に焼けてなんとか資金を集めてお寺を復興させましたわい
ちょうど修復作業時の時のお寺と似てますわい
幼少の時は「ぼろ寺の坊主」とからかわれてましたわい
私が20歳前後の時に今のお寺のような感じになりましたわい
檀家衆も徐々に増えましたから
それとオアキちゃんの一族の援助もありましたし
ありがたいことですわい」
中へ入ってみた
夢のまんま
床は抜け壁に穴が開いていた
瓦はガタガタで今にも滑り落ちそう
オアキちゃん達兄妹はどこだろう
「オアキちゃん達いないようだな」
「ですわい・・・どこにいらっしゃるのだが・・・」
「本堂の方へ行きましょう」
本堂へ向かった
本堂はさらにひどい有様
仏さまのまわりには蜘蛛の巣でびっしり
「ここにもいないようですわい」
ガタンと仏さまの後ろから音が聞こえた
「え?今、音がした」
「ええ、確かに音がしましたわい」
私は慎重に仏さまの後ろへまわってみた
子供たち4人が震えながらかたまっていた
「和尚様!!いましたよ、オアキちゃん達です」
私は和尚様を呼んだ
「おお!!これはこれは・・・ここに隠れてましたな」
「オアキちゃん、覚えてるかい?」とわたしは子供たちに向かって話しかけた
「ああ!!!大きなお兄ちゃんだ!!!
助けに来てくれたんだ!!!」
「おっちーー!!大きなお兄ちゃん!!!」
タロウ・ジロウ兄弟も満面な笑顔を見せてくれた
見たところケガはなさそうだ
さて・・・どうしたものか
一旦元の世界へ戻るべきかな
果たしてこの子たちも一緒に連れて行けるのだろうか・・・
「お狐様!!元の世界へ帰りたいです
それとこの子たちも一緒に連れていきたいです」
しばらくするとつむじ風が吹いた
「大きなお兄ちゃん、ありがとう
元の世界へ帰しますね
この子たちをよろしくお願いします」
15メートル先に青く光った穴が現れた
「さぁ!!その穴へ飛び込んでください」
「おうし!!飛び込むぞ!!
まずは子供たちからだ!!タロウ君から順に飛びこめ!」
オヤジの声で子供たちが順に飛び込んでいった
無事全員元の時代へ帰ってきた
後はこの子たちをどうするか・・・
作者名無しの幽霊
いや・・・まさかの展開になってしまった
死んだオアキ・オハルちゃん達を助けに天国へ行くとはね
とりあえずは兄弟たちを元の時代へ避難させた
今後、どうしたらいいものやら・・・
一刻も早く天国が元へ戻ってくれないとね
でもなんとなく核心部分に近づいたような気がする・・・