学校の怪談についての考察

中編5
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学校の怪談についての考察

「こんちは。この前のリクエストなんですがね。依頼主が満足してたみたいなんで、それ相応の報酬を持ってきやしたよ。あんたら学校から出られないでしょう。あっしの伝を使って学校の図書室にはない大衆小説、オカルト雑誌、漫画、エロ本、ラノベ色々持ってきたんで置いときやすね。あっしはこれで。」

「何か変なの混じってなかったか?てかどーすんだよこんな山みたいに持ってきてよ。」

「それは大丈夫。この本達も幽霊みたいなものよ。普通の人には見えやしないわ。そこら辺の教室に放り込んでおきましょう。それにしてもこんなにあるとテンションが上がるわね。また片っ端から読まなくちゃ。寝る時間が減ってしまうわ‥」

「結局あの人なんだったんだろう?」

「しらね。特に変なことしてこなかったし、ほっとけばいいんじゃね?」

「う、うん‥」

この3人は「オカルト研究会」を自称し、今も他の生徒が帰った後、空き教室で勝手に集まりお喋りをするのが日課になっている。3人とも女子高校生である。

いつもぼーっとしていて、少し抜けている楓

少し口が悪く、考え方にどこか時代を感じさせる舞

オカルト知識が豊富だが、その内容が少し偏っている咲。 

この物語は、その3人による会話劇である。

「言われてみりゃだけどよ。あたしら学校からは出られないんだよな。特に不自由はしてないけどよ、3人でどっか行ってみたい気もするよな。」

「同感だけれど、それは無理な話よ。私達地縛霊っていう扱いでこの世に残っているんだから。ルールの無い幽霊は存在しては行けないのよ。特に恨みもなくなったしね。それを破ったら多分存在を保てなくなるわ。‥そうね。今日はその地縛霊についての話を」

「ねぇ。わたし達学校の幽霊なんだよね?それ繋がりで学校の怪談について教えてほしいな。」

「いきなりな話ね。最近楓が話題を持って来る事が多くなった気がするわ。」

「せっかく楓が出してくれた話題だ。そっちにしようぜ。あたしもそれなら何個か知ってるしよ。」

「いいわよ。私もその話題については思う所があるから。」

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「学校の怪談といったらまず思い付くのは何かしらね?」

「えっと、わたしはトイレの花子さんってやつだよ。とある時間に3階のトイレの3番目の個室を3回ノックすると、個室のドアが勝手に開いて異世界にひきずり込まれるの。だからやってはいけないタブーだって。」

「うっそ。マジかよ。」

「舞はどうなの?」

「えっと、あたしの頃は呼び出す方法は同じで、その後に花子さん遊びましょうって言うと、誰もいないのにはーいって声がするっていうだけだったぞ?」

「思った通りね。楓と舞は死んだ時間が随分違うから、なにかしら変わるだろうとは思っていたのよ。補足をするなら、トイレ繋がりで昔から紫ばばあっていう怪異がいるの。でも、昔はただ驚かすだけだったのが、最近では異世界に引きずりこむって伝わってるのよ。多分それが花子さんと混ざって伝わったのね。」

「へー。他には何があるんだ?」

「えっと。わたしは階段の真ん中にある鏡を深夜に覗くと中に引きずり込まれて行方不明になるって。」

「おいおい‥あたしの時は人が映って驚かすだけだったぞ‥」

「話を変えようかしら。校庭にある銅像が深夜に走り回る話は知ってるかしら?」

「知ってる!有名だもんね!」

「あたしも知ってるぞ。」

「確か、その姿を見たら呪われて、その石像にされちゃうんだよね。」

「‥もうつっこまねえぞ。あたしの時はただ走り回るだけだった。」

「例をあげるのはこの辺にしておきましょう。」

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「ここまでの話を聞いて、なにか思う事は無いかしら?」

「なんか、噂自体は変わってねえけど、最近の話がよりぶっそうになってないか?殺されるとか消えるとかよ。」

「そう。これには様々な理由が考えられるけど、私が思うのは主に2つ。

1つめは、学校の怪談の伝わり方の問題よ。」

「ん?よくわかんねえけど、あたしは先輩とか友達から聞いたぜ。今思えばあいつらどっからネタ仕入れてきたんだろうな。」

「わたしも友達から聞いたかな。後はネットとかサイトとかで見たり聞いたり。」

「昔はネットなんてなかったもの。あくまで噂を広める関係が子供と子供の世界で完結していたわ。だからその頃の噂はどこか幼げが残っているのが特徴だったりするの。

今はその情報源ネットが主だったりして、そこに大人が関わっていたりする事が殆どよ。だから大人でも楽しめるように、より具体的な恐怖を煽るために物騒な表現を付け足すのよね。それを見た子供がそのまま広めてるって話。まぁこれに関しては昔もテレビとかあった訳だけど、ネットほど第三者が簡単に情報を流せるものではなかったから。」

「何か時代を感じるなぁ」

「もう1つは‥?」

「私はむしろこっちの可能性を推したいのだけれどね。今の子供たちが、刺激をより求めてるって可能性よ。」

「どーいうことだよ。」

「今の子は簡単にネットを見ることが出来るって話はしたわよね?そこには子供騙しの怖さとは比べ物にならない物騒な情報が一杯あるの。勿論良くない物もね。そんな中に毎日漬かっていたら、怖い噂の発想そのものが物騒になって来ても全然不思議じゃないわ。何が恐ろしいかって、1人の小学生がそんな噂を持ち込んでも、それを一種の娯楽として受け入れてる大勢の小学生がいてこそ噂は成立するわけで、それを何とも思わない子供が沢山居るって事なのよ。」

「子供そのものが変わって来てるって事か。どうなるんだろうなこの先。」

「私達はもう死んでるから解らないけど、どんな世の中になるんでしょうね。今日はこの辺にしましょうか。」

感想

怪談からこんな話になるとは思わなかったな。

学校っていうのは子供の一番身近なものだから、学校の怪談ってのは子供と深い繋がりがあるのかなって考えました。

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「いや、こいつら学校の幽霊の話してるけど、一番問題の学校の幽霊って言ったらあんたらでしょうが。」

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