私達の家に河童が出た。
パートナーと私はある出来事を河童の仕業だという事にした。
河童以外の理由を探すと怖いから…
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私達にはお気に入りの漬物専門店がある。
そこで月に1度、漬物を購入する。
パートナーのお気に入りは【胡瓜の漬物】だ。
だが、私はどうしても胡瓜が好きになれないので、いつもパートナー専用として購入している。
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今日も漬物を購入した。
パートナーには【胡瓜の漬物】を、私は【たくあん】を。
あまり日持ちがしないので、いつも2・3種だけにしている。
今日はこの2つだ。
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漬物を持って帰宅した。
晩御飯の寸前まで冷蔵庫にしまっておこう。
冷えた漬物を熱々の白米で食べる。これが堪らなく美味しい。
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パートナーが帰宅し、晩御飯の支度をする。
漬物はジップロックのタッパーに切り分けておく。
後はオカズと味噌汁と白米を準備した。
今日は白米が進む日だ。
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流石に一回では食べきれないので残りは後日に。
だが、パートナーはこの胡瓜の漬物が大好物の為、沢山あった漬物は1/4程になっていた。
塩分の取り過ぎでは?とたまに心配になる…
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翌日、私は在宅で仕事をしていた。
昼頃になり一段落したところで、思い出した。
( ゴミ出しとくか… )
気分転換も兼ねて、私はマンションの一階にゴミを捨てに行く事にした。
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マンションの玄関ロビーにゴミステーションが隣接してある。
私達が住んでいる階は日中、仕事に出ている家ばかりで昼間は私くらいしか居ない。
その為、気を抜いており私は鍵を掛けずにゴミを捨てに行ってしまった。
時間にして2分程だったと思う。
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夜になり、パートナーが帰宅する。
今夜も残った漬物を含めた献立を提供した。
「いただきます。」
そう言ってテーブルに並べていた漬物入りのタッパーの蓋を開ける。
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・・・ない
パートナーの大好物の、残しておいた胡瓜の漬物が失くなっている。
タッパーの中には胡瓜と共に入っていた昆布だけが儚げに存在していた。
胡瓜は…?
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パートナーと記憶を整理する。
昨夜、パートナーは確かに胡瓜を残していた。
これはお互いに確認済みである。
胡瓜が入っている事を再度確認してから私が冷蔵庫にしまった。
その胡瓜が無い…
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有り得ない事だとは分かっている。
だが、昼間私が無施錠でゴミを捨てに行った隙に誰かが侵入して食べた?
それ位しか失くなった理由が解からない。
前述した通り、私は胡瓜が嫌いだ。
私は食べていない、食べられないのだ。
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ならばパートナーが…?
夢遊病も患っていないので、その可能性はゼロだった。
では、誰が?
私達は念の為、有り得ないが念の為、家に置いている貴重品類を確認した。
・・・何も失くなっていない。
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当たり前だった。
マンションの1階から我が家の玄関までは1本道。
誰かが侵入したのであれば、出て来る時に鉢合わせていたはず。
ベランダ等の窓は鍵がかかったままだから違う。
しかも2分程で侵入して、私に見つからずに何が盗れるだろうか?
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不可解でしかない。
徐々に私達は気味が悪くなっていた。
たかが胡瓜の漬物だが、普通消える様な物ではない。
2人暮らし、誰も家に入れていない、ゴミ捨て以外は外出もしていない。
何度もこの漬物を購入しているが、消えたのは初めてだった。
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私達はこれ以上追及しても気味の悪さが増すばかりだと思った。
そしてこの日から、我が家の【河童事件】と呼んでいる。
あまりにも美味しい胡瓜の漬物だったが為、通りすがりの河童が食べてしまったのだと…
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我が家には河童が現れる…
作者御姐
短編です。
他愛のない話です。
良ければ御高覧下さい。