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短編1
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高速瞬き

取引先の事務の子がしてくれた話。

古い部屋を借りたときなどによく、妙な気配がしたり誰かの視線を感じたりすることがある。

そんなとき、気のせいかそれとも本当にナニかいるのかを調べる方法に「高速瞬き」というのがあるらしい。

やりかたは、夜だれもいないとき部屋の中央に立って、パチッパチッパチッパチッと強制的に瞬きを繰り返しながら、反時計回りにゆっくり三回転する。

このとき視線はやや上に向け、天井の縁を目で追ってゆくようにやると良い。

もし本当に幽霊がいたら、三回転するあいだに必ず視野の端にその姿が映り込むという。

「実際にやってみた?」と訊くと、事務の女の子は「もし本当になにか見えたら怖いし」と首を横に振った。

ただ彼女にこの話をしてくれた友人が、自分の部屋で実証試験をおこなっていた。

居間と寝室では何も起こらなかったが、ダイニングの電子レンジの上に中年女の首が乗っているのをはっきり見たという。

瞬きを止めると見えなくなったが、以来なんだか電子レンジを使うのが怖くなり、結局その部屋は引き払ってしまった。

ちなみに引っ越してまだ三ヶ月と経っていなかったが、なぜか敷金と礼金が全額戻ってきたらしい。

Concrete
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