死神と俺の日常 #38
出る旅館 1日目!
主人公を鈴木ではなく魎斗(リョウト
弟を魁斗(カイト、と訂正しました。
漢字が似てるって?そこは覚えてくださーい
死神が金魚掬いの大会で優勝したおかげで
箱根の2泊3日をゲットした我々はバスに揺られている。
魎斗は、だろうなっていう感じのパンフレットを見ながら死神に質問する。
「なあ、今日泊まる場所って幽霊が出るって有名な旅館だよな?」
ヘラヘラする死神の横で乗り物酔いを堪える魁斗
「そうらしいね、うん。うん。」
「幽霊がいたら私が天界に連れ帰りますよ!だから大丈夫だって」
「ま…だ…ヅカナイノ?気持ち悪いんだけど」
あ、忘れてたわ魁斗が乗り物酔いが凄いことを。
「酔い止めは飲んできたんだろ?」
魁斗は遠い景色を見つめ唾を飲み込む
「ゔん…ヤバイ…吐きそう」
流石にクネクネした山道が続けばそりゃ誰だって酔うよな。
あれから2時間後…
魁斗は見事にエチケット袋に盛大にぶちまけた。
魎斗と死神は慌ててバスの窓を全開にして空気を入れ替える。
そうこうしているうちに、例の「出る旅館」に着いた。
魎斗は欠伸をしながら荷物を持ってバスから降りる。「やっと着いたかー!風情がある旅館だな」
死神はパンフレットを片手に金魚帽を被り
「キター!この旅館には金魚が沢山飼育されていて、中には1匹数百万円もする金魚がいるそうですよ!」
興奮する死神を他所に二人は旅館に入っていく
「バスでの長旅で疲れたし、温泉でも入りに行こうぜ〜」魎斗はキャリーバッグをコロコロと引っ張り受け付けを済ませようとカウンターのベルを鳴らす。
チーン……
「あれ?もう一回押してみよう」
チーン…………チーン!チーン!チーン!
魎斗は何度もベルを鳴らすが一向に誰も来ない
ふと、長い廊下に女将らしき老婆が
こちらに向かって歩いて…る?
「はいはい、ちょいと待ってね〜」
女将を待っているが、一歩一歩が亀のように遅い。まあ実際には亀の足って案外早いんだよね。
10分後…「ようこそ、「出流旅館」へ。ご予約の鈴木様ですね?」
なんだかんだチェックインを済ませて部屋に案内され、荷物を置いた一同は部屋の畳の匂いに癒されながら休憩していると…
死神が部屋で大きな窓から身を乗り出し金魚が優雅に泳ぐ管理の行き届いた池を眺めていた。
「いや〜最高!そしてエクセレンッ!」
興奮し過ぎた死神は鈴木達が気付かないまま
金魚が泳ぐ池に真っ逆さまに落ちていった。
魁斗は吐き疲れでグッタリしながら
「え?あれ?さっきまでいたのに」
魎斗は畳の上で寝転がりメダカ専門雑誌を読みながら
「金魚でも見にいったんじゃないのか?壁をすり抜ける事なんて朝飯前だろ」
すると部屋のドアが開き、そこに立っていたのは
ビチョビチョに濡れた死神が立っていた。
片手に濡れた金魚帽を持ち半泣き状態で風呂場に入っていった。
「なるほど窓から落ちたな、あいつ」
魎斗は雑誌を片付け、タオルと着替えを持ち
温泉に向かう準備をして魁斗と一緒に部屋を後にした。
「もう最悪ですよ!泥だらけになるし、お気に入りの金魚帽も汚れちゃうしって、あれ?」
部屋には誰もいない…死神は二人を探しに部屋を出て旅館内を散策することにした。
死神はひと気のない両脇の長い廊下を見て
「右ですね」なんの根拠もなく選び歩き出す
出流旅館は様々な大きさの水槽に巨大な金魚が水槽の中を優雅に泳いでいた。ほとんどの水槽は壁に埋め込まれており、中には錦鯉が泳ぐ水槽も廊下の地面一面に埋め込まれ錦鯉の美しい背中を魅せながら泳いでいた。
「なんとまぁ〜豪華な旅館だこと」
死神は一つ一つ関心しながら二人を探していた。
その頃、すでに魎斗達は部屋に戻っていた。
厳粛な雰囲気が漂う廊下に差し掛かる
「なんか視線を感じる」
小さい椅子に座る小さいお爺さんが死神をジッと見つめていた。
「ど、どうしました?あれ、もしかして幽霊さんですか?」
お爺さんは杖をついて、ゆっくり立ち上がる
「失礼な人だな、ワシを幽霊と言うなんて」
死神は頭に手を当て申し訳なさそうに笑う
「失礼しました、人を探してるんで」
お爺さんはゆっくり歩き出し忠告する
「この旅館は広い…迷わんように気を付けなさい」
「はい、あのトイレって」
死神が振り返ると、もうそこにはお爺さんは居なかった。幽霊だったのか、ただ単にお爺さんの足が速いのかを考えて歩いていると目の前に太った男が現れた。
このままでは通れないほどに太っている。
すれ違うことなんて絶対にできない
その時だった、男が死神に気付き
体が瞬時に縮むと死神はびっくりした表情で
横を通り過ぎる。
「び、びっくり人間!?あれは神業ですね」
あんな人間がいるのかと感心しながら
温泉の入り口になんとか辿り着いた。
「人の気配は…ないですね」
番台に、座っている場違いにも程がある存在感を放つ巨大なカエルに気付いた。
カエルが死神をジッと見つめ
「そこのお方よ、死神だな?」
「え、あ、はい。そうですけど、何か?」
「何用で、この旅館に来た?」
死神は金魚掬い大会のチラシをポケットから取り出す。
「この大会に優勝して、宿泊券を貰ったんです」
「助けに来たのではないのか…。ならば、早く立ち去るのだ。悪霊が巣食う旅館から!」
死神は何かを感じ取り背後を振り返ると、大勢の幽霊達が歪んだ顔をして助けを求めていた。
「まずい!二人が部屋に!」
部屋に通じる廊下を走り出すが悪霊の力なのか前に進まない。
その頃…魎斗達はジェンガで遊んでいた。
「これを抜いて乗せればパーフェクトだよ!」
「いやいや、無理ゲーだろ」
最後の1本を抜き恐る恐る上に乗せようとした瞬間に部屋が激しく揺れ、ジェンガが無残にも崩れてしまった。
「アアアアァァ!クソ!なんだよ今の揺れは!」
「ただの地震だよ」
10分後…再びパーフェクト間近の残り1本を魎斗が抜こうとした瞬間!再び地震が襲う。
魎斗は死神の仕業だと思い部屋中を探し回る
「あのカマ野郎!どこにいやがる?出てきやがれってんだ!」
返事のない静けさに魁斗は魎斗にジェンガを再開しようと促す。
「今度は行けるって」
10分後…やっと再びパーフェクト間近になり魎斗は邪魔をされまいと辺りをキョロキョロしながら最後の一本を乗せようとした瞬間に部屋の扉が勢いよく開き、ジェンガは崩れてしまう。
扉を開けた犯人はニヤケ顔で片手に鎌を持った悪霊だった。
「残念だったな、人間め!。貴様たちの魂は、この悪霊ドゲザ様のもの…!」
魎斗は聞くこともせずジェンガを手に悪霊ドゲザに投げつける。
「痛い痛い!ジェンガをそんな風に使うんじゃない!」
魎斗はジェンガを手の平でジャラジャラ転がしながら、再び投げる体勢に入る
「何度も邪魔をした罪…ここで償え!バカヤロウー!」
ジェンガを悪霊ドゲザの口に勢いよく押し込み
そのまま床に叩きつける。
「わかった!わかったから!もう邪魔しないから!」そう叫ぶと霧のように消えていった。
「あの人間め…絶対許さん」
その頃、死神は歩いても歩いても進まない廊下に
未だに囚われていた。
「何なんですかー!この廊下は!ランニングマシンみたい…!」
何かを閃いた死神は瞬間移動をしようとするが不思議な力で使えない。
「歩いてダメなら!」
地面から少し浮遊して物凄い速さで前に進むが
何も進展しなかった。
「もうダメだ、椅子があるし休むとしましょう」
その頃、魎斗達の部屋に予想外の訪問者が現れた
「我輩は偉大な霊能者胡散角斎である!先程の騒ぎを嗅ぎつけ…いや感じ取った!」
後半に続く!
作者SIYO
いつもご覧いただきありがとうございます^_^
頑張って書いていくんで、生温かい目で見守ってください
私の暇潰しが、誰かの暇潰しになればいい。