短編2
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幻のエンディング

ゾンビと戦う協力型マルチプレイゲーム『R4D2』。

このゲームには、延々と出現しては襲い掛かってくるゾンビの群を他のプレイヤーと一緒に銃やバットで倒したり、逃げたり、篭城したりしてひたすら生き残り続けることを目的としたサバイバルモードがある。

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プレイヤー達は最終的には必ずゾンビにやられて死ぬわけなのだが、99時間以上生き残っていると突然クリアとなり、幻のエンディングが流れるという噂があった。

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時間が経つにつれゾンビが一度に湧く数は増えていき、なかなか死ななくなっていく。

くわえて武器やアイテムも消費してだんだんなくなっていくため、99時間も生き残ることは到底無理な話だった。

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友人のAは、その噂を確かめようと動画サイトで生配信しながらサバイバルモードにチャレンジした。

実は私もプレイヤーの一人として参加していたのだが、お恥ずかしながらたった2時間半でゾンビにやられてしまったので、Aの生配信を見る側に回った。

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Aは他の2名のプレイヤーと一緒に戦い続けた。

しかし5時間後、1人がやられてしまった。ショットガンを撃ちつくした彼はゾンビの群に次々と襲われ食べられてしまった。

さらにその3時間後、もう1人もやられてしまった。彼は火炎瓶を足元に叩きつけ、多くのゾンビを道連れにして燃えつきた。

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Aはその後もたった1人で生き残り続けた。

ゾンビを倒すスタイルから逃げ隠れるスタイルへと変わっていった。

私は自分の生活があるためAの生配信を全て見ることはできなかったが、仕事が終わったら確認するようにしていた。

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そしてAは、とうとう98時間も生き残り続けた。

「あともう少しで99時間を越える……こえる……コエル……」

Aの疲弊しきった声が、ボイス用マイクを通して聞こえてくる。

そして99時間を越えた。

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Aの使いキャラの動きが止まる。

ゾンビの群が、そのキャラに喰らいつく。

途端、低いうなり声と鈍い音が聞こえてきた。

ゲームの効果音ではなくAのボイス用マイクが拾った音だった。

嫌な予感がした。私はAの家に直行した。

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Aは机に突っ伏して死んでいた。

死因は極度の疲労による心臓マヒだった。

Aは確かに突然クリアしてしまったのだ。

この現実から。

彼は今、幻のエンディングの中にいるのだろうか。

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ところで、これは救急隊員にも警察にも話さなかったことなのだが、

私がAの遺体を目撃した時、その体には噛み付かれたような痕が至るところにあったのだった。

しかしその痕はすぐに消えてなくなってしまったのだった。

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