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短編2
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ヒルダルコ

友人のAが死んだ。

その前日、私はAと会っていた。

彼は私に言った。

「ヒルダルコって知ってるか?」

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Aの夢の中にバケモノがでたという。

不気味な四足獣。錆びた釘に似た硬質の毛に覆われた全身。

顔には目がないのだが、七つの巨大な目玉が硬質の毛の合間からギラギラと覗いている。

Aを見ている。

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Aは、そのバケモノに近づいていく。

すると大勢の人の声が、バケモノの目玉から聞こえてくる。

声はやがて一つの言葉を連呼しだす。

ヒルダルコ、ヒルダルコ、ヒルダルコ―――!

そして目が覚めたという。

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ところで、Aの部屋には水槽があるのだが、その中に、まったく見覚えのない宇宙飛行士の人形が沈んでいたという。

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Aの死因は心不全。

彼の話していたヒルダルコとは何だろうか。

調べてみたが、少なくともネットでヒットする記事は一件もなかった。

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数日後、友人のBが死んだ。

その前日、Bから電話がかかってきた。

彼は私に言った。

「ヒルダルコって知ってるか?」

「バケモノの目玉から聞こえてきたのか? 夢の中で」

「お前も同じ夢を見たのか?」

「いやAから聞いたんだ」

「そうかお前もか。お前もAから聞いたのか」

「何なんだヒルダルコって」

「さあな。ところで……風呂の中に宇宙飛行士の人形が沈んでいるんだ」

 そして電話は突然切れた。

 Bの死因も心不全……。

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それから数日後、とうとう私もバケモノの夢を見た。

Aの夢と同じだった。

錆びた釘に似た硬質の毛の合間から、七つの巨大な目玉が連呼している。

ヒルダルコ、ヒルダルコ、ヒルダルコ―――!

そして目が覚めた。

喉がカラカラだった。

水を飲みたい、水を飲みたい、水を飲みたい―――!

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私は飲みかけのマグカップを手にとった。

その中に、まったく見覚えのない宇宙飛行士の人形が沈んでいる……。

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@むぅ さん
読んでいただきありがとうございます。
本作は「じわじわっと恐怖を感じる」をメインにしてわざと短くし、謎多めだったのですが、これをパイロット版として改めて書き直しても面白いかもしれませんね!

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