江古田の下町には小さな地下街があるのだが、その地下街の奥にあるバーのオーナーから聞いた話。
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まだ冷戦の頃、若きオーナーは友人達と群馬県の山奥にキャンプに行った。
辺りには民家も灯りも何もなく、とにかく静かで夜空が綺麗。
そんな中、オーナー達は真夜中になっても好き勝手にどんちゃん騒ぎしていた。
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すると、夜空に突如、“飛翔体”が横切っていった。
某国の弾道ミサイルのような兵器ではなく、スクランブル発進した自衛隊の戦闘機でもなく、その飛翔体は“白い光でできた土偶のような巨人”だった。
それは夜空をぬるぬるとゆっくり飛んでいき、やがて山の丘陵に隠れて見えなくなった。
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オーナー達はしばらくポカーンとしていたが、全員で目撃した異常な現象にじわじわと恐怖が混み上がってきてパニック状態となり、テントに逃げ込み朝になるまで皆で震えた。
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夜が明けると早々にテントを片付けバイクにまたがり下山した。
麓の村まで戻り、一息つこうとしたが、ある家に数台のパトカーと救急車が集まっていて騒然としている。
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村人にきくと、その家の男が死んでいたのだという。
男は以前から相当なキチ○イだったらしく、毎夜毎夜、奇声をあげたり路上で全裸になってロシア語の歌を歌っていたりと、村の中で最も危険な男だともっぱらの評判だった、とのこと。
そして、男は誰も知らない神様を祭っていたのだという。地蔵のようなものまで庭に造っていたらしい。
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その地蔵と思われる異様なオブジェが、男の家の庭に置かれているのをオーナー達は見た。
それは、オーナー達が山奥の夜空で見た“白い光でできた土偶のような巨人”にそっくりだった。
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作者わたる
規模の大きな異常現象と、等身大の人間の異常行為が関連していると匂わせるにとどめ、想像の余地を楽しんでもらえるよう調整しました。