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長編8
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S君の先輩

書斎室でいつもの資料の整理をしていた

今日は楓と葵がお手伝いをしてくれている

S君は写真のチェックをしていた

4人もいるとこの部屋はさすがに狭い

もうそろそろ子供たちは寝る時間だ

私は楓と葵にお手伝いのお礼を言った

「うん、パパ、お休み」

「パパたち!!早く寝るんだぞ!!」

楓と葵は手をつないで部屋を出て行った

S君が隣に来てしゃべりはじめた

S君の事務所の先輩カメラマンが1週間ほど事務所へ来てないということだ

その先輩というのはS君より5つ上でカメラマンとしての技術は誰もが認める実力派だということだ

だが、性格が少し変わっていて事務所内でもあまり評判が良くないらしい

というのもモデルとカメラマンはほぼマンツーマンで仕事をするのがそこの事務所の方針だということだ

ところが、この先輩はそういう規則をたびたび破っては問題を起こしているという問題児だ

例えばAというモデルにはBというカメラマンが1か月なら1か月の間はずーと撮影するのが決まりなのだがこの先輩はAというモデルをいきなりBというモデルに突然変えて撮影するという完全に規則違反なのだ

もちろんAというモデルは怒るわけだ

説明もなしにいきなり変えられてはAというモデルは仕事がなくなり収入がなくなる

怒り心頭になるのもよくわかる

だがこの先輩はそれを平気でやる

この前もS君はその先輩からF子の撮影をしたいからF子の撮影許可がほしいと先輩から頼まれた

当然、S君は断ったわけだ

そしたら先輩が怒り出してS君と大喧嘩になった

なんとか断ることができたが同じ事務所の人間なので後味が悪い

やはり・・・・というかF子に直接撮影の許可を取りに来たとF子から聞いてまた怒りが湧いてきた

F子はこの先輩を信用はしていない

基本的にF子はS君としかパートナーを組まないと事務所には話をしている

それは先輩も知ってるはずだ

それを知っててF子にちょっかいを出してきたのだ

S君の怒りは頂点に達したらしい

そのことで先輩と話し合おうと事務所へ行ったわけだが事務所からその先輩が1週間も顔を出していないと聞かされた

まぁ・・・どうせ・・・どこかのモデルと一緒に勝手に撮影旅行でも言ってるんだろうと事務所の人間から言われたそうだ

そういうことも平気でしているということだ

「まぁ・・・その先輩に会おうと事務所へ行って肩透かしをくらったよ

せっかくいい事務所なのだがその先輩一人のために事務所の評判が下がってるんだよな」

「そうなんだ、俺はよくわからないけど大変だな」

「カメラマンとモデルは信用が一番なんだよ

長い撮影になるからね

特にモデルは撮影されていくらになる世界にいるんだから

それを勝手に変えられたらモデルは収入が無くなるんだよ

まったく・・・」

ため息をつきながら写真のチェックをまた始めた

突然、S君のスマホにメールが届いた着信音が鳴った

すぐにS君はメールを見た

徐々にS君の顔が険しくなっていった

「F!例の先輩からのメールだよ・・・ちっ!なんだこの写真は・・・・

どこかのモデルといちゃついてるんじゃなかったのかよ

うっ・・・肝試しかい・・・」

この先輩の悪い癖はプレイボーイなのだ

気に入ったモデルを口説いては・・・ということなのだ

だからF子の撮影許可の話をされた時には絶対にやばいと思ったわけだ

S君やF子の共通の信用できるカメラマンには条件付きながらF子の撮影許可をすることはある

だが・・・この先輩だけは絶対に無理だ

「ポイ捨てプレイボーイ」と陰で言われているからだ

1回だけの関係ですぐにポイ捨て

2度とそのモデルを使わないというスタンスなのだ

もちろんモデルたちはよく知っているからこの先輩との撮影はみんな断られている

だから最近はカメラマンとしてはほぼ仕事はしていない

その先輩からメールがきたのだ

私もそのメールに添付していた写真を見たが・・・どこかの廃墟だろう

そこで3人の男と先輩が写っていた

廃墟の中の様子を写していた

およそ30枚ほどの写真が添付されていた

メール本文には

<<

俺の連れと一緒に面白半分で有名な心霊スポットへ来た

けれど・・・・廃墟の中で迷ったみたいだ・・・外見ではそんなに広いとは思わなかった

けど・・・調子こいてどんどんその廃墟の中を歩き回った

3人とも・・・なんか気分が悪いと言い出した

俺も・・・吐き気がしてきた

気分が悪い・・・・

>>

と書いてあった

「なんで、俺にわざわざメールなんか送ったんだよ

迷惑だよな、まったくよ」

と怒りのS君

いきなりF子が部屋に入ってきた

「Sアニキ!!!私の嫌いな人からメールが届いたよ

なんで私のメールアドレスを知ってるのよ

それも気色の悪い写真もついてきてるし」

とF子も怒っていた

「俺のスマホにもメールが来たんだよ

マジでやめてくれと言いたいぜ」

私はF子のスマホのメールを見させてもらった

内容はS君と同じだった

今日の資料整理はここまでとしよう

私たち3人はリビングへ行った

一体どんな意図で送ってきたのか

嫌がらせなのか・・・

「あの先輩なら嫌がらせだろうぜ

F子を借りれなかった腹いせで送ってきたんだよ」

「私もそう思う

マジで嫌い

私のところに来たときなんか鳥肌がたったよ

陰気臭いというか・・・話したくない相手だよ、アニキたち」

「おいおい・・・珍しくF子が怒るとはな・・・」

「F・・・F子が怒るのも無理ないぜ

あいつ・・・」

とS君がしゃべり始めようとしたときに

リビングの明かりが突然消えた

「おいおい・・・明かりが消えたぞ・・・びっくりした」

「アニキ・・・ちょっと寒気がする」

「ブレーカーが落ちたのかな・・・俺が見てくるよ」

とS君がブレーカのある電気盤のところへ行った

しばらくすると戻ってきた

「ブレーカーは落ちてなかったよ・・・蛍光灯が切れたのかな・・・」

S君は新しい蛍光灯を取りに行った

「アニキ・・・なんかもう一人・・・この部屋にいるような気がするけど」

「え!?人の気配がするのか?」

「うん、いる・・・」

「マジかよ・・・暗くてよくみえないけど・・・スマホの明かりじゃ部分しか照らせないし」

私は人の気配は感じられなかった

F子には何かを感じたらしい

「アニキ・・・」

と珍しくF子の方から手をつないできた

いつもなら近寄るだけで「ブサッ!アニキ、あんまし私に近寄らないでよね、シッシッ」と言われてS君もクスクス笑っていた

だけど・・何かを感じているらしく手を強く握っている

「あったぜ、明かりをここに当ててくれ」

とS君が戻ってきた

スマホの明かりを頼りに古い蛍光灯と交換をした

「これで点くはずだ」

明かりが点いた

ギャァーーーとF子の悲鳴があがった

そのままF子は気絶した

私は慌ててF子の体を引っ張って床にそぉーと置いた

F子が見ていた方向に目を合わせた

リビングの窓の外に見知らぬ男がこっちを覗いていた

S君も気づいて方向に目を向けた

「わぁ!!!アイツ!!!何でここにいるんだよ!」

と叫んだ

その見知らぬ男は部屋の様子をしばらく見ていた

私はすぐにリビングから玄関へ向かい外へ出てリビングの窓あたりへ走った

しかし・・・着いた時にはその見知らぬ男はいなかった

私はすぐに門の方へ走ってその男が来るのを待った

来なかった

おかしい・・・出口は玄関先の門しかない

私がリビングを出るのと同時に家から出て行ったのか

外と家の中は距離的にはほぼ同じだから私が玄関を出た時に姿を見れるはずだ

私は姿が見えないのを確認してすぐに門の方向へ走っていったのだ

もし家の中庭のある方へをまわって逃げても必ず門のところへ来るはずだ

それともどこかに隠れているのか

私はゆっくりと家の周りを探索した

誰もいなかった

わたしは諦めてリビングへ戻った

あいかわらずF子は倒れたままだった

「F!いまさっき覗いてた奴な、先輩だよ

廃墟にいるんじゃないのかよ

写真の日付のデータを見ると1時間前にメールを送ってきてるんだよ

この近くの廃墟なのかな・・・廃墟ってあったかな・・・」

「覗いてたやつな、家の周りを探したけどいなかったよ」

「うそだろ・・・Fが出て行った後もあいつジィーと部屋を覗いてたんだぜ

俺さ

F子のことが気になって

F子を見てすぐに窓を見たんだよ、そしたらいなくなってたんだ

そのあとにFの姿が見えたからてっきり鉢合わせになったんだろうと思ってた

いなかったのかよ・・・おかしいよな・・・」

「だろ、絶対に鉢合わせになるはずなんだよ・・・」

突然、S君のスマホが鳴った

すぐにS君は応対をした

どうやら事務所からかかってきたようだ

S君の顔が段々と蒼白になっていった

事務所との話を終えると

「おい!F!・・・大変なことになったようだ

アイツ、いや先輩が死んだらしい」

「え!?死んだ?はぁ?」

「事務所の話だと先輩は3日前に廃墟の中で首を吊っていたらしい

ほかにも3人が廃墟の中で死んでいたらしいんだよ」

「首を吊った・・・って・・・」

「俺もな信じられん・・・いまさっき覗いていた先輩のことを事務所の人間に話したんだが信用されなかったよ」

「だろうとおもうよ、死んだ人間が窓から覗いていたなどと誰も信じないだろうよ」

「だよな・・・でも俺たちははっきりとアイツを見たんだよ」

「そうだよはっきりと見た・・・」

「まさか!!!幽霊だったのかよ

え!・・・ちょいまち・・・このメールは誰が送信したんだよ

送信記録では1時間前だぜ

マジ・・・・どういうことだよ」

「わからん・・・その先輩とやらが幽霊となってメールを送信したのかな

ありえん・・・いくら私たちがいろいろな怪奇な出来ことを体験しているからといって死人が送信するなどありえん、物理的に操作できないはずだ」

頭が痛くなってきた

説明がつかない

F子が気絶から目を覚ました

「アニキ・・・・私、気絶したのかな・・・」

「大丈夫かよ、倒れたんだよ」

「ごめんね・・・まさか、アイツが窓を覗いてるとは思わなかったから

私ね、なんとなく気配がした方向の窓を見たんだよ

そしたら、アイツ、ニヤッと笑ったんだよ

気色悪かった

口元でなにか言ってた

なんとかなにをしゃべっているのかを理解したときに

アイツ、またニヤッと笑っていたんだよ

そのなにかをしゃべっているのかを分かった時に

気色悪いと感じちゃってね・・・そのまま意識が無くなって」

「その何かをしゃべっている内容はどうだったの?」

「アニキ・・・あの・・・しゃべっている内容は・・・

「アキラメナイ」と私は解釈したけど・・・」

「うわぁっ!そう言ってたのかよ、アイツ・・・・」

いったい何を「アキラメナイ」と言ったんだろう

全然わからない

結局眠れずに朝を迎えてしまった

そのあと、S君たちは事務所を変えた

しかし・・・いったい誰がメールを送信したんだろう

Concrete
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