中編3
  • 表示切替
  • 使い方

なりすまし。

今回は娘のユッコが体験した不思議なお話。

その日は年に数回のお楽しみプロ野球観戦のため、私達家族三人は甲子園球場に来ていた。

「さあ君がヒーローだ〜、鳥谷敬〜♩」

「おっシャァ!いけ!鳥さん!」

ブー、ブー、ブー、ブー、、、、

娘のユッコのスマホが振動、友達からのラインのようだ。

「・・・なんでメールやねんな(笑)ラインで送ってくりゃぁええのに(笑)」

苦笑するユッコ。

へぇ、今時メールで送ってくる友達かぁ。

珍しい。

「お〜い!高山〜せっかく鳥谷出たんやから繋げよ〜!」

「やった!セーフ!」

はしゃぐ私達両親の横で娘のユッコは律儀にメールで返信している。

「これ、ユッコ、せっかく甲子園来とんやから、友達とのやり取りは後にしなさい。」

観戦を邪魔され、不機嫌そうに注意する主人。

「パパ、大学卒業したら友達ともなかなか会えんねんから許したりぃよ、ね?ユッコ。」

ユッコの肩を持ってしまう私。

「・・・そやな、パパも久しく友達と会ってへんわぁ。」

「な?パパも、もし連絡来たら嬉しいやろ?」

「うん、あ!糸井盗塁成功!」

「いぇ〜い!」

返信作業に必死な娘を置き去りに、私達夫婦はヌンチャク叩いて周りの観客と大騒ぎ。

「・・・・・。」

「ユッコ?」

「どなしたん?ユッコ。」

娘のユッコが固まっている。

固まった表情のまま私達両親にスマホの画面を見せる。

友達のリナちゃんとのやり取りのようだ。

『ユッコさっきから誰とメールしとん?私いっつもラインやし、今日は甲子園やから絶対邪魔せんといてってユッコが言うてたから私は何にも連絡してへんよ?』

「リナからメール来たから返信したのに。メールなんてオカシイと思ってんけど。」

「リナちゃんにメールのスクショ送って確認してみ。」

娘のユッコは友達のリナちゃんについ先ほど来たリナちゃんからのメールを送付元、日時もきっちり見てもらうためにスクショして送った。

せっかく阪神がエエとこやのに不気味なメールのせいで気が散って仕方がない。

「あれ?ユッコ?」

娘のユッコの姿がない。

「トイレでも行っとんちゃう?それ、わっしょいわっしょいわっしょいわっしょい!かっ飛ばせ〜北條!読売倒せ〜オー‼︎」

私達夫婦はまた観戦モードに戻り、必死で歌う。

何分経っただろうか。

神妙な顔をして帰ってきた娘、ユッコ。

聞けば、リナちゃんと電話で話してきたそう。

リナちゃん曰く就活以外ではメールを開かないそうで、それは娘のユッコを含む最近の学生はそうらしい。

なのでアドレス帳自体も触らないし、ましてや最近はラインという優れものがあるのに、そっちを使わない手はない、とリナちゃんの言い分。

成りすまし?

大学で直接会ってリナちゃんに見せようと、メール履歴を開くと、甲子園で送受信した2人の履歴が消えていたと言う。

リナちゃんが送った『誰とメールしてるの?』メールも、リナちゃんが受け取った、娘ユッコからのスクショメールも消えていた。

でも確かに私達夫婦も見てるし、リナちゃんにもスクショでやり取りを送ったし。

証拠になるメールを娘がわざわざ消すのもおかしいし。

分からないことだらけだが、結局真相は分からず。

先日もリナちゃんが我が家に遊びに来て、甲子園での話になり、色々分析してみたが、どうにも分からないままであった。

一体なんだったのだろう、あのメールは。

一番嫌なのは、阪神タイガースの応援を邪魔されたことなのは、娘には内緒だ。

Normal
コメント怖い
2
3
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

@小夜子 様
ありがとうございます!
オレンジ色した生霊笑!
はい、多少の脚色はありますが、全て実話です。
また今年も観戦ならぬ、参戦に行って参ります(^^)

返信
表示
ネタバレ注意
返信