今回は引っ越した戸建て住宅での出来事をお話します。
私達家族は両親と私、弟、犬で暮らしていました。
父の経営する会社の近くに居を構えたのです。
この住宅は、土地を買い取り、そこに注文住宅を建てたわけですが、街にあるにもかかわらず、海が近いせいか静かでした。
さて我が家にはケビンという犬がおりましたが、25kgを超える体躯にシェパードのような精悍な顔、体毛は濃いブラウンとかなりの強面でしたが、心優しく温厚でしたのでどこでも人気者でした。
最初に気づいたちょっとした異変はケビンがまだ生後7〜8ヶ月の時でした。
我が家は朝、ケビンをお庭に出して、余程の悪天候などの事情がない限り、暗くなる前まで家に入れませんでした。
昼間はご近所の方も相手になってくださり、ケビンも退屈しなかったようです。
ある日、かかりつけ動物病院へ行った時の事。
フィラリア予防薬を飲み終え、受付に母が先に精算にいきました。
受付看護師さんと母の会話が聞こえてきます。
私と弟はケビンを連れて遅ればせに受付へ行きました。
すると、看護師さんがいつものようにケビンに話しかけてくれました。
「ゆ〜ちゃん、ゆ〜太郎君、お疲れ様。そう言えばケビン君は昼間、いつもおじいちゃんに遊んでもらえていいね。」
「ワン!」
一同「?」
最近祖父が来た日はなかったし、アポなしで来ることもまずない、来てこちらが留守なら後から連絡があるはず。
「丁度ケビン君のお家の前を通ったんです。そしたらおじいちゃんと遊んでて。」
「もしかしたらお向かいのお爺ちゃんかもね?だっていつもケビンと遊んでくれるんだよ。」
弟の言葉に一同納得、その場は収まりました。
お向かいの老夫婦は私達姉弟とケビンをとても可愛がってくださりました。
だからお留守番のケビンの相手をしてくれたのかも知れない、そう思いました。
ケビンは庭ではノーリードでしたので柵の側でよく皆さんに遊んでもらってましたから。
それから数日後、朝から雨がきつく、ケビンはリビングで寛いでいました。
母がキッチンで作業をしていると、ケビンが甘えた声を出していて、そっと見てみると。
誰かに頭を撫でられている素振りをするケビンがいたそうです。
母が「ケビン?」と声かけすると、こちらに首だけ向けて、尻尾を振ったそうです。
月日は流れ、私は小学校高学年になりました。
その日は母と私とケビンだけでリビングから雨空を見ていました。
「雨、止まんね。」
私がそう言った時。
ドンッ!
真上から足音がしました。
リビングの真上は私の部屋です。
母と顔を見合わせ、ケビンを抱いて固まってると。
ギッ ギッ ギッ• • •
かなり身体の大きな人が歩き回る音がします。
確かめようと、ケビンを連れ、私は父のゴルフクラブ、母は弟の金属バットを持ち、二階へそっと上がりました。
結果、無人で、鍵も全てかかっていました。
念のため母に二階に残ってもらい、私とケビンで三階も見ましたが、鍵もかかり、無人でした。
「足音、したやんね。」
「うん、した、」
「ケビン無反応やったで?」
「泥棒やったら吠えるはずやんね。」
というのも、ご近所に入ろうとした空き巣をケビンが吠えたて、未然に防いだことがあるからです。
「パパが帰ったら報告せなあかんね。」
帰宅した父に今日あったことを報告すると
「誰もおらんのやったら家鳴りやろ。ま、ケビンはいつも側に置いといた方がええやろ。」
その日から、ケビンを家に入れる時間は多くなりました。
私の部屋で足音がしたので、正直部屋にいるのが嫌でした。
元々リビングでケビンと過ごす方が多かったのですが、受験を控えていたので自室にて勉強してました。
東向きに机を置いており、真横の南にバルコニー。
机の北側にクローゼットがあり、その前を通って廊下に出る間取りでした。
机に向かっていると自分の左肩に気配を感じました。
恐る恐る横目で見ると、見たことのないお爺さんが覗き込んでました。
声も上げられず固まる私。
すると
ガタガタガタ!
クローゼットの扉が震えています。
「パパ!ママ!助けて!」
無力な小学生だった私は頭を抱えて机に伏せ、泣いてしまいました。
私の泣き声に反応したのかケビンが上がってきました。
ところがケビンは私とクローゼットを交互にクンクンして、終いにはクローゼットの扉の隙間に鼻を押し当て、クンクン甘えているのです。
半ばパニックに陥ってた私は、泣きながら階下の父母の元へ降りて行きました。
このあと両親に私の部屋を見てきてもらいましたが、そこには信じられない光景が• • •。
続きは次回。
ご拝読ありがとうございました。
作者ゆ〜
和田さん①
読んでくださりありがとうございました、
この頃住んでいた家は新築で、特に曰く付きとかはなかったのですが。
和田さん②で、その真相が明らかになります。