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「日本海で発生した寒冷低気圧の影響で、関東地方から北信越にかけて明日の朝まで大雨となる予報です。極力無用の外出は控え、外出中の方は川などには近寄らないでください」
関東地方には大規模な大雨が降っていた。女子高生ハルはバス亭のベンチで、雨風が少しでも収まるのを待っていた。
「ダメだ、繋がんない・・・バイト中かな」
塾から帰る途中、バス停から降りたところで、あまりの強風に傘が壊れてしまい、帰る手段を失ってしまったのだ。
バス停から家までは結構な距離があり、歩いていくにはかなり危険が伴うことから、家族や彼氏に助けを求め連絡してみたが、まったく不通だった。
「もー、どーすりゃいいんだよー」
このままひたすら少しでも雨が収まるのを待つしかないのかと、彼女は途方に暮れていた。
「それにしても、ひどい雨ですねえ」
「え?」
どこからかした野太い声に、ハルは声の方を見た。
傘を刺した大柄な男性が、バス停の外に立っていた。
大き目の傘をしており、顔は全く見えない。
(何このオッサン・・・キモいんだけど)
「は、はい・・・」
心配してくれているのもかもしれないが、思春期の少女にとって見知らぬ中年男性から話しかられることは、「怖い」「気持ち悪い」という感情が先行してしまう。
しかし、ハルは奇妙なことに気が付いた。
男性は嵐の中にいるにもかかわらず、全く風の影響を受けていない。
まるで小雨でも受けるかのように、直立不動で立っている。
徐々にハルは、背筋が寒くなってきた。
カン、カン、カン、カン・・・
踏切の音が聞こえてきた。
このバス停の近くには、道路に面した踏み切りがあった。
数年前、その踏切では凄惨な事故があったらしく、踏切の前には花が供えられていた。
「雨の日になると思い出してしまうんですよ、あの日のことを」
「あの日、現場にいたんですか?」
「ええ、居合わせていました」
ハルは少し落ち着いたのか、言葉を交わした。
「あの・・・もし良かったらでいいんですけど、どんな事故だったのか、教えてもらえませんか?」
男性はうなずいた。
「あの日もこんな激しい、雨の夜でした。被害者の男性は泥酔しており、正常な判断が出来なくなっていました」
ハルは唾を飲み込んだ。
「自殺とかじゃなかったんですか?」
「いいえ。あれは事故です。男性は踏切を普通の通路と見間違え、踏切の中に入ってしまい、疲れ果ててそこで倒れてしまいました」
風と雨の音に混じってなにやら人の声が聞こえた気がしたが、聞き取れなかった。
「そこに電車が通りかかりました。晴天の日ならブレーキを架けて緊急停止することが出来たかもしれない。しかしあの悪天候の中で、彼の姿をはっきり認識できなかった。
おびただしい血しぶきが車体を染めた時、初めて分かったんですよ。人をはねてしまったという事がね」
「その人は助かる可能性はなかったんですか?」
「無理ですよ、だって首が飛んでしまったんだもの」
「ひいっ!」
「現場は血みどろの、文字通り地獄絵図でした」
「ひ・・・人が轢かれたぞ!」
「く・・・首が吹っ飛んだぞ!」
「おい!誰か救急車呼べよ!」
「えっ?」
彼女は耳を疑った。
今の野次馬の声は、その男から聞こえてくるものではなかった。
明らかに近くから、それもはっきりと聞こえてきた。
ふと踏切の方をみやったが、電車など通っていない。
何より、踏切の周りには人っ子ひとりいなかった。
「どうしました?」
「すみません、何か聞こえたんですけど空耳だと思います」
「そうですか」
ふと、彼女が足元を見やったときだった。
赤色のものが滴り落ちていた。
(血?まさか・・・?)
「ひ・・・人が轢かれたぞ!」
「く・・・首が吹っ飛んだぞ!」
「おい!誰か救急車呼べよ!」
またはっきりと声が聞こえてきた。
どんどん声は大きくなっていた。
「な・・・なにこれ・・・」
思わず、ハルは耳を塞いだ。
徐々に男が傘を持ち上げ始めた。
彼の頭がある部分・・・いや、あるはずの部分が空洞になっているのが徐々に見え始めた・・・
「こういう雨の日はここに来てしまうんですよ。いつまで経ってもしんでも死に切れなくてね」
「いやああああああああああ!!!!!!」
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作者J1
雨の日に投稿してみようと思います。
これも元は韓国ホラー。
雨が降る日はいつもの景色が、違った景色に…