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中編3
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通学路

実話なのでオチは全くありません。

暇つぶしにどうぞ。

中学二年生の秋、その日の朝はバケツをひっくり返したようにひどい雨が降っていた。

大雨洪水警報とか出てたんじゃないかと思う。

傘の意味なんかねーんじゃねえ?

制服がベタベタ濡れて寒く、

休みたいぐらいだった。

私の通学路は歩いて20分程であるが

ショートカットに墓場を利用していた。

これで5分ほど短縮できるのだ。

ギリギリまで寝ていたので今日も遅刻しそうだ。

墓場を勿論通るつもりだ。

だがその日はなにぶん天候が最悪だ。

朝なのに夜並に薄暗い。

しかし不気味と思ったら負け。

遅刻したら面倒だ、サッと墓場の入口に駆け込んだ。

この墓場は、大変見通しが良く

なだらかな坂になっている為

まるで劇場の席次のように見渡しが良い。

人が居ればすぐにわかるし、普段は明るい墓場で

木が鬱蒼とした暗い感じではないのだ。

だから登下校に通り道にしていた。

墓石しかない、シンプルな墓場なのだ。

私の先祖、遠い親戚、ばーちゃん、皆ここで

静かに眠っている。と思うと怖さは一切無かった。

なだらかな坂をのぼり、明るい道に出ようとした

まさにその時

…ーい

おおおーぃ…

おーーーい!!

ピタと足を止めた。

激しい雨音で反応が鈍くなっているのか

認識するのに時間がかかった。

振り返ると

今通ってきた順路の

墓石と墓石の間に人が

立っている。

ブンブンと両手いっぱい、こちらに向かって

力一杯振っている。

確実に呼び止められたのだ。

私は目が悪く、授業中のみメガネ着用生徒だったのでその時は裸眼だ。雨なので視界も悪い。

目をよくこらしてみると、白い開襟シャツを着た

坊主頭の少年のようで表情まではわからない。

笑っているように見えた気がする。

口が開いていたからかもしれない。

私は同じクラスのF君だと思った。

ひょうきんな彼ならこんなおどかし程度の事は

やりかねないのだ。

移動するでも無く、ただその場所で微動だにせず

手を振りまくるF君に

私は軽く手を振り返した。

そして足早にその場を去った。

教室に行くとF君はクラスの子と談笑していた。

「あれ?さっき、墓におらんかった?」

ボトボトになった制服をハンカチで拭きながら尋ねてみた。

「アホ言うなや!今日は大雨ってわかってたから

早めに来たんや。おかげさまで濡れんで済んだわ♪♪」キャハハとF君は談笑の輪に戻った。

F君じゃなかった…。

じゃあ、アレは誰??

そもそもこんな激雨の中、墓参りする人っている?

そういえばあの人、傘さしてなかった。

あの人が立ってたところ、私通った。

間違いなく誰も居なかった。

かがんでた?隠れてた?

濡れながらずっと潜んでた?

変質者やった!?

……こわっっ!!!!

と、じわじわ怖くなり、しばらく墓場を通学路にするのは辞めた。

田舎なので、余所者や変わった人が居たら

すぐにわかる事なので親に聞いてみたが

知らんなあ、と言われ

そんな事よりそんな所を1人で通るな!と怒られてしまい損をした気分になった。

その不気味さも薄れた冬の明るい昼間に、

その人が立っていた所に行ってみた。

変質者が居てはたまらないので友達を道連れにした。

そこは、無縁仏が沢山あって隣に水子のお地蔵さんが立っている場所だった。

なぜかわからないが、なるほどな…と納得する自分が居た。

怖さは無かった。

こんな所を通っては危ないよ

それとも

こっちへおいで、おいで

だったのか

私が見たものは結局なにかわからなかった。

ただ、これを書いてる今、

こんなにハッキリ記憶しているのに、その人の顔と声を思い出せないのだ。

そんな不思議な体験を経験しました。

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